手話をXbox OneのKinectで補助

デモンストレーションの1つ目は、みずほ情報総研および千葉大学が研究している、手話による会話をXbox OneのKinect(間もなく登場)を使って補助するデモ。Kinectの音声認識システムにより、西脇氏が発した言葉がチャットシステムでテキスト化し、一方でモデルがカメラの前で行った手話は、骨格認識システムで手の動きを認識する。その結果がテキストに翻訳され、健常者と障害のある方の間でコミュニケーションが取れるようになるという(図06~07)。

図06 モデルがKinectの前で手話を披露

図07 するとKinectのスキャン機能で手話を認識し、その結果がチャットシステムにテキスト出力される

医療の現場で

2つ目はXbox Oneが備える機能の1つ、バイタルデータの取得機能を使って、肌から心拍数を検知するデモを披露。ネクストシステムの医療系向け非接触情報操作システム、「KINESYS(キネシス)」などで実用化が進められているという。続けて、Bluetooth対応血圧計と防水・防塵・防薬品のWindows 8.1デバイスを使って、血圧を測るデモンストレーションが行われた(図08~10)。

図08 Xbox Oneが備えるバイタルデータの取得機能。カメラに映し出された顔認識でプロフィールを表示し、左側には心拍数も示されている

図09 Bluetooth対応の血圧計でモデルの血圧を測定

図10 その結果は富士通製のWindows 8.1デバイス(ARROWS Tab QH55/Mと思われる)に転送される

こうした測定結果は、顧客関係管理システムであるMicrosoft Dynamics CRMで構築したサイトに転送して、医療機関にて治療や患者に対するケアマネージメントなどが行えるという。さらに、執刀医との相談にIM(インスタントメッセージング)とビデオ会議を行うMicrosoft Lyncを利用し、院内の検査結果を踏まえてさらに必要な情報が簡単に確認できることを示した(図11~12)。

図11 測定結果はMicrosoft Dynamics CRMで構築したサイトに転送し、院内などで情報共有やケアマネージメントに利用できるという

図12 担当医との情報交換にはMicrosoft Lyncによるコミュニケーションが利用可能

また、担当医からのリクエストとして、高精細なレントゲンの映像と、患者に説明するための患部が必要だという。西脇氏はこの回答として、20インチ4K液晶ディスプレイを搭載したWindows 8.1タブレット、パナソニックの「TOUGHPAD 4K UT-MB5」を用いて、レントゲン写真を紹介した。もともと同デバイスは法人向け製品であると同時に、診断画像の高精細表示を求める医療機関などへの販売を前提としているため、このデモには適切なデバイスだった(図13)。

図13 パナソニックの「TOUGHPAD 4K UT-MB5」でレントゲン写真を映し出したシーン

患者への説明に用いる患部については、3Dプリンタで出力して西脇氏が着色した心臓のモデルを披露。3Dモデリングには、Microsoftが先日公開した3Dオブジェクト作成・出力用Windowsストアアプリ「3D Builder」を利用したという。Windows 8.1が3Dプリンタにネイティブ対応していることをアピールする、うまい流れだ(図14~15)。

図14 3Dプリンタで造形した心臓のモデルを用いて患者に説明を行うという

図15 無償使用可能なWindowsストアアプリ「3D Builder」で作成した心臓の3Dオブジェクト

最後に手術の説明を終えて、患者からインフォームドコンセント(同意書)を行うときも、そのままWindows 8.1デバイスで直接サインをしてもらうといった、一連の流れがすべてデジタルデバイス上で完結していることをアピールしていた。もちろんデバイスやシステムありきのデモンストレーションだが、これらのシステムが医療現場に導入されれば、患者側の利便性も大きく向上するだろう(図16)。

図16 手術に対するインフォームドコンセントのサインもタブレット上で行える

BYODをシステマティックに

3つ目は、セカンドファクトリーのクラウド型オーダーシステム「QOOpa(クーパー)」を利用し、マルチデバイスを用いた注文から決済までのデモンストレーションである。アルバイトが現場で働く際に必要となるデバイスに、個人所有のデバイスを使って(BYOD:Bring Your Own Device)、決済を行うというものだ。会場ではWindows 8.1デバイスやiPhoneなど異なるデバイスからシステムにログオンし、現場で注文を取るまでの流れを披露した(図17~18)。

図17 「QOOpa」では、Windows 8.1デバイスやiPhoneなど異なるデバイスでも同じシステムが提供されるという

図18 デバイスから注文を取ると調理場に設置したシステムに注文結果がリストアップされる

異なるデバイスでも同じUIで使えて、しかも自分所有のデバイスを持ち込むため、雇用したアルバイト用にデバイスを用意せずに済む。コストダウンも容易に行えるだろう。さらにデモンストレーションでは、Bluetooth対応のカードリーダやバーコードリーダ、プリンタなどを用いて、クレジットカード決済から支払者のサイン、レシートの出力までを行った。実際にPOS(販売時点情報管理システム)を用意せず、安価なデバイスをそろえるだけで、注文から決済までを処理できるという(図19~21)。

図19 決済時はBluetooth接続のカードリーダーなどを用意することで、POSを用意する必要はないという

図20 レシートもBluetoothプリンタから出力できる

図21 カード決済のサインもタブレットに直接サインすればよいという

接客品質と販売効果を向上

そして最後は、ソリマチ技研の「UNITE-R2 POSセールスコンシェルジュ」を用いたデモンストレーションを披露。同システムは店舗に訪れた顧客に対して、コンシェルジュのような役割を行う。例えば、タブレット上で選択した商品を買わずにいた顧客に対し、アイテム購入に結びつくような礼状を送る…といったシチュエーションを想定する。

その際、Wordなどで礼状を新規作成するのではなく、ワンクリックで礼状やアイテム画像などをPowerPointに貼り付けられる。現場では、それを印刷して封筒で送るか、顧客の帰り際にサービスチケットとともに手渡しするといった、接客品質と販売効果の相乗効果を見込めるという(図22~23)。

図22 タブレットを利用した顧客への販売システム。「UNITE-R2 POSセールスコンシェルジュ」を利用している

図23 顧客がチェックしたアイテムをワンクリックでPowerPointに貼り付け、礼状の送付や帰り際に渡すといった接客が可能に

最後に西脇氏は、これら多くのデバイスを管理する方法として、クラウドベースの総合管理システム「Windows Intune」をすすめていた。同システムを用いることで、管理下にあるデバイスのOSバージョンやセキュリティ状態を、クラウド上で管理できるという。さらにアプリケーションの開発環境として、Visual Studio 2013に搭載されたパフォーマンス診断機能を紹介。アプリケーションが消費するCPUパワーなどから電力消費量を測定し、さらなる最適化を行えるという(図24~26)。

図24 Windows IntuneでBYODデバイスを管理すれば、セキュリティ面の対策も行えるそうだ

図25 Visual Studio 2013のパフォーマンス診断機能。CPU利用率やメモリ消費量など、アプリケーションの性能を確認できる

図26 推定消費電力を測定することで、医療や小売りなどの現場で適切に動作するか確認できる

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「デバイスとサービスの新時代へ」と題した本キーノートだが、我々の生活に即したデモンストレーションを目にすると、既存のITシステムと連携して、より利便性の高いサービスが生まれる可能性を強く感じた。上述のデモンストレーションとは別に導入事例も紹介されたように、クラウドOSビジョンを持ったシステムが身の回りに登場し、我々の生活をより便利にしつつある。本イベントは法人向けだが、ここで新たな「シーズ」を獲た企業が、IT技術を用いた豊かな生活を提供してくれることを期待したい。

阿久津良和(Cactus)