これまで「番組」は、基本的にテレビのために制作されてきた。Vシネマやオリジナルビデオ・アニメは、その外で生まれたビジネスモデルだが、例外的にうまく行っているジャンルとも言える。それでもディスク販売の数量が減ってきた現在、配信を活路に見いだす人々は多い。ネット発信の動画というと、短尺で予算も少ないもの……というイメージが強かったが、テレビやディスクビジネスからの脱却・拡大を考えている企業にとっては、新たなビジネスチャンスといえる。

シャープの最新4K液晶テレビのリモコンには「NETFLIX」ボタンが

一方で、ネット配信業界にお金がうなっているのか……というと、そういうわけでもないのが実情だ。Netflixのように資金が豊富なところは例外として、結局他の事業者は、「既存のコンテンツビジネスの延長線上」に存在する人々が、お金の出しどころを変えているに過ぎない。テレビや映画に割いていた予算がネットに回ってきただけなのだ。

ここで重要なのは、「ネットという金づるができた」という発想をするのでなく、「映像をどの順番で出すのか、という戦略が変わった」という発想だ。

映像の世界には「ウインドウ戦略」という言葉がある。例えば、映画として世に出た映像作品は、まず映画館で上映され、次にディスクメディアとして販売され、次に有料のネット配信に流れ、衛星放送などの有料放送で流れ、最後に無料の地上波で流れる。同じ映像で何回も収穫するわけだ。これがテレビドラマなら、一番最初のウインドウは地上波になる。

ネット配信のオリジナルコンテンツが増えるということは、ネット配信が「最初のウインドウになる」と思えばいい。地上波や映画と同じ地位をネットが得た、ということなのである。

さらに、「オリジナルの独占配信」でない場合も、ウインドウ順の変化と思えばいい。ディスクより前に来るのが「先行配信」であり、さらに他のSVODより前に来れば「独占先行配信」だ。

映画が映像の王であった時代から、テレビが王の時代になり、さらにはネットの時代になっている。一見排他に見えるが、実は「すべてを使うのが前提」であるのが、今の映像ビジネスの巧みさといえる。我々にとっては、そうしたサービスの登場は、基本的に「自由度の拡大」こそが本質。映像配信のニュースも、そういう視点で見ると、ちょっと違った風景に感じられる。

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