続いて、仙巌園からほど近い場所にある吉野公園を訪れた。こちらは、桜の満開には少し早かったが、1本の河津桜だけはみごとに咲き誇っていた。24mm相当になるズームのワイド側を使って、広々とした構図でその全体像を捉えた。

F5 1/1250秒 ISO200 WB:太陽光

このカットは、構図的には悪くないが、このままでは風景の全体を写しただけの説明写真である。ここに桜が咲いているという事実は伝わるが、それ以上でもそれ以下でもない。趣味として写真撮影を楽しむ人なら、単なる説明カットではなく、「何をどんなふうに表現したいのか」ということを考えながら撮ることをオススメする。

例えば同じシーンを撮る場合でも、下の写真は、桜の下に咲いていたスイセンを意識して画面に取り入れた例。冬の花であるスイセンとコラボレーションできるのは、この時期に咲く河津桜ならではの競演といえるかもしれない。

F6.3 1/100秒 ISO200 WB:太陽光

次のカットは、カメラ位置を一歩下がることで、手前に咲いていた白梅の木を写し込んだ例だ。青空を背景にして、桜のピンクと梅の白を対比させるような構図を選択した。

F4.5 1/320秒 ISO200 WB:太陽光

さらに、梅の花を前ボケに利用して華やかさを強調したり、遠くに見える飛行機を画面のアクセントとして写し込んだりしてみた。同じ場所であっても、アイデア次第で、撮り方のバリエーションは無数に広がっている。

F2.8 1/640秒 ISO200 WB:太陽光

F5 1/200秒 ISO200 WB:太陽光

こうした、さまざまなバリエーションを撮るためのコツは、桜だけでなく、桜以外の被写体にも目を向けること。「主役」はあくまで桜だが、その主役を引き立たせるための「脇役」となる被写体を探すのだ。つまり、これらの写真では、スイセンや白梅、飛行機などが脇役に相当する。

今回の旅の機材にPowerShot G7 Xを選んだ理由のひとつは、軽いフットワークでさまざまな被写体を狙い、バリエーション豊富な桜写真を撮るためだ。その役割をきっちりと果たしてくれたといっていい。

最後に、桜島を脇役にした桜写真をお見せしよう。撮影地は、先ほどの仙巌園。モクモクと立ちのぼる噴煙を背景に赤いカンヒザクラが咲き誇る、ここ鹿児島ならではの写真となった。

F8 1/1000秒 ISO200 WB:太陽光

ここで使った小ワザは、今流行の「自撮り棒」+PowerShot G7 XのWi-Fi機能だ。これについては再来週に詳しく紹介する予定だ。次は、河津桜の本家本元、静岡県河津町に行ってきます。

構図の自由度がさらに広がる「自撮り棒」とWi-Fiとスマホを使ったリモート撮影機能