最後は「Mail」。メールボックスやメールフォルダのカラムを省いた、2列のシンプルなレイアウトに刷新された。メッセージリスト(左)と、メール本文(右)に集中できるデザインだ。メールフォルダへのアクセスがひと手間になるが、そのデメリットを解消するために、「よく使う項目バー」が用意されている。Webブラウザのブックマークバーのような機能で、よく使うフォルダや大事なフォルダを登録しておくと、ワンクリックで素早くアクセスできる。

メッセージリストとメール本文に集中できる2列のレイアウト

よくアクセスするメールフォルダは「よく使う項目バー」に登録する。またバーの左端の「Show」をクリックすると3列のレイアウトになる

検索機能も強化された。検索ボックスでタイプし始めると、検索候補がドロップダウンで現れるので、これを活用すれば正確な検索語を素早く入力できる。さらに複数の条件を組み合わせた絞り込みが可能。「6月」(日付)、「WWDC」(キーワード)、「Jobs」(名前)というように、検索トークンを組み合わせることで膨大なメッセージの中から瞬時に探しているメールを見つけ出せる。

また同じ会話に属するメールのやりとりを、会話のつながりのようにまとめるスレッド機能を備える。やりとりが増えるほどに以前のメッセージからの引用が重なって長くなってしまうが、引用や繰り返される文章を自動的に隠して、実際のやりとり部分のみを時系列で表示する。

返信を重ねた長い引用のままでは、過去のやりとりを把握しにくい

LionのMailのスレッド表示では、引用などを省いて表示されるので、過去のやりとりをスムースに確認できる

Mac OS X Lionの日本での価格は2,600円 (サーバー版: 4,300円)。Mac App Storeからの提供のみになる。Snow Leopardが3,300円で提供されたときは、Leopardからのアップグレードの特別価格とも考えられたが、どうやらAppleはMac OSの売上げからの利潤を期待していないようだ。それよりも多くのユーザーが、すぐに最新版にアップグレードすることが重要なのだろう。そのために価格のハードルを低くした。

Mac OS X Lionのアップグレードは、Mac App Storeを通じて提供される。ファイルサイズは約4GB。ダウンロード完了からすぐにインストールプロセスが始まり、光学メディアのように起動に配慮する必要もない。「もっとも簡単なアップグレード」とSchiller氏はアピールした

新機能が優れたものであれば、より多くのユーザーが体験するほどにMac OS Xの評価が向上する。サードパーティの開発者も新機能に刺激を受ける。実際にユーザーが使っているとなれば、なおさらだ。Mac App Storeに、新機能を活かしたユニークで便利なアプリケーションが増えれば、ユーザーにとってMacがより魅力的なものになる。ユーザーの拡大は、さらなるエコシステムの良循環を生み出すだろう。

Lionの場合、従来のマウス操作からマルチタッチジェスチャーへのシフトを図り、Mac App Storeを通じたソフトウェア流通で光学メディアを不要なものにする試みになる。ユーザーの知らないものに対する拒絶が否めないだけに、他の障害を極力排除してアップグレードを促すのが賢明だ。iOSはOSの無料アップグレード提供を通じて、短期間で急速なプラットフォームの進化を実現した。Mac OS Xの低価格提供もまた、iOSの成功から学んだ「Back to the Mac」の1つと考えられる。

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