「Windows 7パートナー マーケティング デイ」で披露された"Windows 7"の本気度
2009年10月22日に一般販売が開始されるOS「Windows 7」。その発売に先立って、OSを提供するマイクロソフトが各ディベロッパー・サプライヤー・パートナー企業に向けて、最新の消費者製品購入動向や市場規模などのマーケティング情報や、「Windows 7」という新たなOSの登場によりパートナー企業を含めて消費者に対してどのようにアプローチしていくのかを説明する「Windows 7パートナー マーケティング デイ」が開催された。
イベントは、新たな活力に満ちあふれた力強い鼓動で幕を開けた。オープニングの勢いをそのままに、マイクロソフト代表執行役副社長・コンシューマー&オンライン事業部担当の堂山昌司氏による「Windows 7 販売開始に向けて」というセッションがスタート。「全世界で2010年までに1億7,700万台のWindows 7搭載PCの出荷を期待する」と語ったうえで、現在稼働しているXPやVistaからの代替えを含めると約3億6,000万台もの需要が見込まれるという。ネットブックの台頭により薄れた感はあるが、パソコン業界を取り巻いていた停滞感に「Windows 7」という起爆剤を投じることにより、パソコンのみならず、周辺機器やオーディオ・ビジュアル、ソフトやサービスといった、様々なソリューションを活性化させ、市場規模の拡大を狙う格好となる。
世界第4位のマーケティング調査会社、GfK Japanシニアアナリスト岩淵真貴氏からは「PCを取り巻く市場環境とWindows 7の可能性」と題して、キーノートセッションが行われた。店頭市場におけるパソコンの月別販売推移(昨対比)やパソコンを巡る周辺機器の市場規模動向を交えながら、「Windows 7」への期待としてデジタルライフをより快適にする「ホームネットワーキング」の充実と価格対価値の向上が求められる。
そして、誰もが扱える「判りやすさ」が訴求の鍵になると纏めた。また、日本経済新聞社編集委員の関口和一氏も同様に、技術革新によって様々な可能性を見せ始めたパソコンのOSに求められる機能が変化してきたことを語り、「OSに求められるものは、ユーザーインタフェースの操作性向上、統一性の徹底」と締めくくった。
全社一丸となって創り上げた「Windows 7」
なかでも注目を集めたのが、マイクロソフトコンシューマー&オンラインマーケティング統括本部の藤本恭史氏によるセッションだ。「Windows 7」の開発にあたっては、ユーザーの声に耳を傾けることに注力し、「Windows Vista」投入後に各所から寄せられてくる要望でもっとも多かった「高い品質と基本性能の向上」を追求したという。また、OSの機能仕様策定のために6カ月もの期間を費やすというマイクロソフトでも前例のない取り組みを行い、各パートナー企業はもちろん、2,600万人ものユーザーに協力を求め、そこで上がった声を拾い上げて「Windows 7」を創り上げた、とのことだ。
加えて眼を向けてほしいのが、「Windows 7」の3つの訴求ポイントから見えてくるWindows OSの将来像だ。「できること、簡単に。」「やりたいこと、軽快に。」「新しいこと、目の前に。」という3つのキャッチコピーのもと、従来OSの基本性能強化や新たな機能の追加がなされている。
もちろん、OSとしては「高い品質と基本性能の向上」を目指しているので新たな技術や機能が盛り込まれてはいるが、必要な機能へと集中させることによって、OSは「Windows 7」、メーラーなどのソフトウェアはWindows Liveで機能拡充を図る。アプリケーションを切り分けたことによって、軽量かつスムーズな作動環境を提供するというダウンサイジングに踏み切ったことは大きなポイントだろう。OSは軽快にしておき、個々の環境に応じた新しいアプリケーションも自由に追加できる。
マイクロソフトが考える市場規模とアプローチ戦略を現したものがこちら。XP搭載もしくはそれ以前のOSで購入後5年以上経過している層、XPを搭載し購入後5年未満の層、Vista搭載マシンの層の区分けで考えており、マシンスペック的に「Windows 7」が快適に動作するメモリ1GB以上かつDirectX 9対応PCからはアップグレードやPCの買い増しを狙う |
