VP8に関する技術的評価は前述Maxwell氏の言うように、H.264以下という論評が出る一方で、今後の改良で徐々に変化してくる可能性が高い。現時点ですぐに評価を下すのは判断を誤らせる可能性があるだろう。だが特許問題については、思ったより早く判断が下されることになるかもしれない。

All Things DigitalのDigital Dailyコーナーで、John Paczkowski氏がMPEG LA CEOのLarry Horn氏のコメントを報じている。Horn氏によれば、MPEG LAはすでにVP8の調査を開始しており、パテントプール(Patent Pool)形成を模索しているという。パテントプールとは、1つの標準的な技術の利用に際し、関連特許を持つ企業や組織同士が集まることで、利害関係の調整やライセンス業務の一括管理を目指す団体のことだ。パテントプールは第3者への技術ライセンスを簡素化するとともに、将来的な特許紛争の封じ込めや特許ライセンス価格の適切化を実現するのが狙いとなる。動画コーデックでいえば、MPEG-2やH.264などでパテントプールが形成されており、前述のMPEG LAが管理団体として特許のライセンスを行っている。ここでMPEG LAがVP8のパテントプール形成に乗り出したということは、H.264などと同様に特許ライセンス問題が発生する可能性があることを意味する。

もし、Horn氏の言うような形でパテントプールが形成されるのであれば、"ロイヤリティフリー"をうたってVP8をWebMとしてオープンソース化したGoogleの努力は水の泡となる。だがRegisterの報道によれば、米Google製品マネージャのMike Jazayeri氏が同紙の取材に対して「On2 Technologies買収の前にVP8については精査を行っており、我々はその技術に自信を持っている。だからオープンソース化したのだ」とコメントしている。

WebMの特殊なライセンス形態

その理由の1つがWebMの特殊なライセンス形態にある。WebMはBSD"ライク"なライセンス形態でオープンソース化されていると以前にも報じたが、その"ライク"にあたる部分に特徴がある。通常のBSDライセンスの規約に加え、いくらかの文言が書き加えられており、同技術のライセンスに同意した団体や企業は、WebMに関して特許紛争を起こせなくなるよう縛りが加わるという。

こうした効果がどこまで有効かは不明だが、Google自身がVP8取得で最も重要だとしていたのがこのポイントであり、外野の、ましてや特許素人が懸念するレベルの先に問題はあるとみられる。現在はMPEG LAが先制攻撃に出てパートナーや潜在的なライセンシーを脅す戦略に出ているが、今後特許問題はつばぜり合いの後、ベンダー間の力関係の中で落としどころを探る展開につながっていくとみられる。