だが、地デジ化の需要がないわけではない。

2011年7月時点では、東日本大震災によって、主要部品の生産に影響が生じ、カーナビが品薄になっていたことで、地デジ需要を取り込めなかったということもあるが、同年7月以降も、カーナビに後付けできる地デジチューナーが継続的な需要を維持。「2013年上期までは、ある一定規模の販売数量で安定した需要があった」という。

家庭用テレビとは異なり、あとから車内でテレビが映らないことに気がついたユーザーが、その対策として購入するといった動きが継続的にみられていたようだ。

また、地デジチューナーを接続したユーザーが、「地デジ化したことで、カーナビのテレビ画質が大幅に向上。この画質に驚いたという声があがっていた」という持ったという話もある。カーナビの画面サイズは小さいものに限定されるが、それでも地デジならではの鮮明な画像は、驚きを感じさせるものだといえた。

カーナビのアナログテレビを地デジ化する方法

アナログチューナーを搭載したカーナビのテレビ機能を地デジ化するには、大きく2つの方法がある。ひとつは、カーナビそのものを地デジ対応の製品へと切り替えるものだ。ただ、地デジ化のためにカーナビそのものを買い換えるユーザーはそれほど多くはない。

もうひとつは、地デジテレビチューナーを購入し、これを取り付けるというものだ。パイオニアでは現在、3機種の地デジテレビチューナーをラインアップ。主力となるGEX-909DTVの場合、実売価格は3万円以下で購入することが可能だ。取り付け作業はカー用品店に頼むことができるが、個人でも行えるという。

地デジ機能は各社ごとに特徴があるので、購入時は、その点を考慮するのもいいだろう。

パイオニアでは、4チューナー、4アンテナのモデルを中心にラインアップ。車載メーカーならではのこだわりを見せているのが特徴だ。

「電波の受信状況が刻々と変わる長距離ドライブの際にも、残りの3つのチューナーが中継局を検索しており、放送エリアを越えても、受信レベルの高い中継局に自動で切り替わるオート放送局サーチを搭載している」と、紺野は説明。「受信レベルが悪いときには、自動的にワンセグに切り替わって視聴を続けることができる。フルセグとワンセグの切り替え時にも、黒い画面を挟まずにスムーズな画面ができるのが特徴だ」とする。

さらに、ブロックノイズ除去機能を搭載し、これも鮮明な画像表示にも寄与しているという。簡単に地デジ化する機器のひとつとして、これを利用するのもいいだろう。

カーナビにとって、テレビは必須の機能ではないといえよう。最近では、DVD再生や音楽プレーヤーの再生、ネット接続機能など、様々なメディア対応も可能になり、テレビは機能のひとつという意味合いがさらに強くなっている。

また、家庭用テレビはすぐに地デジ対応することに迫られる場合が多いが、クルマでのテレビ視聴機会が限られるため、ユーザーの地デジ対応は、どうしても二の次になる。それが、長期間に渡って一定の需要を維持したことにつながっていたともいえる。

3年を経過し、その勢いは明らかに衰えているが、それでもカーナビの地デジ化はゆっくりと進展しつづけているといえそうだ。