シャープが打ち出した2014年の年末商戦における液晶テレビ販売のキーワードは、「縦横無尽」ということになりそうだ。回復基調に転じ始めた液晶テレビ市場において、シャープは「4K」という切り口とともに、「縦」と「横」の提案によって、液晶テレビ需要をさらに喚起する考えだ。
液晶テレビ市場は2011年7月の地上デジタル放送への移行後、それまでの旺盛な買い換え需要の反動によって、ここ数年は低迷を続けてきた。だが、その停滞感にも少しずつ歯止めがかかり始めているようだ。
シャープ 国内営業本部副本部長兼シャープエレクトロニクスマーケティング社長の細尾忠弘氏は、「ここにきて、液晶テレビの販売が前年実績を上回る結果が出ている。底を打ったと言ってもいい状況にあるのではないか」と語る。
その原動力のひとつが、4Kテレビである。4Kテレビは、コンテンツの少なさや、まだ価格が高いといった課題があり、一部のユーザー向けの製品という認識が多くあった。だが、先ごろGfK Japanが発表した薄型テレビの販売動向調査によると、2014年11月第2週には50型以上の薄型テレビにおける4Kテレビの金額構成比は51%と過半数に達し、販売台数構成比でも34%と約3分の1を占めたという。
シャープにおいても、4Kテレビの販売台数は拡大傾向にあり、量販店などでの店頭展示、あるいは地域販売店などと共同で行う合同展や個展でも、4Kを強く意識した提案を行っている。
シャープ デジタル情報家電事業本部国内営業統轄の居石勘資氏は、「4Kはコンテンツが少ないと言われるが、海外で4Kコンテンツの制作が増加していること、国内でも『ひかりTV』において4Kのオンデマンドサービスが開始されていることなど、4Kコンテンツが増加していることを訴求することに力を注いでいる。店頭展示でも、ひかりTV 4Kのロゴを表示して、4Kでの放送がすでに視聴可能であることを訴えている」という。
もうひとつの提案が、4Kモデルへのアップグレードの提案だ。シャープが提案する今年の年末商戦向け展示方法では、同社の大型液晶テレビとして最も売れ筋となっている60型2Kテレビの「LC-60G9」を中心に置き、これを購入しに来店した客に対して、アップグレード提案しやすい環境を整えている。
そのひとつは4Kテレビへのアップグレードだ。「AQUOS(アクオス)」シリーズのうち「PREMIUM 4K」として、「LC-60UD20」や「LC-60US20」を展示。4Kコンテンツの映像を表示しながら、4Kならではの高画質を訴求する。そして、もうひとつは「PREMIUM 2K」とするクアトロンプロ採用の「LC-60XL20」によって4K相当の画質を実現するという提案だ。コストメリットを生かしながら、クアトロンプロだからこそ実現する4K相当という画質の高さを提案する。
GfK Japanの調査では、過去半年以内に4Kテレビを購入した消費者のうち、事前検討をせずに4Kテレビを購入した割合は24%と約4分の1を占めている。量販店の店頭で画質をみたり、店員の勧め方によって、その場で4Kテレビの購入を決定した人たちも少なくないことが浮き彫りになった結果といえるだろう。
シャープでは、こうした2K売れ筋モデルを軸にして、そこから2つのアップグレード提案によって、4Kの世界を提案していくというわけだ。
「いま購入したテレビを、これから7~8年使っていただくとすれば、2020年の東京オリンピックはこのテレビで見ることになる。ぜひその際には4Kで見てもらいたい。ブラウン管テレビからデジタルテレビに変わったような、もうひとつの大きな節目がいよいよ4Kで始まろうとしている」とシャープの居石氏は語り、同社の4Kテレビの提案を加速させる考えだ。