既報の通り、NECとレノボは27日、日本において「NEC レノボ・ジャパン グループ」の発足と合弁会社「Lenovo NEC Holdings B.V.」の設立を発表し、同日の19時より緊急会見を開催した。会見には両社の経営幹部が列席し、新会社の戦略や目的、販売体制などを語った。会場の規模や取材陣の数を見ても、注目度の高さを伺わせる。
会見の初めに、NECの遠藤氏が「レノボとの戦略的提携によるPC事業の新たな展開」と題したプレゼンテーションを行った。3つの大きな柱として、開発連携による製品力の効果、スケールメリットによるコストや価格競争力の強化、レノボのグローバルサポート力を生かしたNECブランドのビジネスPCの海外展開を挙げ、将来的には、タブレットデバイスやスマートフォン、サーバー分野など、PC以外の事業連携も両社で検討していくと述べた。
コンシューマ側としては、今後のサポート体制や販売網などが気になるところだが、現状維持。当面はNECとレノボとも従来からの自社ブランドを継続し、それぞれがそれぞれのブランドを販売、サポートするとしている。
今回の提携では、合弁会社のLenovo NEC Holdings B.V.を設立し(出資比率はレノボが51%、NECが49%)、100%子会社となる「NECパーソナルコンピュータ」と「レノボ・ジャパン」が傘下に収まる。NECパーソナルコンピュータは、現在の「NECパーソナルプロダクツからPC事業を分離、分社化したものだ。
続いて、レノボ・グループのユアンチン・ヤン氏が登壇。はじめに「サッカー日本代表のアジアカップ決勝進出、おめでとう」と賛辞を送り、さらにテニスの全豪オープンで中国選手が初の決勝進出を果たしたことを"歴史的"とし、両者の優勝を願うとともに、今回の提携も"歴史的"と力強く語った。NECとの提携については「完璧な組み合わせ」とし、相乗効果を図るとともに、日本市場に対しては長期的な視点で献身的に取り組んでいくという。
Lenovo NEC Holdings B.V.の社長に就任するNECパーソナルプロダクツの高須氏と、会長に就任するレノボ・ジャパンのロードリック・ラピン氏もスピーチした。
NECパーソナルプロダクツの代表取締役 執行役員社長である高須英世氏は、Lenovo NEC Holdings B.V.の社長に就任 |
レノボ・ジャパンの代表取締役社長であるロードリック・ラピン氏は、Lenovo NEC Holdings B.V.の会長に就任 |
高須氏は「今回の提携にはとても大きなエネルギーを頂いた。グローバルなレノボには強い調達力と開発力があり、NECにはない大きな力。それを最大限に生かし、お客様のニーズにマッチしたNECブランドのPCを作れることが楽しみ。日本のPC市場で圧倒的なNO,1を目指す」と述べた。
ロードリック・ラピン氏は「日本で卓越したテクノロジー・リーダーを目指す。NECは日本市場に対する深い知識、高いサービス水準、秀逸な製品デザインを持ち、レノボはグローバル市場における広い販売網、革新的な製品といった強みがある。互いの強みが合わさり、お客様にとって魅力的な製品を、より競争力のある価格で提供できるだろう。レノボは日本での歴史も長く、特にThinkPadは日本で生まれ、現在にいたるまで日本の大和研究所で研究と開発を続けている。今後も日本のお客様のために革新的で市場にあった製品を提供すべくステップアップしていく。また、企業文化も非常に重視し、NECとレノボの長所を生かしたコーポレートアイデンティティを構築する。社員が誇りを持って働け、お客様に安心して製品をご購入いただけ、パートナー様に積極的にお取引いただける新会社を築いていく」とした。
質疑応答
最後の質疑応答には比較的長い時間が割かれた。経営面などに関する突っ込んだ質問も多く飛んだが、プレゼンテーションやスピーチで述べられた以外の情報はほとんど明らかにされなかった。「将来的な可能性」というニュアンスの回答が多く、本当に何も決まっていないのか、情報共有と統制が徹底されていたのか……。消化不良なところは残るが、Q&A形式で簡潔に紹介しておこう。
