ノルウェーのOpera Softwareはいち早くモバイル分野に進出したブラウザベンダーだ。スマートフォン時代になりモバイルブラウザの重要性は高まっており、米Appleや米Googleも自社Webブラウザを強化し、プラットフォームとの連携を強めている。そんな中、Operaのような独立系のWebブラウザの強みは何になるのか? Operaの2人の担当者に聞いた。

現在Operaはモバイル向けとして「Opera Mini」「Opera Mobile」の2種類のブラウザを提供している。前者は主としてスペックが限定的なフィーチャーフォンでもブラウジングやソーシャルアプリを利用できることを目指したものだ。後者はデスクトップ版と同じレンダリングエンジン(Presto)を搭載するフルブラウザの位置づけとなり、スマートフォンとタブレットで利用できる。

iOS向け Opera Mini

Android版Opera Mobile

Operaでモバイル担当プロダクトマネージャを務めるPhilip Gronvold氏は、Operaの強みについて、サーバー側でページを圧縮することでデータ伝送量を削減する独自の手法と最新技術の採用を挙げる。たとえば、iPhone向けのOpera Miniの場合、従来版のバージョン6.5と比べるとバージョン7では圧縮率が20%も改善しているという。最新技術としては、HTML5などの採用が挙げられる。

Operaは積極的に標準作業に参加しており、いち早く最新の標準を製品で提供してきた。2月末にスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2012」では、WebGLをサポートし、HTML5パーサー「Ragnarok」を搭載した「Opera Mobile 12」のAndroid版などが披露されていた。

これらに加え、カスタマイズもOperaがこだわってきた分野だ。「ユーザーは自分がやりたいことにあわせてブラウザをカスタマイズできる」とGronvold氏は説明する。iOSやAndroidに搭載されているブラウザと比較すると大きな差別化だという。

よく利用するページに高速にアクセスできるスタート画面「Speed Dial」は、デスクトップ版だけでなく、モバイル向けでも利用できる。Opera Mobile 12では登録できるサイトの上限がなくなっている。また、新しい取り組みとなるのが、「Opera Mobile Store」だ。同サービスは、Operaのモバイルアプリストアで、5万5000以上のアプリを揃え、モバイルアプリストアとしてはすでに世界第5位についているという(上位4つはApple App Store/Google Play /Nokia Ovi/GetJar)。月間訪問者数は3000万人、月間4500万を上回るダウンロードがあるという。ネイティブアプリ、HTML5アプリの両方をそろえ、Operaは開発を支援するSDKも提供している。

なぜOperaがモバイルアプリストアを提供するのか? 事業開発部のJeremy Forrester氏は、「アプリ開発者がアプリを公開し、ユーザーにリーチできるクロスプラットフォームのエコシステムを確立したい。(プラットフォームと)垂直統合型のアプリストア以外にも方法はある。ユーザーに選択肢を与える」と狙いを説明する。同時に、Operaファンとの関係確立も重要な目的となる。Opera MiniとOpera Mobileのユーザー数を合わせるとモバイルユーザーは1億7500万人、これらのユーザーがOpera Mobile Storeの潜在ユーザーとなり、アプリ開発者はこれらOperaユーザーにリーチするチャネルが得られる。

Operaはまた、MWC 2012でOpera Miniブラウザ内の決済ソリューション「Opera Payment Exchange」も発表している。同サービスは、InMobi SmartPay、Yandex.Money、Bangoなどの決済サービスと提携し、オペレータによる課金、またはクレジットカードなどの決済手段を選択できるソリューションだ。これまでハイエンドユーザーが中心だったモバイル決済の敷居を低くするという。これらの取り組みをまとめて、Gronvold氏は「Operaは最高のブラウザだ。今年はその上で動くアプリやコンテンツを強化していきたい」と語った。 なお、モバイルアプリについては、「ネイティブアプリの重要性は変わらないが、今後Webアプリが成長する。(モバイル全体が成長する中)ネイティブとWeb、両方が増える」と予想する。「開発者は現在、ブラウザに先駆けてアプリを開発している状態」とGronvold氏は現状を指摘し、デスクトップで起こったようにWebアプリが成長するためには、仕様の完成とアプリ市場の成熟が必要という見解を語った。