インテルは10月31日、都内で「インテル ソフトウェア・イノベーション・フォーラム2013」を開催した。その中で「Tizenの2013年進捗、今後の展開」と題してTizenの将来像について語るセッションが行われた。講演内容についてレポートする。

講演には、NTTドコモ プロダクト部技術企画 担当部長の杉村 領一氏、インテル コーポレーション ソフトウェア&サービス事業部でマネージングディレクターを務めるクリストファー・クロトー氏、サムスン電子 ソフトウェアR&Dセンターでエグゼクティブ バイスプレジデントを務めるジョンドク・チョイ氏(講演順)が登壇した。

Tizenの新UIを披露 - ドコモ杉村氏

初めに登壇したNTTドコモの杉村氏は、Tizenのサービス仕様の策定や普及啓発を行っているTizen Associationのチェアマンでもある。

NTTドコモ 杉村 領一氏

杉村氏は「マルチデバイスとクラウド環境の周りには、ユーザーや端末ベンダー、アプリベンダー、ネットワークオペレーターと、4人のステークスホルダーが存在する。この世界の中央にはアプリケーションが用意されており、クラウドを通して広がっていく。新しい価値を作っていくことがエンドユーザーにもプラスになっていく」と語る。

Tizenはビジネス視点のTizen Associationと、技術視点のTizen Projectの2輪で動いているが、これは「二つで動かした方が開発者にとってもわかりやすいから」(同氏)だという。

技術視点のTizen Projectは、LinuxベースのモバイルOSの開発を行っていたLiMo Platformを起点としており、SDKやAPI、ユーザーインタフェースの開発を行っている。Linux Foundation内部に置かれているプロジェクトであるため、「完全にオープンな形」(同氏)であることが特徴。

一方で、Tizen Associationではプラットフォーム要件の策定やビジネスモデルの構築、オペレーターの支援を通してエコシステム作りを行っているが、こちらにはドコモやVodafoneといった携帯キャリアも参画している。先ほども触れたが、ドコモの杉村氏がチェアマンを務めており、取締役選任会社には富士通やパナソニックといった日本メーカーも並ぶ。パートナー企業としてソフトバンクやシャープの名前もあるが、現在のところ目立った動きは見せていない。これからも参加企業は順次増加していくという。

ほかにも、Tizenの仕様を説明し、特定デバイスに向けたプロファイルを用意していることを強調。「モバイル」「モバイルライト」「IVI(自動車)」「TV「Clamshell」「Camera」「Printer」と、それぞれの機器特性に合わせた仕様が用意されることで、製品作りが容易になるほか、コンテンツの汎用性に大きな効力を持つという。

Tizenは、Firefox OSと並び「第3の(モバイル)OS」と評されることが多いが、Androidと酷似したホーム画面のFirefox OSとは異なり、ユーザーインタフェースに大きな特徴を持つ。それが「ダイナミックボックス/ドロップビュー」だ。

ダイナミックボックスは、アプリケーションに関する最新の情報を提供しており、内部コンテンツを表示することができる。また、このダイナミックボックスを下にフリックすることでドロップビューが表示される。ドロップビューは、ダイナミックボックスに表示されていたコンテンツを拡大表示などの形で詳細に表示することができ、素早くユーザーが閲覧したいコンテンツが確認できるメリットがある。

杉村氏は「これまでのスマートフォンは目的を考えてからアプリを探し、コンテンツを開いていた。一方で、ドロップビューは、コンテンツが表示されていて、ユーザーが気付いてからより詳細に内容を見る形。これは人間のコミュニケーション方法を考えると自然な行動であり、今後、ウェアラブルデバイスなどに転用する場合にも非常に有効」と語った。

開発者支援に積極的なインテル

続いてインテルのクリストファー・クロトー氏が登壇した。クロトー氏は「Tizenはイノベーションの木になる。カメラデバイスでは、すでにTizenを搭載したものも登場している。関連企業だけのPRでやっているので、なかなか一般ユーザーに伝わりにくいが(笑)」と語り始めた。

Tizenのエコシステムパートナーには携帯キャリアやWeb開発会社、果てはセキュリティベンダーであるMcAfeeなども参加している。「McAfeeはOSのセキュリティAPIを提供している。これはクローズドなものではなく、オープンにしているから他のセキュリティベンダーも利用することができる」(同氏)

また、Tizenはオープンな開発コミュニティが用意されているが、これも開発者や今後の展開に向けて大きな役割を果たすという。「大企業が全てを握っているプラットフォームは開発者にとってキツい物になると思う。Tizenはその点、ネイティブ(C言語)とHTML5という2つの開発方法が用意されているし、この要素は大きい」(同氏)

もちろん、全てがオープンで自由気ままな方向に動くとなると、プラットフォームは上手く回らない。「Linux Foundationに所属していることが大きな意味を持つ。Tizen Associationによって管理されることが、ビジネスへと繋がる。バックパネルばかり見るのではなく、前を向いて将来を見通せなくては意味がない」(同氏)

将来を見通す上で、必要なものはプラットフォーム上で動くコンテンツやアプリの存在だ。Intelはハッカソンやアップラボを頻繁に開催しており、その甲斐もあってTizenプラットフォームが動き出してからこの2年で500万人の開発者がTizenコミュニティに参加している。

アクセラレーターのパートナーだけではなく、Unityなどのゲームプラットフォーマーも参加していることから、開発環境の充実も今後さらに進むとみられる。

サムスンは開発環境をアピール

最後に、サムスンのジョンドク・チョイ氏が登壇。チョイ氏は初めに、開発者にとってTizenというプラットフォームがどう見えるかを考え、「良いソフトウェアを開発してもらえるよう、洗練された素晴らしいSDKを用意した」と説明。

Windowsだけではなく、UbuntuやMac OS向けにも提供することで、幅広い開発者がTizenを開発できる環境を構築した。

「統合開発環境(IDE)も用意し、プロジェクトマネージメントやテンプレート、サンプルなど開発のしやすさを追求した。UIビルダーやエフェクトビルダーも用意しており、エミュレーションも容易だ」(チョイ氏)

また、ドコモ・杉村氏と同様に、チョイ氏もダイナミックボックスの説明を行い、その魅力をアピール。こちらは実際に動作しているアプリのスクリーンショットを公開し、直感的で素早いコンテンツアクセスを可能にしたUIの潜在能力を紹介していた。

最後に、今後のTizenプラットフォームの展開を公表。次期バージョンであるTizen 3.0については2014年第2四半期に公開すると発表した。

Tizen IVIが活況を見せていたソリューション展示ブース

なお、「インテル ソフトウェア・イノベーション・フォーラム2013」の会場では、Tizen IVIを利用したソリューションの展示が行われていた。Tizen IVIは車載向けに用意されたプロファイルで、Tizenプラットフォームの中でも特に開発が活発な分野となっている。特にゼンリンは、以前より展示会への出展を行っており、完成度の高いデモを行っていた。