Intelは15日、東京都内で記者説明会を開催し、IoT(Internet of Things)に関する同社の戦略や取り組みを紹介した。
説明会ではまず、Intel セールス&マーケティング事業部 副社長 兼 エンベデット・セールス・グループ ゼネラルマネージャーのリック・ドワイヤー氏と、Internet of Thingsソリューション事業部 セグメント&ブロード・マーケット事業本部長 ジム・ロビンソン氏が登壇。IntelのIoT市場へ向けた戦略や取り組みを説明した。
Intel セールス&マーケティング事業部 副社長 兼 エンベデット・セールス・グループ ゼネラルマネージャーのリック・ドワイヤー氏 |
Internet of Thingsソリューション事業部 セグメント&ブロード・マーケット事業本部長 ジム・ロビンソン氏 |
IoT(Internet of Things)は"モノのインターネット"とも訳される言葉で、近年耳にする機会が急激に増えている。これまでインターネットに接続されてこなかった白物家電や産業機器といたデバイスを、インターネットに接続してそこから得られる情報を活用するというもの。
なぜIntelがこの分野に取り組むのかというと、今後インターネット接続機器が急激に増加することが予測されているが、その中心にあるのがIoT関連の機器であり、そこに大きな市場が見込まれるためだ。ロビンソン氏の所属するInternet of Thingsソリューション事業部は、IntelがIoT市場に注力するためにCEOであるブライアン・クルザニッチ氏直轄で組織されたという。
ドワイヤー氏は「IoTは限られたセグメントではなく、いかなる領域にも適用できる」という。その一例として米国におけるDaikin Appliedの取り組みを紹介。はじめは「うちはコンプレッサーを作っているのでクラウドを必要とするといわれても理由が分からない」といわれていた。
しかし、いまではコンプレッサーをクラウドにつなぐことで、機器の状態をモニタし、機器が故障する前あるいは故障してもすぐに対処できるようなプリベンティブ・メンテナンス(予測保全)や、電力のデマンドレスポンス(米国では電力使用のピーク時に電気代を上げて使用量を抑制する)において、コンプレッサーの電力消費を抑制するといった制御を行っているという。
ドワイヤー氏は、IoTに必要な技術として「セキュリティ」「新たなビジネスモデルを可能にするアナリティクス」「デバイスからクラウドに至るまでの接続性&ソフトウェアの拡張性」の3つを挙げる。特にCEOやCIO、CFOといった経営層が重要視する「セキュリティ」の部分では、Intelが傘下に収めたWind RiverやMcAfeeの技術によってエンドポイントからクラウドまでカバーできるとアピールする。
IntelがIoT市場に向けて2013年10月に発表した「インテリジェント・ゲートウェイ・ソリューション」では、Atom E3800ファミリ(開発コード名:Bay Trail-i)やQuark SoC X1000という2つの低消費電力プロセッサをベースとして、Wind RiverやMcAfeeのソフトウェア統合。事前検証済みのハードウェア/ソフトウェアが提供されるため、製品の開発や導入をより速く行うことができるとしている。
このソリューションは2013年第4四半期にサンプル出荷を開始し、2014年第1四半期の提供を予定している。
ロビンソン氏からは、Atom E3800ファミリの採用例として米Xeroxの取り組みが紹介された。米Xeroxでは独自のASICを使って製品開発を行ってきたが、Atom E3800ファミリを使うことで開発スピードが向上したほか、アプリケーションによる新たなビジネスも可能にしたという。
IntelではAtom E3800ファミリとQuark SoC X1000を通じて、IoT機器向けの製品ロードマップを拡充している考えだ。
日本国内でもIoTを推進
インテル 常務執行役員 クラウド・コンピューティング事業本部 事業本部長 平野浩介氏 |
最後に日本国内におけるIoT市場に向けた取り組みについて、インテル 常務執行役員 クラウド・コンピューティング事業本部 事業本部長 平野浩介氏が説明した。平野氏はインターネット接続デバイスの増加、特にIoT分野の機器が増加するとの予測を背景に「この分野を取りにいくかどうかが非常に重要。"今の勝ち組"であるスマートフォンやタブレットも成長するが、数からすればIoT分野は爆発的に大きくなる」と話す。
また、日本国内はLTEといった無線ブロードバンドのカバー率が世界的に見ても高く、WiMAX 2+などの次世代サービスによって1Gbpsの通信速度の実現も見えるネットワーク環境があることに加え、2020年の東京オリンピックに向けてインフラへの投資が見込まれることからIoTを引っ張っていく環境があるとする。
日本国内での取り組みの優先分野として、製造業やインフラ、自動車業界をターゲットとする。製造業ではすでに産業用機器向けのプリベンティブ・メンテナンスによるコスト削減に取り組んでいるが、これをインフラに適用し、道路やトンネルなど既存のインフラに対するプリベンティブ・メンテナンスを行うことで、維持や管理にかかるコストを大幅に削減できるという。また、自動車ではネットワークへの接続が可能な「コネクテッド・カー」に期待を寄せる。
また、すでにPOSやデジタルサイネージなど、ネットワークへの接続機器が多数存在している小売業界に向けてもソリューションを新たに提供。デジタルサイネージ用のCMS「インテル・リテール・クライアント・マネージャー」によって、デジタルサイネージ向けのコンテンツ配信のほか、稼動しているデバイスの状況を把握するためのログや電源管理なども行うことができる。
日本国内ではパートナー企業との連携も行っていく。「インテル・リテール・クライアント・マネージャー」ではピーシーフェーズや東京エレクトロンデバイスがコンサルテーションや設置、運用サポートを行うほか、Atom E3800ファミリでもロームが電源管理用ICを提供する。
最後に平野氏は「IoTに関わるマーケットは非常に大きなものになる。ここでビジネスを取って"次の勝ち組"になるよう邁進していきたい」と語った。