ウォークマンは、現在、X/A/S/E/Wの5シリーズがラインナップされている。そのうち、A/Sシリーズは、9月16日に発表された新製品で、Sシリーズは10月28日、Aシリーズは10月31日に発売が予定されている。今回、発売前のAシリーズのサンプルを視聴する機会に恵まれた。Aシリーズは、ウォークマン史上最も薄い本体に、Xシリーズと同じデジタルノイズキャンセリングシステムとフルデジタルアンプS-Masterを搭載したモデルだ。また、A/Sシリーズでは、歌詞表示機能「歌詞ピタ」も大きな特徴となっている。今回は、本体に加えて、コンポとの連携についてもレビューしてみたいと思う。

新Aシリーズと新Sシリーズは共通のデザインを採用するが、デジタルアンプや、ノイズキャンセリングシステム、有機ELパネルなど、機能面での差はは大きい

本体を手にとって感じるのは、やはりその薄さだ。本体の厚さが7.2mmということは、リリースなどに書かれているが、本体を手にすると、やはり、その薄さには驚かされる。カード電卓並みといった感じだろうか。

ウォークマン史上最薄の新Aシリーズ

さて、気になるノイズキャンセリングシステムだが、とりあえず、電車に2駅程乗って、どの程度の効果か試してみた。以前、筆者はXシリーズも同様に聴いてみたことがある。Aシリーズには、デジタルアンプのS-Masterとデジタルノイズキャンセリングシステムなどを1チップに統合したインテグレーテッドDNCプロセッサが使用されている。これは、Xシリーズや、ノイズキャンセリングヘッドホンのNDR-NC300Dなどにも採用されているものだ。今回、両者を同時に比較したわけではないので、あくまでも記憶に基づいた評価になるのだが、ノイズキャンセリングの利き具合は、Xシリーズと同等だと感じられた。走行中の風切音がほとんど聞こえなくなる上、全体的な周囲のノイズも低減される。ノイズキャンセリングシステムが利いている状態が、ノイズキャンセリングシステムが働いていることを感じさせない、ごく自然な静寂のようにさえ感じられる。

次に操作系をみてみよう。Aシリーズでは、Xシリーズと同様に、ディスプレイに有機ELパネルが採用されている(※)。だが、Xシリーズではタッチパネル兼用だったディスプレイが、Aシリーズでは表示専用になっており、操作は、一般的なプレーヤーと同様に、カーソルキーと決定ボタンを始めとするボタンで行うようになっている。どちらが操作しやすいかは意見の分かれるところだろうが、電車に乗っているときなど、本体をかばんの中などで操作する場合には、一般的なボタンを使用したAシリーズの操作系のほうが楽だと思う。ただし、Xシリーズでは、物理的なスイッチが用意されていたノイズキャンセルのオン/オフが、Aシリーズでは、メニューから選択する形になっている。この点は、Xシリーズのほうが優れているといえるだろう。同社の一連のデジタルノイズキャンセリングシステムを搭載した製品は、その効果が高いため、外を歩く際などには安全のために状況によってオン/オフを切り替えるのが良いと思うのだ。こうした場合にはXシリーズのノイズキャンセル オン/オフスイッチが使い良い。

非常に効果の高いデジタルノイズキャンセリングシステムが搭載される

ノイズキャンセルのオン/オフはメニューから操作を行う


※両機種のパネルは全く同じというわけではない。Xシリーズには3型の有機ELパネルが採用されていたが、Aシリーズに採用されているのは2.8型。また、画素数も、Xシリーズでは432×240ドットだったのが、Aシリーズでは400×240ドットとなっている。どちらもWQVGAと表記されているが、より16:9に近いのはXシリーズの方だ。

続いて、A/Sシリーズの特徴ともなっている、歌詞表示機能「歌詞ピタ」についてだ。写真を見ていただければ分かると思うが、音楽を演奏中に、カラオケのように、その部分の歌詞が表示されるという機能だ。カラオケの練習などをおもな用途とする機能とのことだ。いうまでもないが、ダウンロード販売で購入した楽曲には、CDと違って、歌詞カードは付いてこない。曲によっては、歌詞が聞き取りにくい場合もあるので、間違った歌詞を覚えないためにも役に立つだろう。

演奏中の楽曲の歌詞が表示される「歌詞ピタ」機能

歌詞ピタを使用するには、PCとネット環境が必要だ。そして、歌詞のデータのダウンロード/転送には、楽曲管理ソフト「x-アプリ」を使用する(パッケージに付属しているのは、SonicstageV。ただし、ウォークマン本体のフラッシュメモリーに収録されている「setup.exe」をクリックすると、同社のサイトにアクセスし、最新版である、x-アプリのインストールが始まるようになっている)。というわけで、「歌詞ピタ」の前に、x-アプリについて見ていこう。

