曲のテンポや音程をフレキシブルに変更できる

「Tracks」では「+」ボタンでiPodライブラリからオーディオファイルを追加、「編集」ボタンで要らないファイルを削除する

「robick」は曲のテンポや音程を変更したり、設定した箇所を繰り返し(ループ)再生したり、イコライザーで音質を調整して再生するといったことができるオーディオプレイヤーだ。オーディオはiPodのライブラリから読み込む。ポッドキャストやオーディオブックの読み込みも可。ただし、DRMで保護された曲やWAV、AIFF形式で保存されたオーディオファイルの再生はできない(WAV、AIFF形式が再生できないのはiOS側の仕様の可能性有り。執筆時の環境はiOS 4.2.1)。操作は音符マークの「曲リスト」ボタンを押し、「Tracks」モードで聴きたいオーディオファイルを選択、あとはレコード状のホイールをなぞって音程やテンポを変更する、これだけだ。

右から「キー etc.」「EQ」「リピート」の各モード。モードの切り替えは音符の左隣にあるレコード盤のボタンのタップで行う

基本的な再生以外に、リバース再生(逆再生)ができたり、オーディオの波形を表示してくれたりなど、さまざまな機能を搭載しているが、このアプリのもっとも優れている点はやはり、音程(ピッチ)を変えずにテンポだけを変更する、反対にテンポを変えずに音程だけを変更できるところだろう。テンポの可変範囲は50%から150%、音程の可変範囲は-12半音から+12半音(2オクターブ)となっている。

ホイールのダブルタップで拡大表示。波形を見ながら繰り返し再生のポイントを探すときに使う

右側の「オプション」ボタンをタップすると「Setting」「Support」が表示される。逆再生の設定はここで行う

「Setting」で「ヒントボタンの表示」をオンにしておくと、ホーム画面の「情報」ボタンのタップで操作のヒントが表示される。

それの一体何が凄いのか? 楽器の演奏をする方ならともかく、そうでない方にはピンとこないかもしれないので、音程とテンポの関係の解説を挟みつつ説明しよう。通常、オーディオデータのテンポを現在の倍の早さで再生すると、音程は1オクターブ上がる。逆にテンポを半分に落とすと、音程は1オクターブ下がる。ベースなど低い音域で演奏される楽器を楽譜に起こそうとした時、そのままでは聴き取りづらいこと多い。そこで、1オクターブ音程を上げて再生することで、聴音を楽にするという方法があるのだが、前述の原理に従えば、1オクターブ音程を上げるということは同時に、テンポが倍の速さになるということも意味している。聴き取りやすくするのに音程を上げると、今度は再生が速すぎて聴きにくくなるというトレードオフの関係が生じるわけだ。しかしこれが、本アプリのようにテンポだけ、音程だけを変更できるとなれば、その関係は解消されるのである。

このアドバンテージは、楽音の聴取のために使用した場合に限らない。外国語学習に使うとしよう、会話を聴きやすくするのに再生速度を落としたら話者のピッチも変化してしまい余計に聴き辛くなったという経験はないだろうか? この場合、再生速度だけを落とし、話者のピッチはそのままにしておけば、「ゆっくり話している」ように聞こえるはずである。

聴音のトレーニング以外にも、もちろん使える。会議録やインタビューなどの記録を文字に起こす際も、同じ箇所を繰り返し聴いたり、テンポを落としたりという機能は有用だろう。また、カラオケが好きな方は、どのキーなら歌えるか探るのに便利だ。テンポとピッチの調整、またループを作ることもできることから、無理すれば(?)DJ用のツールとしても活躍してくれるかもしれない。

対応モデルは、 iPhone、iPod touchおよびiPad互換、OSはiOS 4.0以降、ジャンルはミュージック、アプリサイズは6.2MB、対応言語は日本語、英語、執筆時のバージョンは1.0.0。