春を感じる満開の桜を撮るために、早咲きの名所である静岡県河津町にやって来た。用意したカメラは薄型軽量ボディの高級コンパクト機、キヤノン「PowerShot G7 X」だ。手持ちによる気軽なスナップから、テクニックを駆使した本格撮影まで幅広く対応できるカメラである。今回はさまざまな桜写真の中でも、スマホでは撮るのが難しい「夜桜」に挑戦してみよう。

夕方に河津町に到着。下見を兼ねて、まずは正攻法の撮り方で明るい日差しのもと撮影した。F5.6 1/320秒 ISO200 WB:太陽光

今回の相棒、キヤノン「PowerShot G7 X」を三脚に取り付けて

ライトアップによって夜でも華やぐ桜スポットは全国各地にあるが、ここ静岡県河津町もそのひとつ。毎年2月から3月初旬にかけて開催される「河津桜まつり」の期間中は、川沿いの並木を中心にライトアップが行われ、昼間とは違った妖艶な雰囲気の河津桜を楽しめる。

そんな夜桜を美しく撮るには、なるべく日が暮れる前に撮影場所を下見しておきたいところ。明るいうちに構図やアングルをある程度決めておけば、電柱など余計なものが写り込んでしまう、といった失敗を防げるだろう。

F4 0.8秒 ISO200 WB:オート

夜桜の最初のシャッターチャンスは日没から20~30分後に訪れる。太陽の光がわずかに残り、空の色が青っぽく写る時間帯だ。完全に暗くなった夜空では、夜桜は力強く、落ち着いた印象になるが、それ以前の青みのある夜空では、より優しく華やかなイメージになりやすい。ひとまず夕食はお預けにして、この時間帯を逃さず撮るようにしたい。

機動性重視の手持ち撮影と画質優先の三脚撮影

夜桜撮影には、大きく分けて2つのパターンがある。ひとつはフットワークを優先し、高感度を利用して手持ちで撮る方法。もうひとつは、画質をより重視して感度を高めず、カメラを三脚に固定してじっくりと撮る方法だ。

手持ち撮影の場合、感度の設定はオート、または手動でISO800以上にセットする。こうすれば、強いライトで照らされた桜なら、手ブレせずに撮ることが可能だ。ストロボはオフにしよう。

PowerShot G7 Xは、レンズの開放値がワイド側F1.8、テレ側F2.8と非常に明るいので、暗所でも比較的速いシャッター速度が使えるメリットがある。もちろん強力な光学手ブレ補正機構も備えている。さらに、1.0型という大型センサーを搭載し、映像エンジン「DIGIC 6」によって高感度ノイズを低減。まさに夜桜撮影にうってつけの性能といっていい。

下の写真は、1/8秒の低速シャッターを使って手持ちで撮影したもの。ピントを合わせた部分をディテールまでシャープに写すことができた。感度はISO800を選んだが、高感度ノイズはまったく気にならない。

F2 1/8秒 ISO800 WB:電球

一方、三脚を使って撮る際のカメラ設定は、感度を低く、ストロボを発光禁止に、シャッター速度を4秒よりも遅くセットすること。そして、シャッターボタンを押す力によるブレを防ぐため、セルフタイマーを使ってシャッターを切ろう。PowerShot G7 Xは小型軽量なので、三脚もコンパクトタイプのもので十分といえる。

F5.6 15秒 ISO200 WB:オート

上の写真は、マニュアル露出モードを選び、絞りをF5.6に、シャッター速度を15秒に、感度をISO200に設定して撮影したもの。低速シャッターを使うことで川の流れをなめらかに見せ、光の反射をいっそう際立たせている。

PowerShot G7 Xは、最長250秒~最速1/2000秒という幅広いシャッター速度を選べることが魅力のひとつ。レンズ一体型のコンパクトカメラでありながら、さまざまなシーンに対応できる自由度がある。マニュアル露出モードやシャッター優先AEモードを選んだ場合、レンズ部のリング回転によってシャッター速度を素早く変更できるのも便利だ。