ソニーは5月12日、液晶テレビ「ブラビア」シリーズの新製品を発表した。4K対応モデルが全7機種、フルHDモデルが全5機種というラインナップだ。ここでは同日に開催された体験会&発表会「ブラビア カンファレンス」の模様を紹介する。新製品の概要は以下の別記事を参照してほしい。
■ソニー、Android TV搭載「4Kブラビア」ハイエンド - 55Vで42万円前後から
■ソニー、Android TV搭載「4Kブラビア」スタンダード - 43Vで21万円前後から
■ソニー、Android TV搭載機など2015年モデルのフルHD「ブラビア」
テレビ事業が好調に転じたソニー
結論的なところから言ってしまうと、まず2015年4月30日の会見にて、ソニーのテレビ事業が11年ぶりの黒字になったことが発表された。その背景もあってか、今回の新4Kブラビアはかなりの進化を遂げており、カンファレンスにもたいへん力が入っていた。ソニーマーケティング 代表取締役 社長の河野弘氏が進行役とホスト役を務め、映像やゲストとのトークセッションを中心に、新4Kブラビアそのものだけでなく、ソニーがテレビとコンテンツに込める想いやコンセプトを披露。率直な感想として、往年の輝かしい時代を彷彿させるものだった。
その河野社長、開口一番、「皆さんはいつもどんな気持ちでテレビのスイッチを入れているでしょうか。なんとなくが多いのではないでしょうか」と、集まった報道陣に問う。すかさず「そんな日常を変える4Kブラビア」「見たい知りたい遊びたいに応える」「今までの概念を越える楽しさ」「好奇心に応える」と畳みかけ、場を盛り上げる。新4Kブラビアの紹介や技術面もそうだが、カンファレンス全体を通して「テレビはもっと楽しくなる」という新しいユーザー体験を創り出そうとしている意図を感じた。
市場概況にも触れ、エコポイント制度の終了以降、低迷を続けるテレビ市場だが、上向くきざしも出てきている。2016年のリオデジャネイロ五輪、2018年のFIFAワールドカップ・モスクワ大会、そして2020年の東京五輪というように、テレビ市場が活性化する大きなイベントとともに再び成長局面に入るとソニーは予想。特に、大型テレビ(46V型以上)においては、4Kモデルを購入する人の割合が年々増えており、2010年くらいにテレビを買ったユーザーの買い替え需要も見込む。4Kテレビにおいてソニーは国内シェアトップであり、河野社長は「業界を牽引してきた」「画質と音質の評価が高い」と自負する。
そこで新4Kブラビアだが、大きなトピックの1つは新しい映像エンジンの「4K高画質プロセッサー X1」だ。2011年から開発を始め、今回の新4Kブラビアで満を持して投入したという。X1プロセッサーの役割を簡単にまとめると、入力映像をリアルタイム分析したうえで、X1以降の機能ブロックに対して最適な画像処理の指示を行う。機能ブロックは大きく3つあり、高精細化の「X-Reality PRO」、広色域化の「TRILUMINOS DISPLAY」、高輝度化の「X-Tended Dynamic Range」だ。
もっとも分かりやすかったのは、2K(フルHD)映像を4K映像に補間するアップコンバートで、従来との違いをはっきり見て取れた。フルHD映像をフルHDテレビで見るより、新4Kブラビアのアップコンバートで見たほうが明らかに美しい。これはぜひ店頭で体験してほしい機能だ。なお、X1プロセッサーを搭載する新4Kブラビアは、75V型「X9400C」、65V型と55V型「X9300C」、65V型「X8500C」となる。
もう1つのポイントは、サウンド面でのハイレゾ対応だ。入力ソースのサウンドを96kHz/24bitのハイレゾへとアップコンバートする「DSEE HX」、およびCD以上(48kHz/24bit)へアップコンバートする「DSEE」を搭載した。DSEE HXはX9400CとX9300C、DSEEはX8500CとW870Cが備える。
筆者が「テレビの新しいユーザー体験」のキモになると感じたのは、Android TVの採用だ。音声入力とタッチ操作に対応したリモコンを使い、見たいコンテンツを手軽に探せる。音声入力(認識)の精度も高く、YouTube上のコンテンツ検索も可能だ。今後はインターネット上の動画サービスもどんどん4Kコンテンツを配信するようになり、4Kブラビアにも対応していく。4Kテレビを購入するときの懸念だった「4Kコンテンツが少ない」という点も、徐々に解消することが見えている。