米Immersionの日本法人であるイマージョンジャパンは22日、同社が提供するAndroidスマートフォン向け新技術「HD Integrator」に関する説明会を開催した。同技術はOEM企業に提供されるもので、搭載端末では高感度なアクチュエーター(駆動源)が活用できるようになる。

登壇し説明するシーハン氏

説明会ではImmersion マーケティング バイスプレジデントのデニス・シーハン氏より、会社の概要紹介と今回発表されたハプティクス技術(触覚フィードバック)について説明があった。Immersionは1993年に設立された、シリコンバレーに本社を置く企業。現在、アメリカをはじめ世界各国で1,200件を超える特許を取得あるいは申請しているという。同社の開発したハプティクス技術は携帯電話、自動車、ゲーム、医療機器、コンシューマー機器などの製品に組み込まれており、これまで東芝、富士通、ソニー、NECカシオ、ノキアなどの大手家電メーカーやゲーム会社などに採用されてきた。Immersionの技術を搭載したコンシューマー向け機器は携帯電話だけでも3億5,000万台を超えるという。

Immersionのハプティクス市場での導入実績(写真右)

同社ではハプティクス技術について「ゲーム、動画、音楽を楽しむユーザーの五感を刺激し物理的感触を与えることで、体感で認識させるもの。聴覚や視覚が充分に発揮できない状況ではユーザビリティの向上につながり、また注意力の散漫が許されない状況では安全性の向上にも役立つ」と説明している。

モバイル市場でのハプティクスの紹介

今回、発表された新技術HD Integratorは、2011年2月に発表された「Integrator」の後継技術にあたるもので、モバイル機器においてはOSのユーザーインターフェースやサードパーティのアプリケーションで利用することができる。現在、主流になっているハプティクスは、あらかじめプログラムでコントロールされた振動を端末上で実行するだけのもの。しかし次世代のHDハプティクスは、ユーザーのアクションを受けてその都度、反応を変えることができる高速レスポンスに対応しており、このためより広範でダイナミックなエフェクトが実現できるという。このHD Integratorを搭載したデバイスは、アメリカ市場においては既に商品化され始めている。

モバイル市場でのハプティクス技術の進化

会場では、いくつかデモが行われた。マラッカを使ったアプリでは、端末を振る速さ、強さによって、音の強弱に細かな表情をつけることができた。これは本物の楽器を振っている錯覚にとらわれるほど忠実なものだった。メールアプリでは、受信メール一覧をスクロールさせる際、重要なメールにさしかかったときだけスクロールが指に引っ掛かるような、不思議な触感を体験することができた。これはSNSなど、他のツールにおいても応用が期待できるものだ。マシンガンの発射音や爆弾の爆発音などを表現できるアプリを使ったデモでは、端末からアウトプットされる音色の違いに反応し、異なった振動が実行される様子を体験できた。

ハプティクスを用いれば、新たなユーザー体験や期待感を創出することができる

デモの様子。新技術により音や映像に迫真性が増し、表現がリアリティを帯びてくる

シーハン氏は、新技術HD Integratorについて「ハプティクスの使用方法を根底からくつがえすもので、ユーザーインターフェースの在り方を一新するだろう」と力をこめてアピールする。類似商品が多く、差別化が難しくなってきているスマートフォン市場においては、他の製品と明確な差別化をはかるための有効なソフトにもなりうる今回の新技術。同氏は「BMWなどの高級車では、ドアを閉めた際のフィーリングにも特有のものがある」という例を挙げ、ブランドイメージには触感がもたらすユーザー体験が非常に重要であると結論づけた。

ユーザーインターフェースはより直感的に、コンテンツはより魅力的になる

ユーザー体験の違いは製品の差別化にもつながる

登壇しロードマップについて説明する小林氏

イマージョンジャパン代表取締役の小林剣護氏からは、日本市場におけるロードマップについて説明があった。日本支社が正式に企業として立ち上がったのは比較的最近のこと。同氏は入社以来、タッチパネル市場の成長を見越して、限られたリソースのほとんど全てを通信キャリア向け製品の開発に注いできたという。「日本のOEMさんは新しい技術に対して敏感で、"世界初"が重要視される」との見方を示す。実際、昨夏にNTTドコモから投入されたスマートフォン「F-12C」(富士通東芝モバイルコミュニケーションズ製)は、HD Integratorの前身技術「MOTIV Integrator」が搭載された世界初のスマートフォンだった。同社の世界初の技術は、その後も進化した形で「ARROWS Tab LTE F-01D」(富士通製)や「MEDIAS ES N-05D」(NECカシオモバイルコミュニケーションズ製)などの最新端末に採用され続けている。

同氏によると、日本のマーケットにおける売り上げは今後順調に伸びる予定とのこと。同社の日本市場における今年の売り上げは、昨年の3倍にもなる見込みだという。「最新のハプティクス技術が搭載された世界初のスマートフォン端末が、まずは日本市場向けに発売され、その後、グローバルモデルにも搭載されるという例も近いうちに珍しくなくなるのでは」と話し、今後も積極的に日本のOEM各社と連携していく姿勢を示した。

(記事提供: AndroWire編集部)