bashの環境設定を行う

Gowとして提供されるUNIX系コマンドはbinフォルダーに格納されていますが、「gow -l」と実行すれば、現在のバージョンがサポートしているコマンドの一覧が表示されます。ご覧のとおり「ls」「vim」「grep」「diff」といった日常作業に欠かせないコマンドが並んでいますが、その一方でgccなどソフトウェア開発環境は一切用意されていません。このあたりの切り分けがCygwinとの差なのでしょう(図14)。

図14 「gow -l」と入力して[Enter]キーを押しますと、Gowが用意しているコマンドの一覧が表示されます

それではGowの各コマンドを使う前に環境設定を行いましょう。UNIXでは環境変数「HOME」が指すフォルダー(ディレクトリ)におかれた設定ファイルを参照し、動作設定を行う文化があります。Windows OSでも同じ環境変数を作成しておきましょう(図15~18)。

図15 [Win]+[R]キーを押して「ファイル名を指定して実行」を起動し、テキストボックスに「sysdm.cpl」と入力して<OK>ボタンをクリックします

図16 ダイアログが起動したら<詳細設定>タブにある<環境変数>ボタンをクリックします

図17 ユーザー環境変数の<新規>ボタンをクリックし、変数名に「HOME」、変数値に「%USERPROFILE%」と入力して<OK>ボタンをクリックします

図18 環境変数「HOME」が正しく作成できたら、<OK>→<OK>とボタンをクリックします

環境変数の設定を終えたら、今後中心となるbashの設定を行いましょう。今回はHOMEディレクトリとなるユーザーフォルダーを開き、bashの設定ファイルである「.bashrc」を作成します。しかし、エクスプローラー上では先頭にピリオドが付くファイル名を作成できませんので、あらかじめ適当なファイル名でテキストファイルを作成し、囲み01の内容を入力してから、bash.exeを実行してみましょう。これで、bashのプロンプトが変化します(図19~27、囲み01~02)。

図19 [Win]+[R]キーを押して「ファイル名を指定して実行」を起動し、テキストボックスに「%HOME%」と入力して<OK>ボタンをクリックします

図20 フォルダー内の何もないところを右クリックし、<新規作成>→<テキストドキュメント>とクリックします

図21 ファイル名を「新しいテキスト ドキュメント.txt」から「bashrc.txt」に変更します

図22 図20~21で作成したテキストファイルをテキストエディターで開き、囲み01の内容を入力して保存します

囲み01 $HOME/.bashrc

export PS1='\h:\w\$ '
export EDITOR=vi
alias vi='vim'
alias ls='ls -FN'

図23 先の例を参考にコマンドプロンプトを起動し、「move bashrc.txt .bashrc」と入力して[Enter]キーを押してください。これでファイル名が偏向されます

図24 こちらが「.bashrc」を用意する前のbash。プロンプトが初期状態のままです

図25 こちらは「.bashrc」を用意した後のbash。プロンプトにホスト名(コンピューター名)やカレントフォルダーが表示されるようになります

図26 同様の手順で「.inputrc」を作成し、囲み02の内容を入力します

囲み02 $HOME/.inputrc

set convert-meta off
set meta-flag on
set output-meta on
set mark-directories off

図27 するとbash上で日本語入力が可能になります

続いてbashを直接起動する設定を行いましょう。コマンドプロンプトから「bash」を実行すれば簡単に起動しますが、やはり直接起動した方がシンプルかつ無駄がありません。操作はGowのbinフォルダーにある「bash.exe」のショートカットファイルを作成し、作業フォルダーを「%HOME%」に変更するだけです。できればアイコンも変更したいのですが、Gow専用のアイコンは現時点で存在しませんので、お好みのアイコンに変更してください(図28~32)。

図28 [Win]+[R]キーを押して「ファイル名を指定して実行」を起動し、テキストボックスに「c:\Program Files (x86)\Gow\bin」と入力して<OK>ボタンをクリックします(環境によってパス名は異なります)

図29 「bash.exe」をデスクトップに右ボタンでドラッグ&ドロップし、デスクトップにショートカットファイルを作成します

図30 ショートカットファイルを右クリックし、メニューから<プロパティ>をクリックします

図31 <ショートカット>タブの作業フォルダーを「%HOME%」に変更して<OK>ボタンをクリックします

図32 これでショートカットファイルを起動すれば、直接bashが起動し、UNIX風の使用環境がひとまず完成します

bashに関しては、より細かいカスタマイズが可能ですが、すべての解説を行うと冗長になりますので、bashを対象にした書籍やWebサイトをたどってみましょう。