コンテンツの傾向としては国内外の映画やドラマの新旧作を幅広くラインナップしており、「アニメは比較的充実しているがハリウッド作品がない」といった国内ストアでみられるようなことはなく、それなりに満足のゆく内容でカバーされているようだ。一方で、特撮系やアニメなどのコンテンツはバンダイチャンネルといった専門チャンネルのほうが充実しているわけで、このあたりは棲み分けのように思える。

米国版と日本版で何が異なる?

米国版サービスであるAmazon Instant Video (Amazon VOD)の歴史は2006年開始と古く、同国でのライバルにあたるHuluやNetflixに先駆けてサービスを提供している。だがHuluやNetflixは月極契約のサブスクリプションであり、Pay-Per-ViewスタイルのInstant VideoはどちらかといえばiTunes Storeのそれに近いかもしれない。ただしiTunesはダウンロード形式のサービスのため、ストリーミング配信中心という点で米国で一番人気のNetflixが最大のライバルといえるだろう。

米国と日本との違いはコンテンツの内容もさることながら、「Prime Instant Video」のサービスが日本にないことと、対応デバイスで米国のほうが柔軟性が高いという2点にある。Prime Instant Videoとは、Amazon Prime契約ユーザーに対してコンテンツの一部が無料視聴可能になるというサービスだ。映画やドラマを中心に多数のコンテンツがラインナップされており、一種のPrimeユーザー優遇サービスとなっている。ある意味で、このPrime Instant Video自体が一種のサブスクリプションサービスとして扱われており、Business Insiderの報道によれば今年2013年3月時点で1000万以上のPrimeユーザーが契約を行っており、これがAmazon.com自身の収益に貢献している。日本では配送サービスを中心にした優遇が中心のプライムだが、米国ではSVOD (Streaming VOD)を中心としたサービスとなっている。

後者の対応デバイスだが、Kindle Fire優遇とPCでのSilverlightを使った視聴制限については日本と同様だが、米国では大画面TV、STB、Blu-rayプレイヤー、Xbox 360といったゲーム機など、さまざまなAV機器からAmazon Instant Videoが視聴できるようになっており、Kindle FireからのMiracast経由のみという日本と比べるとバラエティ豊かだ。対応機器リストの詳細はヘルプページにもあるが、米国では日本のようなDVR (Digital Video Recorder)文化が発達していないため、STBまたはTVから直接オンラインコンテンツを再生する機能がAV機器のセールスポイントの1つとなっている。米国の家電量販店ではNetflix対応をうたうTVが多数陳列されている様子を見ることができるが、Amazon Instant Video対応もまた、こうした機器のセールスポイントであり、これが日本との差になって表れているものとみられる。

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総評だが、後発でのローンチ直後ということながら、比較的ラインナップを充実させて頑張ったことがうかがえ、今後のさらなる発展を期待…… という感触だ。また検索でタイトルを発見しやすく、Amazon.co.jpの登録情報で1-Clickによる購入から視聴がすぐに行える点で「気軽さ」が最大のセールスポイントだと考えられる。一方で対応デバイスを中心に制限が多いこと、コンテンツの値段がそれほど安いわけでもなく、特にPay-Per-Viewで視聴していると料金がかさみやすいことなど、敷居の低さに対してヘビーユーザーに優しくないデメリットもある。このあたりはうまくローカライズしてサービスを拡充していってほしいところだ。

(記事提供:AndroWire編集部)