クラウディアンは2014年2月26・27日、ホテルニューオータニ(東京)で開催された「Cloud Days Tokyo 2014Spring」にブースを出展し、同社のオブジェクトストレージソフトウェア「Cloudian」について紹介を行った。26日には、同社の取締役 経営企画室長の本橋信也氏が「増え続けるデータ対策と予算の板挟み、『クラウドスケールIT』で解決」というタイトルの無料セミナーを行ったところ、会場は満席となる盛況ぶりであった。

今回の展示ブースと講演の目玉は2つ。1つは25日に発表されたハイブリッドクラウド環境を実現する「AWS Auto Tiering(自動階層化)機能」、もう1つはCloudianをハードウェアアプライアンスとして導入できる「FlexSTORE」だ。本橋氏のセッションレポートとともに、エンジニアリング部 テクニカル・プリセールス マネージャーの鶴見利章氏と営業ダイレクターの石田徹氏から伺った、それぞれの詳細について解説しよう。

大量の非構造化データを安価にオンラインで使えるようにしたい

Cloudianは、オブジェクトストレージ技術を用いて企業のデータを効率的にストレージするためのサーバソフトウェアである。しかし現状では、まだオブジェクトストレージの認知度は決して高いとは言えない。実際、クラウディアンが2013年にいろいろな調査を行ったところ、回答者の半分くらいが“よく知らない”という状況であったという。本橋氏によれば、定量的な調査は難しいものの、企業内データの年平均成長率は50%以上になると言われている。この動きに拍車をかけているのが、昨今注目されている「ビッグデータ」の存在だ。

クラウディアン 取締役 経営企画室長 本橋信也氏

「ビッグデータ分析は、これまで使っていなかったようなデータすら蓄積し、相関分析などによって価値を持たせようという動きです。しかも今後は、例えば10年間のデータを経年分析することで、さらなる価値を求める動きも出るでしょう。だが、すぐに利用できなければ“死蔵データ”にすぎません。そのため、オンラインで安く大量のデータを保存できる仕組みが求められています」(本橋氏)

こうしたデータ増にともなって、企業はさまざまな課題を抱えているのが現状だ。データ容量やファイル数が膨大になるとストレージをひっ迫し、しかもそれらを長期間にわたって保管しなければならないのだ。データが増えることにより、システム性能の低下にもつながる。その結果、データ管理コストが肥大化するという問題に直面することになる。また、増大するデータのほとんどは「非構造化データ」で、ファイルの種類としては、オフィスドキュメントや写真、動画、音楽など身近なものから、システム管理に重要なログデータも含まれる。これらのデータは、データベースのように構造が定められたものではなく多種多様で、数が膨大になりがちであるが、一方で更新頻度が低いという特徴を持っている。

「多種多様で膨大な非構造化データは、迅速かつ経済的に処理することが求められており、これを実現するのが、クラウドコンピューティングで使われているIT技術です。つまり、安価な汎用サーバを多数並べてソフトウェアで統合制御し、1つの高性能なシステムとして扱う分散処理技術が役に立つのです」(本橋氏)

データをフラットに格納するオブジェクト構造は、物理的な場所によらずIDだけでデータを読み込むことができる

そして、このような“クラウドスケールIT”で利用されるストレージ基盤がオブジェクトストレージである。この技術では、ファイルをオブジェクトとして扱い、「階層構造を作らない」ところが特徴である。また、オブジェクトにはURLのような「ID」が与えられており、ネットワーク越しにデータを引き出すのが容易という特徴ももっているのだ。フォルダのような階層構造は、人が直感的に理解するのには向いているが、データが膨大になってしまうとファイルの移動に大変な手間がかかってしまうという問題がある。オブジェクト構造はフラットであるため、クラウドのどこにあっても1つのIDで呼び出すことができるのだという。

さらにオブジェクトに「属性情報(メタデータ)」を付与することで、さまざまな操作を行うことが可能だ。発表したばかりの「AWS Auto Tiering(自動階層化)機能」は、このメタデータによって実現している。オブジェクトベースストレージや、従来のファイルベースストレージ、ブロックベースストレージは、それぞれ長所と短所を持っている。そのため、データの種類や用途に応じて、利用するストレージを変更することが望ましい。更新頻度の高いデータは、従来からあるSANやNASなどの高速なストレージが適しているが、更新することなく長期間取っておこうというデータは、テープデバイスなどで保管するのが一般的だ。 「最近急増しているデータは、オンラインでなければならないが、大量でいつ使うかわからないというものです。これを経済的に使うためには、オブジェクトストレージが適しています」(本橋氏)

オブジェクトストレージが適しているのは企業データの70%を占めると言われるCoolとColdデータであり、これが非常に増えてきている

こうしたオブジェクトストレージを汎用サーバで構築できるソフトウェア製品が、同社のCloudianである。大きな特徴の1つが、Amazon S3のAPIに“完全準拠”している点で、対応しているデータ管理ツールやアプライアンスなどもそのまま利用できるのだ。また、2台のサーバからスモールスタートして、膨大なクラウドスケールまで適用できる拡張性も売りの1つといえるだろう。