Very PCの最高経営責任者、Iceotopeの社外取締役を務めるピーター・ホプトン氏からは、クライアントPCにおけるグリーンITの実現について話があった。
同氏は、「"環境に効果的なIT"、"スマートなICT"、"環境に優しく持続性のある材料"という観点からグリーンITを考えている」と述べた。環境に効果的なITはハードウェアやソフトウェアの効率化を意味するため人間がかかわるものではないが、スマートなICTは人間の行動を変える新たな技術を導入することでCO2を削減するものだという。
「スマートなICTは最もチャンスが大きいが、人間に変更を促すため難しい」と同氏。こうした人間に依存している部分のグリーンITを促進すべく、同社では、人間の利用状況に応じてPCの電源のオンとオフを切り替えることが可能なツール「Peco Boo」を提供している。
同ツールでは顔面検知アルゴリズムを用いて、Webカメラで人間を認識できたらPCの電源をオンにし、また、人間が認識されなくなったら電源をオフにするという仕組みをとっている。会場ではデモが行われ、PCの前に参加者が座ったら数秒でPCの電源が入り、PCの前から去ったら数秒で電源が落ちた。
Webカメラで顔を認識しているため、ユーザーが誰かまでは認識せず、また、顔を手で覆うだけで電源が落ちるそうだ。「同ツールではさらにグリーンITに貢献すべく、消費する電力を最小限に抑え、顔の検知率の向上に力を入れている」(ホプトン氏)
講演のトリを飾ったのは、ブラッドフォード大学 環境マネジメント学部教授兼サステイナブル・コミュニケーション・リサーチセンター 副センター長 ピーター・ジェームズ教授だ。同氏は、グリーンIT実現のための将来的な対策として、「新たな働き方」、「エネルギー利用量が少なく、集中化したクライアント」、「インテリジェンスなビル」、「クラウドコンピューティング」、「CO2を排出しないデータセンター」を挙げた。
同氏は、企業や教育機関において、グリーンITに関する検証を行っており、英国の大手通信事業者であるBTでは、TV会議システムを活用して出張を減らすなどして、コストとCO2を大幅に削減することができた例を紹介した。
ただし同氏は、エネルギーを削減できた場合、その効果がどのような影響を及ぼすのかを把握する必要があると指摘した。在宅勤務については、自家用車で通勤している従業員が自宅で仕事をしている時、その自家用車がどのような状態にあるのかを考える必要があるというわけだ。
同氏は、「働き方が変われば、考え方も変わってくるだろう」という言葉で締めくくった。
英国では2010年4月より、年間の電力消費量が6,000MWhを超える事業者を対象に、CRC(Carbon Reduction Commitment:炭素削減義務)という制度が段階的に施行される。同制度の対象となった事業者は、CO2排出量に応じて政府からCO2の割当量を購入しなければならない。
そのため、参加者からは、英国から他国にデータセンターを移す企業が増えるのではないかと参加者から指摘がなされた。そうなると、英国のビジネスという観点からは困るので、データセンターを運営している事業者については例外の規定が設けられる可能性が高いという回答があった。
CRCの対象となる事業者が5,000社ということで、その影響は決して小さくない。こうしたことからも、日本に先んじて、企業に対して具体的に負荷を義務付ける制度を施行する英国の今後の動向が気になるところだ。