見た目を豪華にするだけではない、エフェクトの使い方

レイヤー効果で光のラインやパーティクルを描くのは、見た目の華やかさを加えるテクニックのひとつ。作例では、ロッドから発動した魔法を表現したエフェクトの描画が3種類紹介された。

華やかさだけでなく、ラインの描き方で遠近感や画面の広がりを強調することも可能だ。反対に、動きのないエフェクトで静かな雰囲気作りを狙うこともできる。キャラクターや背景だけで表現できない部分を補完する意識でエフェクトを活用してみよう。

奥行きや画面の広がりを表現した翼タイプ

ハートやピンクの色味で可愛らしさを加えた軌跡タイプ

魔法の発動を印象付ける魔法陣タイプ

こうしたエフェクト作りに活用できる素材作りのテクニックが、芳賀氏のライブペインティングで紹介された。まずモチーフになる図形の下書きに右半分だけペン入れを行い、複製して左右反転。右半分と合体させ、複製して180度反転する。さらに複製して円状に配置して円や正方形を組み合わせると、魔法陣のような模様ができる。

芳賀氏の描いた魔方陣

これをレイヤーモード「覆い焼きカラー」などで合成し、さらに複製したものをガウスでぼかすことで、発光したような効果が強調される。

エフェクトを描いたレイヤーを複製し、下のレイヤーをガウスでぼかす。それから色味を調整して完成だ

作例では魔法の発動を表現するライン以外にも、光の調整エフェクトが加えられている。これにより、キャラクターに青味やオレンジの光がかかる(=ロッドが光っている)という、絵の中の説明量を増やすことができる。

修正前(左)と修正後(右)。キャラクターが光を受けていることを表現

今回の作品を例にすると、ソーシャルゲーム向けの作品はサムネイル表示やトリミング後でも目立つべき所がきちんと目立つよう、塗りの質感でキャラクターの完成度を上げ、さらに光の効果や視線を誘導するエフェクトによりサムネイルで見た時の印象を上げることが望まれる。むやみにエフェクトを重ねるのではなく、目的に合わせた作り方を見つけていくことが重要だ。

イラストレーターとして働くために

魅力的なイラストを描ける人は多くいるが、「趣味で描くこと」と「仕事として描くこと」の違いはどこにあるのだろうか。数多くの作品をディレクションしてきた金枝氏は、「自分で100点だと思って出したものでも、修正を指示された時に自分の技量でどれだけ要望に近づけるかが課題になります。人を惹きつける絵を描くために、自分から積極的に考えなくてはいけない。そうした、一歩進んだ意識を持つ事が必要です」と語った。

また、実際に仕事でイラストを描いている芳賀氏は「60点の塗り(=修正前の作例)では、細かい部分の処理が甘いです。こだわりを持って仕上げ、さらにキャラクターやクライアントの要望に合った塗りを探していってほしい」と述べた。

会場ではワコムのタブレット「intuos5」と「Cintiq」シリーズを展示。来場者が実際に触れて描き心地を体験していた

モニターに資料を表示させ、液晶タブレットで描くという使い方ができる「Cintiq 13HD」

マルチタッチ機能搭載で自然な操作性を実現する「Cintiq 22/24HD touch」

テクニックを身につけると共に、完成度にこだわる意識も

セミナー全体を通して、非常に具体的で、すぐに役立つポイントを数多く学べる内容となっていた。同時に、プロが作品を見るポイントや、商業イラストに求められる要素についても触れられており、イラストレーターを目指す人にも意義のあるセミナーだったと言えるだろう。

なお、このセミナーの模様はワコムのセミナー特設Webページにて動画で視聴することが可能だ。また、MUGENUPでは登録イラストレーターを募集しているとのことなので、詳しくは同社Webサイトにて確認してほしい。