「Windows 7」の販売マーケティング基本方針として打ち出されたのは、広く一般に訴求するのではなくピンポイントにターゲットを狙う姿勢と、ユーザーとの直接的なコンタクトポイントを用意することで実際に使って試してもらうというスタンスのものだ |
また、Windows Liveによる付加価値を促進していくという言葉からも、クラウドやソーシャルWebを意識した姿であることが容易に想像できる。長期的な基盤として「Windows 7」を据えて、「3年サイクルでのメジャーアップデート」というPC業界のOSの通例を打破し、ロングタームでの戦略を考えていることが伺える。今まではOSの刷新に併せて行われていたアプリケーションのメジャーアップデートがWindows Liveへと機能移管されたことによって、毎年性能を向上させた製品をユーザーに提供したい考えの表れだろう。
また「Windows 7パートナー マーケティング デイ」以降のプロモーション活動の説明では、ユーザーと「Windows 7」のタッチポイントを増やし、実際に触れてその良さ、使い勝手を確かめてもらうという。これは余談だが、元々「Windows 7」を購入する意志のあったユーザーに対してデモンストレーションを行ったところ、約80%が「購入したくなった」と購買意欲が高まったそうだ。それを受けての"接点"の強化であり、「使ってみてもらえれば良さが判ってもらえる」というマイクロソフトの自信とも取れるのではないだろうか。
デモンストレーションで感じさせてくれた未来への夢
すでにRC版などから見えてきた「Windows 7」製品版の姿。「Windows 7パートナー マーケティング デイ」では、正式なカタチで初めてとなる最終的な製品版を用いたデモンストレーションが行われた。
操作性の改善・向上としてデスクトップテーマのパッケージ化やタスクバーのサムネイル表示、ジャンプリストなどの施策が用意されており、実際に操作する画面が披露された。エクスプローラーは統合された検索環境へと進化し、ローカル/Web上を問わず検索することが可能となっている。
Vistaではトラブルシューティングを行うにはそれなりのPCに関する知識が必要だったが、「Windows 7」ではダイアログのメッセージに従って進んでいくと自然とトラブルシューティングが行えるようユーザビリティにも配慮がなされている |
また、Live IDを用いてリモートアクセスを実現するなどネットワーク関連の機能が強化されており、Windows Media Centerで快適にデジタルコンテンツを楽しむこともデモでは示された。いわゆる"ネットワーク家電"と呼ばれるものをひとつに束ねる"ハブ"として「Windows 7」が機能する。
そういったイメージで考えれば判りやすいだろうか。NASに格納された音楽データをネットワーク経由で本格的な音が愉しめるオーディオシステムへ送る。それらをコントロールするのが「Windows 7」というわけだ。その他にも、Device StageやWindowsタッチ機能を用いたデモンストレーションが行われたが、強く感じられたのが、OSの機能と企業が持つコンテンツを組み合わせることによって新たなサービス、ビジネスを創出していこうという姿勢だ。
「Windows 7」を中心としたリモートメディアシェアリングのイメージ図。各種デバイス・サービスからのデータ取り込み、そして対応メディアのフォーマットが拡充。MPEG-4、3GPP、AAC、AVCHD、HDVを標準サポートする。加えて、DLANを介してデジタル家電でリモート再生、Windows Liveを利用したリモートメディアストリーミングなど、新たなコンテンツの楽しみ方が想像できる |
基調講演終了後、パートナー企業の代表が登壇してのパネルディスカッションが行われるなど、パソコンに関わるすべての産業を挙げて「Windows 7」の可能性を導き出しビジネスチャンスへと転換していって欲しいというマイクロソフトの想いが伝わってきた。期待に胸を膨らませる鼓動。その鼓動のテンションは、今後よりいっそう高まっていくに違いない。