米Oracleデータベースサーバ技術担当SVPのAndrew Mendelsohn氏

9月20日(現地時間)に米サンフランシスコでスタートしたOracle OpenWorld 2010では、ハードウェアからミドルウェア、アプリケーション、開発ツールまでさまざま話題が盛り上がっているが、やはりOracleの基本といえばデータベース(DB)だろう。特に同社は2008年にDB Machineこと「Exadata」を発表して以来、ハイパフォーマンス市場におけるDB技術のプレゼンスを高めつつある。20日に開催された同社DB技術担当SVPのAndrew Mendelsohn氏のセッションでは、動作最新DB技術とこのExadataを交えた事例がいくつか紹介された。

Mendelsohn氏のセッションのメインテーマは昨年リリースされたOracle Database 11g R2についてだ。Oracle DBについては10年選手以上のOracle 9i以前のバージョンを使い続けるユーザーも数多いが、Oracle DB 11g R2のメリットの数々を示すことで、こうしたユーザーを最新環境へと導くことが目的となる。まずDB移行については、9i以降の環境であれば直接アップグレードが可能なこと、そして11gの機能であるReal Application Testingを使って移行計画を事前に精査できる。また現在のOracle DBはeBusiness Suiteだけでなく、PeopleSoftやSieble、そしてSAPまで、幅広いアプリケーション環境でフル機能をサポートしており、そのメリットを享受できるとしている。また11gならではの機能としてはDB圧縮によるリソースの最適化やパフォーマンスの最適化、サーバ統合、セキュリティ、管理の自動化まで、特に大規模環境における機能の数々が強化されている。

これらDB 11gの機能の数々を紹介すると同時に、Mark Hurd氏の基調講演でリブランディングが発表された「Exadata X2-2」の機能概要とその事例も紹介されている。Exadataは、ある意味でDB 11gの機能の集大成ともいえる製品で、特にDB処理でボトルネックとなるI/Oまわりの処理をソフトウェアとハードウェア技術の両方で解決することで、従来のサーバマシンに比べ最大10倍のパフォーマンス増強を実現するものだ。

Oracle DB 11gにおける特徴。やはりDWHやOLTPにおけるパフォーマンス向上、DB圧縮、管理の自動化など、大規模環境での運用における機能が強化されていることがわかる。特にDB圧縮に関しては大規模から中小規模まで、あらゆるスケールで効果が大きい

大規模環境における高速レスポンスシステムの構築例。ExadataなどではDBシステム内部でFlashメモリをキャッシュ化する機構をすでに備えているが、これにインメモリキャッシュやパラレルクエリー機能を提供するマシンを前に配置して階層化することで、さらに高速化が可能

Sun Microsystems買収後に発表されたExadata v2は名称を「Exadata X2-2」に変更され、ハイパフォーマンスDBを必要とする顧客に向けた主力製品となっている

DBにおける最大のボトルネックはI/O処理なため、これをスマートスキャン技術を使って処理内容を最小限度に抑え込むことで高速処理を可能とする。Oracleによれば、通常のクエリーを発行するよりも最大で10倍の高速化が可能だという

事例としては、トルコの携帯通信事業者であるTurkcellと同業者のソフトバンクの2つが紹介された。Turkcellの事例ではストレージ最適化技術を使い、従来のデータウェアハウスのサイズを250TBから27TBまで圧縮することに成功し、さらにクエリーの高速化でパフォーマンス自体も増強することができた。ソフトバンクの場合も同様で、36個あったTeradataのラックサーバを3台のExadataラックに集約し、かつパフォーマンスを2 - 8倍ほど引き上げることができたという。こうしたサーバ統合は将来的な運用コスト削減効果として現れることになる。

トルコの携帯事業者Turkcellの事例。Oracle 11gの圧縮技術を使ってデータウェアハウスのストレージサイズを250TBから27TBへと圧縮することに成功しており、さらに先ほどのスマートスキャン技術によりクエリーのレスポンス速度が10倍にまで向上したという

こちらもやはり携帯事業者でソフトバンクの事例。36個あったTeradataのDWHラックを3台のExadataマシンで置き換えることに成功したという。さらに高速化に成功しており、パフォーマンスの伸びしろの大きさを示している

ほかにも金融機関を中心にいくつかの事例が紹介されていたが、個人的に興味を持ったのがLucasArtsの事例だ。LucasArtsではスターウォーズのオンラインゲームを運営しており、そのゲーム制作やメンテナンスにExadataのデータウェアハウスが活用されているという。ゲーム制作とデータウェアハウスという組み合わせは初めて聞いたのだが、それによればオンラインゲームにおけるユーザーの行動の数々やフィードバックをデータとして蓄積されており、それを集計することでゲームのフィールドや敵の制作に反映しているのだ。たとえばユーザーが詰まるポイントなどは似通っており、それらを集計データからデータウェアハウスで導き出し、最適な形で次のゲーム制作やメンテナンスに反映させるのだという。ゲーム制作もこうした最新のBI技術が応用される時代なのだ。

こちらはLicasArtsの事例。スターウォーズのオンラインゲームだが、これをExadataを使って作成しているという。なぜゲーム制作にデータウェアハウスが必要なのかといえば、ユーザーの過去のプレイデータを記録し、分析を行うことでフィールドや敵のバランス調整を最適化することが可能だという。より楽しいゲーム制作への活用というわけだ

Exadataで強調されるのはパフォーマンス増強と同時に、データ圧縮効果から来るストレージの最適化とサーバ統合の部分だが、こうしたデータ圧縮も段階分けを行うことでストレージ空間のサイズとパフォーマンスの最適化を行っているという。たとえば頻繁に参照されるOLTPなどのデータは圧縮率を低めにし、一方で参照のみのデータウェアハウスや、年間の参照回数が数回以下というアーカイブデータについては圧縮率を高めたりし、バランスをとっている。こうした処理が自動化されることで、最適なパフォーマンスとコスト削減を両立させることが可能となっている。

データ圧縮も一律に適用するのではなく、情報ライフサイクル管理(ILM)の考えに則って頻繁に参照されるデータと、時間とともに参照されなくなってくるアーカイブとを切り分けることで、パフォーマンスとサイズの最適化が可能になる

Exadataを導入する企業の一覧。バンカメ、ソフトバンク、SKtelecomなど、大量データを扱う大手の名前がずらりと並ぶ