「Windows」や「Office」よりも「Microsoft」ブランドを重視

パーソナルコンピューティングの主流がPCからモバイルに移り、クラウドをハブに様々なデバイスを個人が使用するようになると、これまでのようなデバイス間の競争ではなく、エコシステムの競争になる。実際に、ユーザーの関心もデバイスからエコシステムに移っているとCapossela氏は指摘する。

下のスライドはMicrosoft、Apple、Googleのエコシステムを比べたものだ。MicrosoftはWindows、Office、Internet Explorerなど大きな製品を抱えているものの製品同士のつながりが乏しい。AppleやGoogleは、それぞれのエコシステムで製品やサービスを巧みに連携させている。

Microsoft、Apple、Googleのエコシステムの比較

このつながり(製品・サービスの統合)はハロー効果やシナジー効果を生み出す。Appleは米国において宣伝活動をiPhoneやiPadに集中させているが、iOSにはiTunesストアやiCloud、iMessage、FaceTime、Safariなどが統合されているため、ユーザーはiPhoneやiPadを入り口に自然と様々なAppleのサービスや製品との関わりを深めていく。

あれもこれもと宣伝するのではなく、特にユーザーが関心を持つ製品、ユーザーが親しみやすい製品からユーザーをエコシステムに引き込む。けん引車となるいくつかの製品に集中できるから効率的なマーケティングが可能になる。

そうしたエコシステム規模の連携効果をMicrosoftは生み出せていなかった。だから「Surface Pro 3」のデジタルペンにOneNoteを統合した。ペンのボタンを押すとOneNoteの新規メモが開く。タブレットとして優れたSurface Pro 3で、最も便利なメモアプリがOneNoteであり、OneNoteはOneDriveと連携。OneDriveは15GBもの容量を無料で使用できる。こうして製品とサービスのつながりが生まれることになる。

現時点で「Surface Pro 3」はユーザーを引きつけるMicrosoft製品であり、Surface Pro 3からOneNoteユーザーが増えている

Windows Phoneに搭載されているデジタルアシスタント「Cortana」の評判が高いが、Cortanaを活用するようになったユーザーは自然とBingユーザーになる。「Googleは個人データを収集している」というような反Googleキャンペーンを展開するよりも効率的にBingへの乗り換えユーザーを増やせるというわけだ。

Windows 10へのアップグレードを無料にするのは、Windows 10がIoTやモバイルからPC、Xboxまで、Microsoft製品を1つのエコシステムにまとめる基盤になるからだ。無償なら、より豊かな機能やサービスを使用できる最新のOSにアップグレードしない理由はない。多くのMicrosoft製品がWindows 10で揃うことで、多くのMicroosft製品ユーザーが最新の機能やサービスを利用できるようになる。そこから連携が生まれ、クラウドや各種サービスを含むMicrosoftのエコシステムの力が引き出される。Microsoftのブランドというと、今は多くの人が「Windows」や「Office」を挙げる。しかし、これからは「Microsoft」ブランドが大きな役割を担うとCapossela氏は述べた。