自発的なマネジメントは家庭でも

休み時間や放課後、図書館や各教室棟のオープンスペースで、勉強を続けている様子を頻繁に見ることができた

さて、iPadの導入を決定した経緯で、重要視された要素の1つが、家庭だ。全ての生徒が持つという前提から、かかる金額をなるべく低く抑える必要があった。詳しくは後編でご紹介するが、コルベに通う生徒は必ずしもこうしたデバイスを簡単に購入できる家庭ばかりではないからだ。

コルベでは保護者や生徒が出入りできるオープンミーティングを定期的に行っているが、1人1人にデバイスを持たせるという話をした際に返ってきた反応は「うちの子がコンピュータを持つなんてスゴイ!」というものだった。iPad以前にはノートパソコンを購入することになったが、3年間の分割払いという方式を採ったという。

こうして採用されてきたデバイスだが、iPadなどのタブレット端末やテクノロジーが導入される際、よくある批判は「生徒たちが授業中にタブレットなどで遊んでしまって、授業に集中しなくなるのではないか?」というものだ。目新しく面白いテクノロジーの方に、授業よりも熱中してしまい、授業中のゴールが達成されないのではないか、という懸念である。

これに対して萩原氏は「レガードレス」、そんな事は関係ないと一蹴する。

「iPadの有無にかかわらず、エンゲージメントの低い授業では、生徒は授業に集中してくれない。テクノロジーの有無とエンゲージメントは別の問題であることに注目しなければならない」(萩原氏)

萩原氏の言葉が事実であることは、コルベの授業ではなく、放課後の風景を見ていても一目瞭然であった。図書室は休み時間になると、iPadを利用して自習したり、グループで議論を交わす生徒であふれていた。学びに対するエンゲージメントの高さは、授業中の集中だけでなく、学校での過ごし方にも現れていた。