初代リリースから1年と3ヶ月、さらに先日のiPad 2リリースを経てコンシューマ製品の一大ジャンルとなった「タブレット」。さまざまなアプリやコンテンツが登場して市場も賑わっているが、一方で「ボタンの押しづらさ」「ナビゲーションのわかりにくさ」「統一性のなさ」といった、主にユーザーインターフェイス上の問題が散見されるのも事実だ。Nielsen Norman Groupは5月26日(米国時間)に発表した最新レポートの中で、こうしたiPadアプリやコンテンツにみられるユーザービリティの問題を報告している。

iPad 2

Nielsen Norman Groupではさまざまなレポートを報告しているが、中でもモバイルユーザビリティに関してはiPadを例に挙げたユーザビリティ調査を行っている。同グループがiPadのユーザビリティに関して行った調査はこれが2回目で、最初のレポート(PDF形式)は2010年のiPadが発売されてしばらく経った時点で公開されており、そして今回が2011年の調査となる(PDF形式)。

2010年の最初の調査報告ではタブレットというジャンルが確立されていなかったこともあり、各種アプリのユーザビリティを体験する被験者は「タブレット未経験」のユーザーが多かった。そのため、初めての操作でとまどうことが多く、それを指摘する内容が中心だった。今回はターゲットを若干変更し、少なくとも2ヶ月のiPad利用経験があるユーザー26人を集め、26のiPadアプリと、iPad用ビューを持つ6つのサイトの検証を行っている。そして、昨年の調査に引き続き、下記のような問題点や傾向が浮かび上がってきた。

閲覧性と操作性のバランスの悪さ

  • 例えば読むのには十分な長さを持つコンテンツだが、タップ(タッチ)できる領域が小さすぎるという問題がある。また、説明文などの表示情報が多いにもかかわらず、その項目の選択には小さな"ラジオ"ボタンしか用意されていないという例もある(Virgin Amerciaのサイトなど)。

iPadの標準ブラウザは複雑な操作には向かない

  • iPadの標準ブラウザは、読書や写真、動画の閲覧など単純なタスクには向いているものの、それ以上の対話性を求める用途にはあまり向いていない。もし複雑な操作を要求する場合にはWebサイトではなくアプリを利用すべきだという。

タッチ可能な領域の小ささ

  • タッチできる領域が小さすぎる、あるいは互いに近すぎてタッチが難しいという例が多い。これは間違った領域を選択してしまいがちで、ユーザーのストレスの原因になる。

不用意な操作によるトラブル

  • 前述のような意図しないタッチ操作で発生した操作がプロセスを進行させてしまい、トラブルを引き起こす。特にアプリで「戻る」ボタンが用意されていない場合に起きる問題だ。

発見のしづらさ

  • タッチ有効なエリアが発見しづらく、しかも表示される文字が小さくて判別しづらいケースがある。

ユーザーはタイピング操作を好まない

  • ユーザーはタッチスクリーン上でのタイピングを嫌い、これが結果として登録プロセスを避ける傾向につながる。

どれも、少し考えればすぐに例が挙がりそうだが、見逃された状態で放置されていることが意外に多いようだ。このほか、新しい傾向として次の問題がみられたという。

  • スプラッシュスクリーンの表示時間の長さ
  • カルーセル(ループ型のメニュー)の操作をユーザーが認識できない
  • 小さいエリアに情報を詰め込みすぎ、さらに何種類もの異なる複雑な操作を要求する
  • サムネイル型の長すぎるリスト表示

またNielsen Norman Groupでは、第1回目の調査で指摘した問題点が修正された例も挙げている。前回、USA TodayのiPadアプリにおいて「左上のタイトルをタッチするとセクション移動」という操作があったが、これを「ユーザーが認識できない」と指摘したところ、間もなくタイトルとは別に「Sections」という専用のナビゲーションボタンが用意された。

また今後の傾向としてコンテンツクリエイターにアドバイスしているのは、「ユーザーが個人で利用するか複数人で端末を共有するのか」という違いを分けて考えるべきだという点だ。現在、iPadは家族や同居人、オフィスなどの場面で1台の端末を複数人で共有するケースが多いという。だが今後については、この製品ジャンルがより認知され、価格競争で端末が購入しやすくなることで、ユーザーが個々にそれぞれの端末を所有することになるだろうと予測している。その場合、ターゲットが個人なのか、複数人で1台をシェアするのかを判断してユーザービリティに反映すべきだというアドバイスだ。