ウォークマンのフラッシュメモリにある「setup.exe」を実行すると、x-アプリのインストールがスタートする

次の画面が、インストール直後のx-アプリを起動した状態だ(まだ、ライブラリの検索を行っていない状態)。すでに音楽CDからリッピングした楽曲などで音楽ライブラリが構築されている場合は、そのフォルダ、あるいはファイルを、x-アプリの、画面では空白になっている部分(楽曲が取り込まれるとコンテンツ一覧が表示される)にドラッグアンドドロップするだけで、x-アプリへの曲の登録が行われる(もちろん、インストール時に自動でライブラリからの読み込みを行うことも可能だ)。音楽CD、20枚をリッピングしたフォルダを取り込んでみたところ、数秒で処理が終了した(x-アプリで音楽CDからのリッピングを行うことも当然可能だ)。楽曲を取り込んだのが、次の画面。コンテンツ一覧の上に「楽曲リスト」「楽曲ジャケット」「アルバムリスト」「アルバムジャケット」の4種類のボタンが用意されており、表示方法を切り替えることが可能だ(デフォルトでは、アルバムリストが表示される)。また、ボタンの下にある「タイトル」「アーティスト」「アルバム」などをクリックすると、その項目での昇順/降順のソートも可能だ。ジャケットイメージを表示したままでのソートや、表示の切り替えを行った場合でも、動きはスムーズだ。既存のライブラリーからの取り込みも含めて、この手の管理ソフトとしては、ストレスを感じさせないものだと思うのだが、1点気になる部分がある。「アーティスト」のボタンが用意されていない点だ。アーティストを選んで曲を転送する、というケースはそれなりにあると思うのだが、どうだろうか。

インストール直後のx-アプリ

起動時には小さなジャケットイメージとリスト表示を併用する「アルバムリスト」の状態となる

「アルバムジャケット」表示の状態。どのモードでも、並べ換えや再表示などの動作はスムーズだ

「歌詞ピタ」データのダウンロードは、このx-アプリから行う。その方法はいたって簡単で、アルバムや楽曲が選択された状態で右クリックし、ショートカットメニューから「歌詞ピタ(データ)のダウンロード」を選択するだけだ。現在、7万曲程度の歌詞データが登録されており、今後もその数は増やしていくとされているが、基本的に登録されているのは、邦楽のみとなる。ダウンロードされた歌詞データはメタファイルとして管理され、x-アプリでウォークマンへの楽曲転送を行うと、歌詞も一緒に転送される。なお、歌詞のダウンロードはシンクパワー社によって行われている有料サービスだ。サービスの内容や価格体系などは、同社のサイトを参照して欲しい。同社では、歌詞ISMという、PCや携帯電話向けの歌詞情報サービスも提供している。これは、検索した曲の歌詞を表示したり、プレーヤーでの演奏に同期させて表示させるといったサービス。現在、PC環境では、Windows Media PlayerとiTumes、SonicStageで歌詞の同期が可能だ。

歌詞をダウンロードしたい楽曲/アルバムをを選んで、メニューから「歌詞ピタ(データ)のダウンロード」を選択するだけ

なお、Aシリーズでは、歌詞ピタを使わないのならば、x-アプリを使わずに、エクスプローラーやiTunesからのドラッグアンドドロップで、楽曲を転送することも可能だ。現在、これらの方法でライブラリを構築しているという人は、そのままの環境で使用することができる。実際にエクスプローラーで、楽曲をウォークマンにドラッグアンドドロップしたところ、アルバムジャケットのイメージも含めて普通に転送できた。ただし、後述するコンポとの連携時などには、いくつかの制限らしきものがあるようだ。

今回、ウォークマンと一緒に、同時発表されたHDDコンポ「CMT-E350HD」も借りている。Gracenote社の曲情報データベースも収録されており、PCレスの環境でも、音楽ライブラリの構築が可能だ。内蔵されているHDDは160GBの容量で、最大2520時間分の録音が可能となっている。録音された楽曲は、ウォークマンにワンタッチで転送することが可能だ。天井部分にあるのが、ウォークマンを接続するためのWM-PORT。本体の手前部分には、ウォークマンに転送したり、CDから録音するためのワンタッチボタンが装備されている。

手軽に使えるHDDコンポ「CMT-E350HD」

CDからの取り込みは、本体、またはリモコンの「HDD録音」ボタンを押すだけでスタートする

実際の音楽CDからの取り込みを行ってみたところ、録音時間68.3分のCDからの取り込みに、17分30秒かかった。だいたい4倍速といったところだ。同じアルバムをウォークマンに転送するのには4分弱。このあたりは一般的なPCに比べると(一般的なPCというのが何なのかというのは大きな問題だが)遅いようだ。

また、先ほどいった制限事項らしきものだが、どうやら、x-アプリを使わずに、ウォークマンにドラッグアンドドロップした曲は、CMT-E350HDにウォークマンを接続しても、認識されないようだ。また、内蔵HDDに保存されている楽曲は、本体やリモコンにある、アーティスト一覧ボタンから検索可能だが、接続されているウォークマンに保存されている楽曲には、このボタンは機能しなかった。これらは、PCを使わず、ウォークマンと一緒に手軽に使うというコンセプトのためだろう。同様にHDD非搭載のドックコンポ「CMT-V3PC」もある。特に若年層向けならウォークマンSシリーズとこれらコンポのセットは良い組合わせだろう。PCを持っている場合はドックスピーカー「SRS-NWGU50」と合わせると良いだろう。

Aシリーズの音楽プレーヤーとしての基本部分は、Xシリーズと同等だ。プレーヤーに内蔵されたノイズキャンセリングシステムは、単体のデジタルノイズキャンセリングヘッドホンNDR-NC300Dを使用した場合のように、独立したコントローラー部分を必要としないというメリットもある(NDR-NC300Dのほうが、音質的にアドバンテージがあるということだ)。Xシリーズのデジタルノイズキャンセリングシステムや音質は魅力的だが、ネットワーク機能や、ワンセグチューナー、タッチパネルによるオペレーションなどは必要としないユーザー、つまりプレーヤーが欲しいという人にとって、Aシリーズは、非常にコストパフォーマンスの高いモデルだといえるだろう。とくに、16GBモデルのNW-A845は、現時点で、最も低価格にデジタルノイズキャンセリングヘッドホンを使用することが可能なシステムとなっている。