東芝が発表した2013年度(2013年4月~2014年3月)の連結業績は、売上高は前年比13.5%増の6兆5,025億円、営業利益は47.0%増の2,907億円、継続事業税引前純利益は13.3%増の1,809億円、当期純利益は34.3%減の508億円となった。
決算会見で、東芝の久保誠代表執行役副社長は「決算に"たられば"という言い方は通用しないが……」と前置きしながらも、「営業利益では過去最高益に達していた可能性があった」とコメントした。CFOとしては今回の決算会見が最後となる久保代表執行役副社長にとっても、その点では大きな悔しさがあったのか、あえてその点に言及してみせた。
「過去の膿(うみ)といってはいけないが、2013年度はそれを積極的に処理した1年であった。米NINAの資産価値の見直し、医療ソリューション孫会社の会計処理の適正化、欧州のガス遮断機のペナルティ費用など、有税で処理しなくてはならないものがあったほか、ウェスチングハウスに関わる除染費用などもあった。これが最終損益に影響している」と説明。特に、「米NINAの資産価値見直しによる310億円のマイナスがなければ、過去最高の営業利益を達成していたことになる」と言及した。
営業利益の2,907億円に、米NINAの資産価値見直しによるマイナス分の310億円を足すと、1989年度に達成した過去最高となる3,159億円の営業利益を抜いていたわけだ。
米NINA(Nuclear Innovation North America LLC)は、東芝が出資する原子力発電に関する事業開発会社。今回、米テキサス州で進められているABWR型原子力発電所の新規建設プロジェクト「サウス・テキサス・プロジェクト」の3号機および4号機において、資産価値を保守的に見直したという。
「その点では、2014年度には営業利益で過去最高を狙う下準備が整った」と、久保代表執行役副社長は自信をみせる。
好調の電子デバイス部門が営業利益の約半分を稼ぐ
セグメント別では、原子力事業を含む電力・社会インフラ部門の売上高が前年比11%増の1兆8,122億円と二桁の増収となったが、営業利益は528億円減の323億円と減益。太陽光発電や系統・変電、鉄道などの社会システム関連は各事業とも好調に営業利益を確保した。火力発電システムは引き続き高い利益水準を維持したが、やはり米NINAをはじめとする海外の原子力発電システムが減益要因となった。
その一方で好調だったのが、電子デバイス部門だ。電子デバイス部門の売上高は前年比32%増の1兆6,934億円、営業利益が1,430億円増の2,385億円と大幅な成長を遂げた。全社連結営業利益が47%増という大幅な成長を遂げた要因も、電子デバイス部門の好調ぶりによるものだといえる。
「電子デバイス部門では、メモリが年間を通じて好調に推移したことにより大幅増収を達成するとともに、営業利益では第4四半期には、上期を上回る利益率を維持したことが大きい。課題事業であったディスクリートも第4四半期で黒字化を達成。部門全体で過去最高益を更新した」とする。
19nm(ナノメートル)第2世代プロセスを用いたNAND型フラッシュメモリの生産比率が3月末で50%を達成。ODD事業の譲渡に関する契約締結や、米OCZテクノロジーのSSD事業に関する資産譲渡取引を完了するといった構造改革にも取り組んだ1年でもあった。
2014年度は、売上高が1.0%増の1兆7,100億円、営業利益が585億円減の1,800億円と増収減益を見込むが、「かなりリスクを折り込んだ数字」としており、電子デバイス部門が引き続き収益の源泉となることは間違いない。
東芝は、2014年度の連結業績見通しで、売上高は前年比3.0%増の6兆7,000億円、営業利益は13.5%増の3,300億円、継続事業税引前純利益は38.2%増の2,500億円、当期純利益は136.1%増の1,200億円を見込むが、「営業利益は最低値として3,300億円を目指す」と過去最高益更新を最低条件に掲げる。「3,300億円の見通しでも、リスクを多めに見込んでおり、全てがうまくいけば4,000億円にまで到達することになる。期中には確実に上方修正していきたい」と意欲をみせる。