Q.(NEC)NECのPC事業を、事実上、レノボに経営権を譲渡するという認識でよいか。
A.(NEC)ホールディングカンパニーの出資比率はレノボが51%、NEC49%だが、基本的にはイコールパートナーシップ。NECのブランド、現状の製品やシリーズは残る。経営権の観点でどうこうよりも、今回はお互いのいいところを最大限にいかして、市場に最高の製品を出すと考えてほしい。
Q.(NEC)将来的に100%レノボの傘下になるという話はあるのか。
A.(NEC)そういう話は一切ない。最大の目的はお互いのシナジーで最大のポテンシャルを作り上げ、マーケットに貢献すること。今回の提携だけに終わらず、いろいろな協業の可能性を探索していく。
Q.(レノボ)NECは携帯端末事業も手がける。将来的にスマートフォンも提携範囲になっていく期待はあるか。
A.(レノボ)今回の提携をまず1歩としてPC分野の成功を目指す。それからは他のデバイスの連携もあるかもしれない。
Q.(NEC)今回の提携を持ちかけたのはどちらか。
A.(NEC)どちらかというわけではなく、PC事業は基本的に広いマーケットポテンシャルを築くことが大切。そのなかで自然と話が持ち上がった。
Q.(NEC)NECのPC事業はコンシューマ向けの象徴だと思う。単独で維持しない選択をしたことは、ある意味、ブランドイメージを落とすリスクもあるのではないか。
A.(NEC)NECだけでなく、サプライヤーが一番注意すべきなのは、どうすればお客様に最大の貢献ができるかということ。残念ながらNECは日本市場に特化してきたので、それでは十分な貢献ができない。単独でやってくには大きな投資が必要なこともあり、いいパートナーを早く見つけて、市場への貢献を大きくしていく。
Q.(レノボ)レノボにとって、NECと組む最大のメリットは何か。また、グローバル戦略における今回の提携の位置づけは。
A.(レノボ)日本市場でトップシェアになることや、スケールメリットが大きい。レノボの戦略である「攻め」(新興市場、コンシューマ、SMBなど)と「守り」(法人、成熟市場など)にもマッチしている。
Q.(NEC)今回の提携を足がかりに、中国市場でNECのPCを売っていくような考えはないか。
A.(NEC)現在の提携は日本市場に対するもの。グローバルな部分の可能性については考えてはいるが、提携の中では明確化されていない。しかし、両社の力が世界市場や中国市場にとって意味があるもの、つまりお客様にとって自分たちの製品が受け入れてもらえるなら、レノボと話し合って可能性を探る。可能性の1つとしていろいろな広がりがある。
Q.(NEC)今回はNECパーソナルプロダクツのPC事業のみが移動する。その他の事業で、NEC本体に吸収される事業や製品はあるか。
A.(NEC)PC以外の事業は残る。再編成についてはもう少し時間をかけて考える。今回の提携の発展系にはいろいろな可能性がある。NEC本体への吸収や、分離を含めて最適なオペレーションを考えていく。
Q.(レノボ)レノボの生産体制に見直しはあるか。
A.(レノボ)短期的には現在と変わらない。長期的には一番いい形や効率を考えるが、現状で具体的なプランはない。
Q.(NEC)流通や販売網の集約などはあるか。
A.(NEC)スムーズな提携オペレーションということで、お互い別々にまず始める。将来的にはいろいろな効率化の可能性がある。
Q.(レノボ)NECが引き受ける1億7,500万ドル相当の株式は、レノボの何%に相当するか。
A.(レノボ)約2%に相当する。両社で一緒にやっていこうということで、株式を発行してNECに出資してもらった。
Q.(レノボ)NECは日本ではトップシェアだが、世界的に見ればもっとスケールの大きいパートナーがあったのではないか。
A.(レノボ)日本は世界で3番目のPC市場。レノボの戦略で非常に重要視している。日本でのリーダーを目指す。NEC以外には考えられなかった。