開発者カンファレンス「Google I/O 2011」が5月10日(米国時間)にスタートした。音楽/映画配信サービスやAndroid 3.1 "Honeycomb"が発表されたほか、スマートフォン/タブレットの2系統のラインを統合する次期主力Android OS「Ice Cream Sandwich」のプレビューが行われている。このIce Cream Sandwichでは、前バージョンにあたるAndroid 2.3.x "Gingerbread"で新たに対応したNFC (Near Field Communications)機能をさらに発展させ、「0-Click Interaction」が可能になっている。具体的にはキー操作を行うことなく、2つのNFC端末を互いに近付けるだけでアドレス帳交換やビデオストリーミングが可能になるというものだ。

「NFCサポート」と一口にいうが、実際には段階を追ってサポートが行われている。まず初期バージョンにあたるAndroid 2.3では、NDEF (NFC Data Exchange Format)タグの読み込みのみが可能という非常にシンプルな機能だった。次に登場した2.3.3では、初めてNFCで必要とされる「ICカード読み書き」「ICタグ検出」「ピア・ツー・ピア」の3つのモードをサポートした。そしてまだOSバージョンは不明ながら、今回のIce Cream Sandwichだ。詳細は不明だが、おそらく2.3.3の機能を拡張する形で、より簡単に内部アプリを呼び出す仕組みを実装したものとみられる。

NDEFタグはデータの先頭に含まれるコンテンツの種類を記載したフィールドがあり、NFC対応デバイスはこのフィールド情報を読み取って適切なアプリを起動、以降のデータをアプリへと引き渡す手順をとる。もしICタグにURLの情報が記載されていればWebブラウザを呼び出し、電話番号が記載されていれば電話アプリを呼び出すといった具合だ。この最大のメリットは、ユーザーがタグに合わせて事前に適切なアプリを起動した状態でデータを読ませる必要がないことで、使い方しだいではいっさいのキー操作なしでICタグのデータを基に情報を閲覧したり、適切なアプリを自動起動したりできる。

今回、Ice Cream Sandwichでは、このNDEFによるアプリ呼び出し機能をピア・ツー・ピア(Peer-to-Peer)モードへと拡張した形となる。例えばコンタクト情報を表示したNFC対応スマートフォンに別のNFC対応スマートフォンを近付けると、相手側に同じコンタクト情報が表示され、ちょうど転送された状態になる。またWebブラウザで特定のページを開いているところに別の端末を近付けると、やはりその端末でも当該のページが開かれる。もしYouTubeで動画を見ていた場合は、その動画の途中の内容が相手にストリーミングされた形で表示される状態になる。これがP2Pモードを利用した「0-Click Interaction」だ。ユーザーはキー操作なしで、端末同士を近付けるだけでさまざまな情報交換や遊びが可能となる。Google I/Oではこのほか、HoneycombタブレットにNFC評価ボードをつけた状態のところに(現状でNFC対応タブレットがないため)、YouTube動画を再生中のNFCスマートフォンを近付けて、大画面ストリーミングを実演しているしている様子が紹介されている。

Ice Cream Sandwichの拡張NFC機能を使い、スマートフォンで再生中の動画をタブレット端末へストリーミング転送する

このデモの様子は、Googleが公式で公開している技術セッションの動画でも確認できる。動画全体は1時間と長めだが、当該のデモだけを見たい人は開始から14分目付近を参照してみるといいだろう。日本ではいわゆる赤外線通信によるアドレス帳交換がよく利用されているが、NFCではNDEFと通信プロトコルの組み合わせと応用により、より複雑でさまざまな用途に活用できることがわかる。いろいろ応用例を考えてみるのも面白いだろう。