東京ビッグサイトで開催(1月14日~16日)のイベント「ウェアラブルEXPO」。実際の製品以外にも、ウェアラブルにまつわる様々な技術の展示も行われている。ここでは、将来の機器で使われるであろう技術や部品を紹介したい。

脈拍チェック程度の装置で血圧をチェック

日本大学工学部の尾股定夫教授は、近赤外線LEDを用いたセンサーを開発。照射した近赤外線LEDの反射から血液量(ヘモグロビン)の変化を検知し、その変化を解析して血圧を測定する。

展示されていた試作チップ。これを組み込むことで血圧と脈拍を連続測定できる

スマートフォンと接続されている試作機。指を挟むだけで、瞬間の血圧グラフと最高/最低血圧、脈拍が表示される。常に連続して血圧測定できる技術というのはかなり興味深い

血圧といえば、腕に巻き付けるカフ(圧迫帯)と脈拍の音を使った測定が一般的だが、そのような手間と時間をかけず、高精度(誤差5%程度)に血圧を測定できるという。今回は試作チップとBluetoothでスマートフォンと接続する試作機を展示していた。将来的には、スマートフォンや健康器具への利用を想定する。

実際に試作機を見たところ、「こんなに手軽に血圧が測定できる」と驚いた。ウェアラブルの用途のひとつとして健康管理があるので、商品化を期待したい。

指の動きも検知できる、伸びを測定するセンサー

ヤマハは、ゴムのように伸縮して、その伸びを抵抗値の変化として確認できる「薄型ストレッチャブル変位センサー」と、それを利用した手袋型デバイスを展示していた。

このセンサーは伸ばすと抵抗値が上がり、直線性と高速応答性に優れているという。試作した手袋センサーを付けたまま、電子ピアノの演奏を行うデモを行っており、演奏の妨げにならずに入力が行えることをアピールしていた。

変位センサーを組み込んだ手袋。片手で12カ所のセンシングを行う

電子ピアノを弾いているデモ。指の動きをリアルタイムに収集できる

エナジーハーベストにもなる発電ウェア

拓殖大学前山研究室、ムネカタ、コーンズテクノロジーは共同で、圧電素子を使った無線モジュールのバッテリレス化を検討する発電ウェアを試作、展示していた。

トレーニング時など、連続したデータ収集を行うにはバッテリレスが望ましいが、現在はバッテリ寿命を延ばすための試みだ。可動部に圧電素子を設置し、エナジーハーベスターを通じてバイタルセンサーなどへ電力を供給する。なお、エナジーハーベストとは、環境中の何らかのエネルギーを電力に変換する技術や概念をいう。「バッテリレス」を実現する技術として注目されている。

ランナーを想定して、マシンの上で走っているデモ。左胸に付いているのが制御回路。発電素子の位置は、運動中によく動くところが望ましいということで、膝とお尻(事前検証でよく動く場所とのこと)に付いていた

圧電素子(下)とエナジーハーベストのための回路(上)

尿や植物からもエナジーハーベスト

立命館大学の道関研究室とセイコーインスツルの共同による、エナジーハーベスト活用の例。おむつに仕込んだ尿発電電池(60μw)で尿漏れ検知を行い、得られた電力を使ってワイヤレス通信を行うというものだ。同様に、植物の導管を通る水分から発電する(0.6μw)電池を使ったワイヤレス通信もデモしていた。

尿発電のパネル。60μwという微小電力を集めて、間欠通信を行う。これによって電池交換が不要になる

実際のおむつとセンサーの展示。尿漏れがなければ外部通知の必要もないので、尿漏れ→発電→通知というのは正しい

植物からの発電は、先のおむつよりも2ケタ低い発電量だが、有効活用できる。農業の現場など、発電電池を広く多く配置するシーンで有効になりそうだ

「ウェアラブル」を支える導電繊維

服にセンサー類を入れる場合、高い柔軟性と強度、導電性が求められ、配線が重要となる。三ツ富士繊維工業は、ナイロンやポリエステルの糸に銀メッキを施したAGpossを展示していた。表面がすべて銀で分量が多いため、導電性の高い配線材料としての利用も可能だという。

表面がすべて銀だが、中は通常の繊維。比較的軽くて丈夫、かつ導電性も高いというAGposs。先のヤマハブースの試作でも、配線材料にAGpossを使用していた

今回、銀メッキの上に被覆を施すことによって、洗濯耐久性を高めた新製品を発表していた。1,000回以上の洗濯に耐えられる耐久性があるそうだ