IPAは、コンピュータウイルスや不正プログラムの状況分析から、「今月の呼びかけ」を発表している。今月は、性的脅迫被害に関する事例を取り上げている。

セクストーションとは

まずは、図1の広島県警察のWebページを見ていただきたい。

ここにもあるが、セクストーションは「sex(性的な)」と「extortion(脅迫)」を組み合わせた造語である。IPAに寄せられた相談からの手口であるが、以下のようになる。

  1. SNSを通じて知り合った異性から、プライベートな動画を見せ合おうと誘われる
  2. そして、異性からビデオチャット機能を有する不正アプリをインストールするように誘われる(アプリのインストールを行わせてから、プライベートな動画のやりとりを求める場合もある)
  3. アプリをインストール後、ビデオチャット中に服を脱いだり、卑猥な姿を相手に送ってしまう(この時点で、電話帳の情報などが窃取されている)
  4. 後日『あなたの電話帳の情報と動画を入手している。この動画をばらまかれたくなければ、指定の金額を払うように』といった脅迫電話がかかってくる

図2 セクストーション被害の流れ(今月の呼びかけより引用)

IPAによれば、このビデオチャットアプリであるが、チャット機能以外にも電話帳情報を窃取する機能を持っていたとのことである。この情報を悪用し、脅迫を行っているのである。ワンクリック詐欺などの不正請求もそうであるが、内容自体が知られることがあまり好ましくないといった理由から、周りに相談できず脅迫に応じてしまうことも少なくない。

広島県警察では、2014年6月の時点で注意喚起を行っているが、IPAでは同種の相談が2014年9月くらいから寄せられるようになったとのことである。上述のように、相談するのをためらうことで、報告や被害届が出されていないことも予想される。実際には、もっと多くの脅迫が行われている可能性もある。

脅迫者の意図としては、インターネットなどで不特定に閲覧されるよりも、普段、連絡を取り合っている身近な人間に閲覧されるほうが、より脅威意識が高まると見ている。そのために、電話帳情報も同時に窃取していると考えらえる。また、これまでも電話帳情報を盗み出す不正アプリは存在していた。しかし、盗み出した電話帳情報を悪用する事例はほとんどみられなかった。それがここにきて、具体的な手口として悪用されるようになった点も注目したい。いよいよ、スマートフォンで明確な金銭奪取を目的とした攻撃が行われ始めたとみてもよいだろう。

セクストーションへの対策方法は

IPAでは、セクストーションへの対策として、次の2点をあげている。

  • アプリは信頼できるマーケットから
  • プライベートな写真や動画は第三者に渡さない

最初に紹介した事例であるが、SNSで知り合った異性からアプリのインストールを勧められている。その際に、メールに添付されていたり、リンク先からのダウンロードを求められることが少なくない。こういった経路でインストールするアプリは、不正アプリの危険性が高い。やはり、アプリは安心できる公式マーケットから入手すべきである。

そして、2点目であるが、スマートフォンやセキュリティの問題ではない。仮に友人であったとしても、見られて困るような写真や動画、撮影させない、送付しないといった態度で臨むべきであろう。仮に深い交際関係にあったとしても、そのような写真や動画には注意が必要である。関係が解消された後に、相手を陥れるために悪用されることも少なくない(リベンジポルノといわれるものだ)。やはり、自衛も重要な対策の1つとなるだろう。

セクストーションと思われる脅迫行為を受けた場合、脅迫相手と連絡を取ることを避け、まずは警察へ相談することを検討すべきとしている。残念ながら、一度、脅迫相手の手に渡ってしまった情報は削除することも、取り返すこともできない。また、警察へ相談しても、仮に脅迫金を支払ったとしても、プライベートな情報の公開を防ぐことにはならない。この点も決して忘れてはならない。

最後にIPAでは、特定の相手に写真や動画を渡すことは、インターネットに公開することと等しいという認識を持つことが重要としている。それだけでなく、データを所有しているだけでもウイルス感染が原因で外部に流出する可能性もある。インターネットに公開されて困るような写真や動画は、撮影自体を行わないようにと注意喚起をしている。