中国を本拠地とする家電メーカー、ハイアールは15日、日本国内において新型ドラム式洗濯乾燥機「JW-MD1080A」を発売することを発表した。洗濯・脱水10kg、乾燥8kgの容量はともに国内最大。週末のまとめ洗いや毛布の洗濯はもちろん、60cmという幅広のドラム内径で、ふとんまでラクに収まり洗える点が特徴だ。

ハイアールの国内最大容量ドラム式洗濯乾燥機「JW-MD1080A」

ハイアールグループ 高級執行副総裁 周雲傑氏

もう一つの特徴は洗濯物が取り出しやすいトール&スリム設計。ドラムの位置が高く、奥行きが浅いスリムな形になっているので、洗濯物をとり出すときの腰や膝への負担がかかりにくく、奥まで手が届きやすい設計になっている。価格はオープン。市場想定価格は10万円台前半、他社トップクラス機種よりも2割前後安い価格帯になると予測している。発売時期は2010年11月~12月初旬の予定だ。

価格は安いが機能は充実。振動抑制技術は、ハイブリッドバランサー(球体バランサーと液体バランサー)が洗濯物の偏りを検知して、ドラム内部の回転バランスを補正するもので、ドラム振動の発生を抑制できる。そのほか、日本国内家電市場では必須といえるエコ機能も用意。風呂水ポンプや汚れの少ないとき用として、使用する水量と電気量を20%カットできる「節約」モードを搭載している。

大きくて見やすい液晶パネル

日本では知名度が低いハイアールだが、白物家電・冷蔵庫・洗濯機において、ブランドマーケットシェアは世界第1位を誇る企業だ。日本市場に参入したのは2002年。以降、単身者向けの冷蔵庫や洗濯機、冷凍庫など、ニッチな分野で着実に売上を伸ばしてきた。現在は50リットル以上100リットル未満の家庭用冷蔵庫では国内シェアNo.1を維持している。

家でふとんも洗いたい、という主婦のニーズを取り込んだ

日本の家電市場におけるドラム式洗濯乾燥機は、容量が7~9kgの日本のメーカーの製品が主力だ。ハイアールはさらに上を行く洗濯10kg、乾燥8kgという大容量と、中国メーカーの強みである低コストを武器に、日本国内の家電市場で確固たる地位を築こうとしている。つまり、ドラム式洗濯乾燥機というニッチではない商品分野でもシェアを伸ばし、日本におけるハイアールのブランドを創りあげたい。ここに今回、ドラム式洗濯乾燥機を市場投入するハイアールの狙いがある。

実現には、従来から力を入れていた「顧客理解」を当機種でも実施した。アンケート、インターネットによる調査、実機使用によるヒアリングなどを何度も重ね、顕在するニーズはもとより、目に見えない潜在ニーズまでをくみ取るのがハイアールのやり方だ。今機種では、「ふとんでもラクに洗いたい」という主婦の潜在ニーズを発見し、製品に反映させた。

洗剤を入れる引き出し

液晶のすぐ下にボタンを配列

また、開発スタッフには日本人のデザイナーや技術者を入れ、日本企業に勤めたことがある経験を活かし製品の開発にあたった。これにより、世界一品質にうるさいといわれている日本人ユーザーの目にかなう商品に仕上げている。また、一般的に、日本の企業は製品にメーカーの思いを込めることが多く、日本製品にはユーザーにとって不要な機能が付加されることもある。ハイアールがユーザーのニーズに徹底してこだわるのは、こうした日本企業の弱点を突き、優位に立ちたいという意味も含まれている。

実用家電ブランドとして「日本で本格デビュー」を宣言する森脇利行氏

ところで、近年、日本国内のメーカーですら、シュリンクする日本市場よりも、海外、とくに新興国での市場投入に注力する場面を目にすることが少なくない。そのなか、なぜ、ハイアールは日本の市場にこだわり、流れの逆を行くのか。

「品質に対して厳しい日本市場で認められることには大きな意味がある」(ハイアールジャパンセールス 商品企画部 森脇利行氏)。

日本でトップシェアをとり、ハイアールブランドを日本に根付かせることは、それだけハイアール製品の品質が優れていることを表す。品質に厳しい日本人に認められることにより、単に安いだけでなく、品質の良さもアピールポイントとして、さらにステップアップを図りたい、という思いが根底にあるのだ。

ただし、使い勝手、省エネをはじめとするさまざまな性能・機能、品質、どれをとっても世界トップクラスの日本メーカー。その牙城を崩すことは容易ではない。これまで、外資メーカーが参入しては撤退を重ねている日本の白物家電市場で、ハイアールはブランドを確立することができるのか。ドラム式洗濯乾燥機の売れ行きが今後、ハイアールが日本市場で成功するかどうかの目安の一つになるだろう。

ミス・ラクラクドラムに辺見えみりさんを任命

発表会後半は、「洗濯はこまめにしています」という辺見えみりさんのトークセッションが催された。辺見さんは10の質問に答え、きれい好きで、エコに気を使っているという几帳面な一面を披露した。

「これまでふとんはコインランドリーで洗っていたので、重くて持ち運びが大変でした。家の洗濯機で洗えるのはいいですね」と、今後、洗濯機を買い替えるときは、「ハイアールの洗濯機にしたい」とコメントした。

ミス・ラクラクドラムに選ばれた辺見さん。「省エネには気をつけています」

ブランドを認知させるには、好感度の高いタレントを使うのが日本の家電市場におけるオーソドックスな手法だ。ハイアールでは、そのほか2002年に、銀座4丁目交差点付近にネオン看板を掲出、さらには球団のスポンサー(2009年東北楽天イーグルスおよび福岡ソフトバンクホークス、2010年埼玉西部ライオンズの公式スポンサー)になることや、神戸コレクションへ協賛出展するなど、日本では馴染みある手法によって、積極的にブランド認知向上の活動を展開している。ハイアールを観察すると、ブランド認知の手法も日本人ユーザーの潜在ニーズの把握も、よく研究していることがわかる。ハイアールの努力は、日本市場で成果となって表れるのか。今後の動向に目が離せない。