ワコムは、同社が開催したペンタブレット無料体験イベントにおいて、「Intuos4」と「Adobe Photoshop CS4」を実際に利用した画像編集のワークショップを実施した。ペンタブレットは特別な知識が無くても直感的に使えるツールではあるが、より有効に使いこなすための専門的な情報を得るのが、はなかなか難しいという現状がある。今回のワークショップでは写真の合成をテーマにIntuos4の機能を活かした実戦的なテクニックが紹介された。

ワコムクラブ会員を対象に行われたワークショップ

タブレットのファンクションキーを設定する

まずは、ペンタブレットのファンクションキーに機能を割り当てる設定から始める。通常、Photoshopのズームや手のひらツール、Undoなどの機能は、キーボードショートカットで使用する場合が多いだろう。Intuos4では、本体の8つのファンクションキーにこれらの機能を任意に割り当てることができる。よく使うコマンドを登録しておくことで、作業効率を向上させることが可能だ。

コントロールパネルを開き、それぞれのキーにコマンドを設定していく

割り当てられた機能がキーの横に表示される

今回の課題は、1枚の写真から人物を切り抜き、風景の写真と合成するというもの。はじめに、Photoshopの「抽出」フィルタ(※抽出フィルタはデフォルトでは搭載されていないため、Adobeのサイトからダウンロードして利用する)を使って人物を大まかに切り抜く。ブラシツールで輪郭をなぞり、バケツツールで塗りつぶすと切り抜きたい部分を大まかに抽出することができる。さらに、クリーンアップツールで微調整を行うことができる。

「抽出」フィルタで切り抜きたい対象を抽出。ここでは少し多めに残っていてもOK

ブラシサイズや画面の表示倍率を変えると、精密な作業をできるのだが、この際に便利なのがIntuos4のタッチホイールだ。ブラシサイズの変更やズームイン/アウトをここで素早く操作することができる。

ひとまず切り抜きを完了。右が背景用画像に切り抜いた人物を置いたもの

ブラシの設定でより精密な作業を

さらに境界線を自然に馴染ませていくために、レイヤーマスクを使用する。レイヤーマスクはそのレイヤーの画像の一部を隠すことができる機能。黒で塗った部分が非表示になり、白で塗れば元の画像が再び現れる。元のレイヤーには変更を加えないため、消しゴムで消すよりやり直しのきく方法だ。

このときのコツは、ブラシツールの固さを0%(柔らかい状態)に設定しておくこと。これにより、ブラシの端を使って境界線を自然に消すことができる。さらにブラシサイズ・不透明度を「筆圧」対応にすることで、ペンタブレットの性能を活かした繊細な作業が可能だ。

人物画像のレイヤーに「新規レイヤーマスク」を作成。レイヤーマスクのサムネイルが表示された

ブラシオプションの設定により作業に適したタッチを作ることができる

ブラシを筆圧でコントロールできるため、髪のすき間などの細かい部分も繊細な作業が行える

描きにくい方向の線は、タッチホイールの「カンバスの回転」機能で画像を傾けることで作業しやすくなる。これはPhotoshop CS4との連携により実現した機能だ。

画像を傾けることで書きやすい方向にストロークすることができる

部分的な髪の乱れなどは「コピースタンプツール」を使って周囲の色で塗りつぶし、消していく。この際、修正範囲がボケ過ぎないように、ブラシツールの固さを70%程度に設定。逆に描き足して補正するケースでは、固さ100%、ブラシサイズ1~2で周囲の髪の色を取りながら1本ずつ描いていく。

次に、部分的な肌荒れを「スポット修復ブラシツール」で修正。ブラシサイズを筆圧対応にすることで、大きな修正は強く、小さな修正は弱くブラシを当て、1クリックで補正することができる。やりすぎると質感がなくなるので要注意だ。

わずかにはみ出した髪や肌荒れなどを丁寧に修正していく

最後の一手間で差が出る、自然な仕上がり

人物はきれいに仕上がったが、手前の人物にも奥の背景にもピントが合っているため不自然に見える。そこで、背景が自然に見えるようフィルタでぼかしを加える。

背景レイヤーをコピーして、フィルタの「ぼかし→ガウス」で全体をぼかす

しかし、このままでは背景全体がボケて奥行き感が出ないため、フィルタをかけたレイヤーにレイヤーマスクを追加し、「グラデーションツール」で縦方向に白/黒のグラデーションを描画する。これにより、黒い部分ほど下にあるフィルタをかけていない背景レイヤーが見えるようになる。

人物を背景が馴染んだ自然な仕上がりになった

さらに、人物レイヤーを「調整レイヤー→トーンカーブ」で補正し、明るさのバランスを整えて完成

プラスアルファのテクニックとして、プロのカメラマンが撮影時に使うレフ板の効果を目に描き込む方法が紹介された。ブラシの固さ80%、ブラシサイズ・不透明度の筆圧対応をOFFにし、新規レイヤー上で瞳に白の扇形を2つ描く。このレイヤーの不透明度を10%前後に下げると、レフ板を顔の左右に置いて反射が眼に写り込んでいるかのような効果が出るのだ。

ほんの小さな加工だが、いわゆる"目ヂカラ"が増した印象的な写真になる

限られた時間の中ではあったが、Photoshopの機能を理解しペンタブレットを活用することで、ワンランク上の合成テクニックを学ぶことができるセミナーとなった。