MSXで稼働したUNIXとGUI採用OS

前述のようにMSXはユーザーレベルでの盛り上がりが盛んでしたが、その熱意はゲームやツールだけでなくOSにも向けられています。各MSXマシンで動作するOSはいくつか公開されましたが、なかでも特筆すべきは「UZIX」でしょう。Douglas Braun(ダグラス・ブラウン)氏によって書かれたUZIを、Archi Schekochikhin氏とAdriano Rodrigues da Cunha氏がMSX用に移植したOSです。AT&T UNIXの7th Editionをベースにし、起動可能プロセス数の制限はありますが、ファイル入出力やプロセス制御など、UNIXに欠かせない機能はそのまま実装されました。

α版ながらもTCP/IPのサポートやWebブラウザーを移植されていますので、MSXによるWebブラウジングやインターネットアクセスも可能です。UZIXは実質的な運用環境としてHDDが必要となりますが、今回はFDから起動できるテスト版で試してみました。そのため最小限のコマンドしか用意されておらず、ネットワークアクセスを試すことはできませんでしたが、ホビー用コンピューターの色合いが強いMSXでUNIXが動くことに驚愕した次第です(図12~13)。

図12 UZIX 2.0のログオン直後の状態。FDベースでもインストールは可能ですが、容量的な問題でHDDが欠かせません

図13 TCP/IPも搭載しているため、インターネットアクセスも可能です(画面は公式サイトより)

もう一つのOSが「SYmbiosis Multitasking Based Operating System」を略して名付けられた「SymbOS」です。こちらはMSX専用というわけではなく、イギリスのAmstrad(アムストラッド)が開発した8ビットコンピューター「Amstrad CPC」や「Amstrad PCW」向けに作られたのが最初。その後MSXに移植された形となります。両者のプロセッサはMSXと同じくZ80を採用し、ユーザーレベルで愛されたコンピューターでした。Symbiosisという単語が意味するとおり、各コンピューターで共存できるマルチタスクOSとしてSymbOSと名付けたのでしょう。

もともとは1980年代にBerkeley Softworks(現GeoWorks)が開発した「GEOS」に触発され、開発が始まったSymbOSは、Windows OSに似たルック&フィールを採用。GUIパーツはアセンブラで最適化されているため、MSXとは思えないほど快適に動作します。ファイルシステムもCP/MやFAT12/16だけでなくFAT32までサポート(Amstrad CPCなどで使用されたAMSDOSもサポート済み)。執筆時点ではプリンターおよびサウンドデバイスのサポートを完全に終えていませんが、OSの完成度は90パーセント以上に至っています(図14~15)。

図14 MSX2環境でSymbOSを起動した直後の画面。左下に「Start」ボタンを用意するなど、Windows OS風のルック&フィールを実現しています

図15 MSXの画面モードであるスクリーン7を使用し、512×512ピクセルの解像度を実現。複数のアプリケーションも同時に起動できます(画面は公式サイトより)

2000年から始まったSymbOS開発プロジェクトは七年を経た2007年8月で一時中断していますが、インストール環境が限られますので、ご興味をお持ちの方はYouTubeの動画をご覧になってください。

今回本稿を書き終えて気付いたのが、"特定のOS"を紹介するというより、"MSXで動作したOS"が対象になってしまった点。筆者の力量不足を恥じるばかりですが、資料を紐解いていきますと、「MSX」というコンピューターが持つ魅力に引き込まれ、当時のユーザーが発していた熱を強く感じました。その結果、MSX上で動作するMSX-DOS/MSX-DOS2だけでなく、UZIXやSymbOSまでピックアップ致しました。ご了承ください。

MSX上で動作する各OSの紹介は以上です。ナビゲーターは阿久津良和でした。次回もお楽しみに。

阿久津良和(Cactus)

参考文献

OLD-COMPUTERS.COM Museum
UZIX in Japanese
Wikipedia
MSX Resource Center
・MSX MAGAZINE永久保存版 Vol.1/2/3(アスキー)