6月1日~3日の3日間、Linuxをテーマにした技術カンファレンス「LinuxCon Japan 2011」が横浜市西区のパシフィコ横浜会議センターにて開催された。Linux誕生20周年の節目に開催された今年のLinuxConでは、Linuxの生みの親であるLinus Torvalds氏も参加。初日のキーノートに登壇し、カーネルメンテナーのGreg Kroah-Hartman氏とともにLinuxのこれまでを振り返った。ここでは、その基調講演の模様を簡単に紹介しよう。

Linux "3.0"の真意

Linuxの生みの親であるLinus Torvalds氏

Torvalds氏とKroah-Hartman氏の対談というかたちで行われた初日のキーノートは、先日発表されたLinuxカーネルのバージョン番号変更の話題から始まった。

Torvalds氏は、これまでどおりの運用では「Linux 2.6.40」となる次のバージョンを「Linux 3.0」にすることを説明。その理由として、覚えづらいバージョン番号になってしまったことでカーネルメンテナーたちのバージョン管理作業が煩雑になっていることを挙げた。

「2.6.39」と、4桁の数字が並んでいるだけでも親しみにくい印象があるが、カーネルメンテナーらはその下にさらに、どの段階で開発されたものかを表す開発版ならではのバージョン番号を付けて管理しており、戸惑う技術者も多い。こうした問題を解消するために、次のリリースには「3.0」というシンプルなバージョン番号を採用することが決められたという。

もっとも、過去20年の歴史を振り返ると、Linuxは機能面で大きな変更があったときにメジャーバージョンアップを行ってきた。そうした経緯を踏まえると、「Linux 3.0で大規模な変更が加わるのではないか」という期待や不安が抱く開発者やユーザーが現れることも考えられる。Torvalds氏はそうした状況に配慮し、「機能的には、あくまで2.6.40」とコメントし、過度な期待や互換性の心配は無用であることを強調。さらに「そもそも現在のLinuxの開発は、既存の機能を省くようなことはなく、安定した状態を保つように配慮されている」と付け加え、将来にわたって互換性には最大限に配慮していくことを改めて誓った。

Torvalds氏のお気に入り機能は

続いてKroah-Hartman氏は、20年も面倒を見続けてきたTorvalds氏にLinuxのお気に入り機能を訊ねた。

これに対してTorvalds氏は、「一般ユーザーからするとつまらないと感じるような機能が好み」と回答。例として、ホスト名の検出機能の変更をあげ、「一般ユーザーが目にするようなものではないが、この変更のおかげで40%も性能が向上した」と紹介した。

さらにTorvalds氏は、同機能について「ユーザーインタフェースに反映されたり、エンドユーザーの作業を簡略化したりするような機能ではないが、Linuxユーザーであればだれでも知らぬ間に使っているもの」と補足し、「全ユーザーに対してメリットをもたらしていると考えるとワクワクする」とOSS開発者としての喜びを語った。

Linuxのメジャーバージョンアップを祝って、Kroah-Hartman氏からウィスキー「響」が贈られた