ケータイショップには怪しげな"iPhone 4"が

さてそんな中、最近よく聞く話に「iPhone 4のニセモノが中国で大量に出回っている」というものがある。単純に外装だけが似ていて動かすとどうしようもないものから、工作精度が高くアイコンも正にiPhoneと同じに見えるスーパーコピーまで様々なものがあるらしい。これらはどこで買えるのか、中関村を探してみた。

実はPC売り場以上に広くて混沌としているのがケータイ売り場だ。どのビルでも2フロア程度がケータイ売り場になっているが、売っているモノは様々だ。中古品や正規品、アクセサリ、そしてコピー。どのショップにもiPhoneが並んでいるが、本物なのかニセモノなのか区別が付かない。外箱の高さが違うものがあるのは分かるが、ほとんどは箱に収めた状態のままなので外から見てもよく分からないのだ。

こんな感じに並ぶケータイショップのショーケース内にiPhoneのケースが……。しかし実は箱の高さが違うなど、怪しいものが多い。箱の中身は普通は見せていないようで、本物かどうかの区別は付けにくい。店員に言うと商品を出して見せてくれるので、そのときようやくニセモノだと判明したりする

そんな中、ふと足を止めたショップに並べられていた"iPhone 4"の液晶サイズが違うことに気が付いて、まったく英語が通じないので身振り手振りで商品を見せてもらえるように頼んでみた。最初に出てきたものは明らかに液晶サイズが違うニセモノ。タッチパネルの反応は鈍く、アイコンも明らかにニセモノ。Android機のメニュー画面をカスタマイズしたもののように見える。

しかしそのあと出てきたスーパーコピーは重さを除けば本物とほぼ同じ見かけ。アイコンもiPhoneのものと変わらない。タッチパネルの反応が鈍いのはやはり同じだが、ここまでしっかりコピーしてあれば、本物を触ったことがない人には見分けが付かないだろう。バックパネルには違う名前が書いてあるが、実はこれはシートになっていて、ぺろっとめくるとアップルマークとiPhone 4の文字が書いてある。

ちなみに先述の完全なニセモノは500元(約6,000円)。スーパーコピーも700元(約8,400円)。正規品は5,000元(約60,000円)なので、1/8~1/10の価格で売られているようだ。

一度ニセモノを見た後では、地下鉄の中などで使われているiPhoneが本物なのかどうか、ちょっとずつ見分けが付くようになってきた。液晶サイズやUIの動きなどを注目して見ていると「あ、これはニセモノだ」というのがわかる。隣にいた人が使っていたiPhoneがニセモノだったり、空港で帰国便に乗るために並んだ列の後ろにいる女性が使っていたのが液晶の小さな偽iPhoneだったり。これらのニセモノにも正規のiPhone用のカバーやジャケットが普通に装着できてしまうため、なかなか見分けられない。実際にはかなりの数が流通しているのかもしれない。

この話にはさらにオチがある。実はテレビで売っているのだ、偽iPhoneを! 夜中にテレビのチャンネルを回してあちこち見ていたら、いきなり飛び込んできた「Retina」の文字。「??」と思ってその映像を見ていたら、なんとそこで紹介されていたのは「デュアルSIM対応、バッテリ交換可能、Micro SDカード挿入可能、Retinaディスプレイ」と、ある意味iPhoneよりも高機能な「4代金苹果」(ゴールデンアップル 4)だった。液晶の縦横比がおかしく見えたり、なんだかiPhoneより小さく見えるがきっと気のせいだ(笑)。

この製品、交換用バッテリが2つ、さらに充電器とBluetoothのレシーバーが付いて今なら499元。安い! ホテルで通販が可能だったら、思わず買ってしまっていたところだ。恐るべし、中国のコピーパワー。

これがテレビCMをやっていた「4代金苹果」。Retinaディスプレイ搭載でデュアルSIM対応とは、正規のiPhone 4よりも上? 恐るべし、中国

混沌のアジアは電脳にあり!

今回、中関村に行って感じたのは「電脳街」ではなく「市場」のイメージだ。道路脇でプリンタを積み上げて売っていたり、大きなPC類をリアカーや自転車に載せて運んでいたりする姿。そしてどんな製品でも「値切る」のが基本。あらゆる年齢層の人が中関村でPC類を売っている。それはまるで青果や魚類の市場の雰囲気だ。販売価格が高く粗利も出しやすい製品に人が群がっているということだろうが、とにかくそのパワー溢れる雰囲気は日本の電脳のイメージとは違っていて圧倒された。

そしてこの国のとても多くの人が、iPhoneのおかげでアップル製品に高い関心を持っている。単純計算でアメリカの4倍、日本の10倍の市場があるのだ。今後さらに所得が増してくれば、アップル製品への需要が高まってくるのは必然だろう。いつか日本の市場よりも中国の方が優先される日がやってくるのでは――そんな恐れすら感じさせる勢いを、今回の中国取材で十分に感じることができた。