3万円の超お手頃価格の超広角レンズを発見

昔から欲しかったレンズに魚眼レンズがあります。とはいえ、それほど使うものではないので、そのうち買おうと思いつつ今に至っていました。私は学生の頃から一眼レフカメラはニコンを使っており、当時愛用していたマニュアルレンズもいまだに現役。そんな折、ニコン用に改造された「MC PELENG 8mm F3.5」(実売価格348.98USドル)という対角線180度の魚眼レンズを発見したので、購入するつもりでいました。

しかし、その後、さらに手頃な価格で販売されている韓国製の「Samyang 8mm F3.5 Fisheye」(実売価格3万円前後)を偶然知り、ついに衝動買いしてしまいました。価格が控えめなのはマニュアルレンズであることなどが理由のようで、「安かろう悪かろう」の製品ではないようです。実際に使い込んでみると価格のわりに優秀なので驚いてしまいました。

Samyang 8mm F3.5 Fish-eye本体。ニッコールレンズのようなデザインに見えます。さすがにフロントレンズは丸くて大きいので、キズを付けないように注意が必要

以下は共通マニュアルに記載されていたマウント別のスペックです。スペックを見る限り、ペンタックスユーザーの条件が一番いいかもしれません。

  • ペンタックス用は絞り優先モード(Av)に対応しています。
  • ニコン用はマニュアルモード以外には対応していません。
  • ソニー用はマニュアルモード以外には対応していません。また、絞りと連動しません。また絞りをF8以上に絞り込むとファインダ内が暗くなりピント確認はできません。
  • キヤノン用はマニュアルモード以外には対応していません。また、絞りがカメラと連動せず絞りをF8以上に絞り込むとファインダ内が暗くなりピント確認はできません。
  • オリンパス用はフォーサーズ専用で焦点距離が2倍の16mmとなります。またマイクロフーサーズで利用する場合はオリンパスの純正アダプターが必要。

なお、撮影に利用したデジタル一眼レフカメラ「ニコン D50」では、せっかくの魚眼レンズですが焦点距離は1.5倍になります。また、純正のマニュアルレンズと同様にファインダ内にシャッタースピードしか表示されず、内蔵露出計は使えません。また、APS-Cサイズの固体沈没素子専用のため、ニコン用ならDXフォーマット専用となります。そのためFXフォーマット機種やフィルム用機種では利用できません。なお、他のメーカーでは機種により絞り優先モードが使えるものもあるよう。メーカーサイトを確認すると多くのレンズをリリースしているようですが、基本スペック以外の細かい情報は不明確です。

実際の使用感はいかに……!?

ここで魚眼レンズと一般レンズの描画の違いを比較撮影してみました(三脚で固定していないので、視点は若干ずれています)。

AF-S ニッコール DX 18-55mm F3.5-5.6Gを18mmにて撮影

Samyang 8mm F3.5 Fish-eyeにて撮影

AF-S ニッコール DX 18-55mm F3.5-5.6Gを18mmにて撮影

Samyang 8mm F3.5 Fish-eyeにて撮影

さすがに垂直の対象物を撮影するとすごく歪みがでます。とはいえ、このデフォルメこそが魚眼レンズの醍醐味です。

なお、少し気になったのがレンズの装着感。マニュアルフォーカスのニッコールレンズをメインで使っている私は、Samyang 8mm F3.5 Fish-eyeレンズをカメラ本体に装着するときに少し焦りました。かなり力を入れないと入り込まないような感じなのです。個体差も多少あるかもしれませんが、純正レンズのように滑らかなマウントは望めませんでした。メチャクチャ堅いという程でもないのですが……。また、フロントキャップやリアキャップも甘い作りなので、同梱されているポーチを使用するなど、持ち運びの際は十分な注意が必要です。なお、リアキャップに関しては、ニコン純正品を使うことでしっかりと保護できることを確認しています。

確実なピント合わせは難しい

さて、実際の撮影ですが、マニュアルフォーカスでピント調整は可能なものの、確実なピント合わせは至難の業と考えた方がよいでしょう。ファインダを覗いても、どの位置にピントが合っているのかがまったく解からないのです。超広角レンズの類いは絞りとF値の関係を被写界深度で確認し、勘でピントを合わせて撮影する方法が一般的です。そのためマニュアルレンズや単焦点レンズなどは、絞り値と距離の関係で変化する被写界深度が目視できるような独自のメモリ(線)がついているのですが、Samyang 8mm F3.5 Fish-eyeにはそれがまったく付いていません。もっとも最近のズームレンズはF値の表記すらないものが多いので、そう考えれば及第点といえるのかもしれません。ただ、デザイン的にも被写界深度のメモリが付いていたら、さらに高級感が増したはずだと思います。

Samyang 8mm F3.5 Fish-eyeのF値と距離。被写界深度の線はなく、それが少し残念

Ai ニッコール 20mm F2.8のF値と距離、そして被写界深度のメモリ。このメモリは目安としてとても役に立ちます

とにかくラクにそれなりの撮影をしたい場合は、高額でもオートフォーカス対応レンズを購入する方が無難かもしれません。ただ、Samyang 8mmは180度対角魚眼なので、絞りF8で距離は3mほどに設定しておけばパンフォーカス状態だと考えてもよいでしょう。もっとも最短距離の被写体にピントを合わせ、絞り開放で背景をぼかすといった高度な処理は、オートフォーカスレンズには適わないかもしれません。

また、保護フィルタは使えません。この手の超広角レンズはレンズ後部にフィルタを装着するようになっているものもありますが、そのような仕組みにはなっていないようです。

Samyang 8mm F3.5 Fish-eyeのリア部分。フィルタをねじ込むような溝は確認できません

魚眼レンズをたまにしか使わないのであれば、実売価格が3万円のSamyang 8mm F3.5 Fish-eyeで十分ではないかと思います。描画力は優秀で、被写界深度が深いためピント合わせにこだわる必要もそれほどありません。なにより露出を自分で決めて撮影するという写真本来の楽しみ方も味わえる面白いレンズではないでしょうか。今回はテストしてしていませんが、魚眼レンズでムービー撮影してみるのも面白いかもしれません。ちなみに撮影に際しては、入射式単独露出計にて撮影した絞り値とシャッター速度を参考にしています。

同一位置で空を見上げた状態から少しずつ角度を変えて足下当たりまで視点を変えて撮影した状態。さすがに視界が180度もあると視点を変えるだけで劇的にイメージが変わります。なお、マルチコーティングが効いているようで、逆行でもフレアが出るようなことはありませんでした。ただし、広範囲が映り込んでしまうため露出の関係で白飛びしてしまいました

絞りF8以上で距離は3mあたりに固定し、あとは単独露出計でシャッタースピードを求めてフレームを決めるだけ。つまり使い捨てカメラ的な撮影方法で、この潔さがいい感じです。そう考えると一眼レフも超広角であれば、使い方はレンジファインダカメラと似ているようです。予想もできないようなシーンを撮影できる魚眼レンズを手に入れたので、いろいろな場所へ撮影に出掛けたくなりました。