今後提供が止まるのではないかと噂されていた「Windows Live Essentials」シリーズの最新版となる「Windows Essentials 2012」が、米国時間の8月7日に公開された。大方の予想どおりWindows Live Meshを廃し、新たにSkyDriveをパッケージング。エンドユーザーには評判のよい「Windows Movie Maker」には大幅の改良が加わり、Windows 8の行き先を照らす明るい材料となりそうだ。その一方でOfficeスイートを強化するように、専用のオンラインストア「Office Store」を公開。他のストアに比べて柔軟な設計を用いているため、利便性だけでなくソフトウェア開発者にも明るいニュースとなるだろう。今週もMicrosoftの各公式ブログで発表された記事を元に、Windows 8に関する最新動向をお送りする。

Windows 8レポート集

「Windows Essentials 2012」登場

Windows Vistaがリリースされた2006年頃、当初「Windows Liveおすすめパック」の名称で、Windows Live系のソフトウェアをひとまとめにしたパッケージを提供していた。当時のMicrosoftは、それまでバンドルしていたOutlook Expressといったインターネット系ツールを本体から切り離し、Windows Liveというブランドを独立させて提供する方法を選択している。その理由として、「インターネット系ツールの開発スパンとOSのそれとが合致せず、日々進化するインターネットのトレンドに追従できないから」だと、当時の関係者は述べていた(図01)。

図01 Windows Vistaでは、Windows Liveへのアクセスをうながす機能が用意されていた

詳しい時期は覚えていないが、いつの頃からか「Windows Live Essentials」に改称。ファーストバージョンであるWAVE 1(Windows Liveではバージョン番号ではなく、WAVE 1、WAVE 2と数えている)は「Windows Live Dashboard」という名称が用いられ、2007年5月頃にはWAVE 2となる「Windows Live Installer」をリリースしているが、日本国内では前述の「Windows Live おすすめパック」から「Windows Live Essentials」に直接改称したように記憶している。

その後のWindows Live Essentialsは、「Windowsムービーメーカー(ベータ版)」などをパッケージングした「Windows Live Essentials 2009(WAVE 3)」を2008年10月にリリースし、同年12月にはベータリフレッシュ版をリリース。その後パッケージに含まれるソフトウェアを個別にアップデートしていったが、2010年9月にはWAVE 4に相当する現在の「Windows Live Essentials 2011」をリリースした(図02)。

図02 Windows 7は、「Windows Live Essentials」シリーズをバンドルしていないため、当初からダウンロードをうながすリンクが設けられていた

Windows 8の存在を事実上公表したのは、2011年1月8日(米国時間)に開催されたCES2011の基調講演(関連記事:「【レポート】CES 2011 - Microsoft基調講演で次世代WindowsのARM/SoC対応が発表に、動作デモも即披露」)。前述のとおり、Windows OSとWindows Liveは異なる開発スパンで進められているものの、Windows 8の開発コンセプトやWindows Liveの統合など相まって、Windows Live Essentialsの開発はそのまま縮小されるものだと思っていた方が多いだろう。これまでの同社なら一部のユーザーやパブリックレベルでベータテストを行ってきたものの、WAVE 4以降はそういった動きを見せなかったからだ。

しかし、2012年8月7日(米国時間)に突如、Windows OSの公式ブログである「Windows Experience Blog」では、Windows LiveチームのプログラムマネージャーであるBrad Weed(ブラッド・ウィード)氏の名前で、WAVE 5にあたる「Windows Essentials 2012」の発表および公開が行われた。その名が示すとおり"Live"の文字が初めて削られ、今後の方向性を示しているようだ(図03~04)。

図03 「Windows Essentials 2012」の発表とリリースを行うブログ記事

図04 「Windows Essentials 2012」の構成

Windows Essentials 2012の構成は上記のとおり、新たにSkyDriveが構成に加わっている。また、コンピューター同士のファイル交換やリモート操作を行うWindows Live Meshは、SkyDriveを加えたことで廃止。それ以外は前バージョンであるWindows Live Essentials 2011とほぼ同じ構成だ。各ツールの詳しい機能は日本語版がリリースされてから紹介する機会があると思うが、今回は変更点が加わったツールのみピックアップして紹介しよう。

まずはSkyDrive。近々では2012年7月12日にクライアントのアップデートが行われているが、Windows Essentials 2012に含まれるSkyDriveはバージョン番号が「16.4.6010.0727」に更新され、ようやく正式版に至っている。機能的には前回公開されたものと大差ないが、Office 2013プレビュー版をインストールした環境では<Officeを使用してファイルを高速で同期し、ファイルでの作業を他の人と同時に行う>という設定項目が追加されていた(図05~06)。

図05 バージョン番号は「16.4.6010.0727」。ファーストリリースの「16.4.4111.0525」から大幅に進んでいる

図06 Office 2013プレビュー版がインストールされた環境では、独自の設定項目が追加される

大きな変化が加わったのは「Windows Photo Gallery(フォトギャラリー)」と「Windows Movie Maker(ムービーメーカー)」の二つ。前者は七枚以上の画像ファイルを対象に、自動コラージュを行う「Auto Collage」機能を搭載した。作成する画像ファイルサイズを事前に選択し、対象となる画像ファイルを選択してボタンをクリックすれば、コラージュ画像が作成される。また、Windows Movie Makerとの共通改良点として、画像や動画のアップロード先にVimeoが追加された(図07~08)。

図07 新しい「Photo Gallery」。UI的な変化は加わっていない

図08 複数の画像ファイルを用いてコラージュを作成する「Auto Collage」機能

後者のWindows Movie Makerは、Windows 8の新機能を使用して手振れした動画を安定させる「Video Stabilization」を搭載。前述のブログ記事では、ヘッドマウントカメラを付けたバイクの動画を例に、Video Stabilizationの効果を紹介していた。静止画像ではわかりにくいため、興味のある方はリンク先の動画を視聴してほしい。なお、本機能はWindows 8上でWindows Movie Makerを使用した際に限られ、Windows 7上では動作しなかった(図09)。

図09 Windows 8上で動作するVideo Stabilization機能(ブログより)

作成した動画のBGMはつい身近な音楽を使ってしまうが、それが著作権に触れるものだとYouTubeなどにアップロードした際、著作権侵害で動画を削除されてしまうことがある。このようなケースを避けるために、適切な権利が付加された音楽を、AudioMicroやFree Music Archiveなどからダウンロードし、BGMとして使用する機能が用意された(図10)

図10 適切な権利が付加された音楽をダウンロードする機能を追加(ブログより)

また、BGMを加える際のトラック編集も拡充された。波形の可視化やナレーション用の音楽トラックを追加することで、全体的な動画編集のしやすさは前バージョンに比べて大きく進歩している。この他にも動画の標準出力形式をH.264に変更するなど、細かい改良も加わった(図11~12)。

図11 音楽トラックを可視化することで編集しやすくなっている(ブログより)

図12 ナレーション用トラックの追加で動画クオリティーも向上できる(ブログより)

この他のツールもバージョン番号や名称に「~2012」が加わっているものの、目立った変化は確認できなかった。執筆時点(2012年8月10日)で日本語版のリリースノートも用意されていることを踏まえると、Windows Essentials 2012の日本語版は近いうちにリリースされるだろう。