米IBMは1月8日(米国時間)、「Watson」の事業開発を促進するべく新事業部IBM Watson Groupを立ち上げたことを発表した。東海岸のシリコンバレーといわれる米ニューヨークのシリコンアレーにオフィスを構え、10億ドルを超える投資を行いWatsonの離陸を図る狙い。

Watsonはコグニティブコンピュータといわれる人工知能技術。システムが自ら学習して相関関係から仮説を立て、その結果から再度学ぶというサイクルを繰り返し、精度の高い意思決定などにつなげるもの。技術的にはLinuxベースのPower Systemsを利用し、超並列確率処理技法を組み合わせる。IBM創業者のThomas J. Watsonにちなんで名付けたもので、2011年に米国の人気クイズ番組「Jeopardy!」で登場した。当時と比較して24倍高速に、性能は2400%改善し、90%の小型化を実現したという。2013年にはクラウド経由での提供も開始している。

今回、専任の事業部を設け、Watsonの事業面での開発を加速する。新事業部を率いるのは、同社でソフトウェアソリューションの上級バイスプレジデントを率いていたMichael Rhodin氏。2000人体制でスタートし、リサーチ、ソフトウェア、システムの各事業部、それに業界の専門家と協業して、コグニティブコンピューティング市場を探る。ヘルスケア、小売り、金融・財務、旅行、通信などの市場を挙げている。

Watson Groupを率いるRhodin氏

Watson Groupに投資する10億ドルのうち、1億ドルは同社が先にローンチしたベンチャーエコシステム向けの投資ファンドとなり、クラウドを利用してのWatsonベースのコグニティブアプリ開発プログラムを促進する。また、同社が先に買収したクラウドインフラのSoftlayerでのWatson実装に向けても作業を進めるという。

IBMはWatson Group新設に合わせ、製薬やメディアのリサーチを支援する「IBM Watson Discovery Advisor」、ビックデータから洞察を得るのを支援する「IBM Watson Analytics」、データ主導アプリ開発フレームワークおよびデータアクセス「IBM Watson Explorer」の3種類のクラウドサービスも発表した。