独立行政法人国際協力機構(JICA)とソニーは、アフリカにおける若者のHIV/エイズ感染を防ぐ目的で、2009年6月24日から7月3日まで、ガーナにおいて共同プロジェクト「JICA and Sony For the Next Generation in Ghana」を実施したと発表した。

国連合同エイズ計画(UNAIDS)が2008年にまとめたレポートによれば、2007年のワールドワイドでのHIV陽性者の数は3300万人で、このうち「サブサハラ・アフリカ(サハラ以南のアフリカ)が2200万人(全世界の69%)を占めるという(日本は0.1%未満)。そのため、サブサハラ・アフリカでのHIV/エイズの感染を防ぐことが急務となっている。

世界的なHIV/エイズの状況(Source:UNAIDS)

また、世界の189カ国の代表が集まって2000年に開催された国連ミレニアム・サミットでは「ミレニアム宣言」が採択され、国際社会全体が共有すべき重要な目標として8つの「ミレニアム開発目標(MDGs)」が設定された。この中には「HIV/エイズ、マラリアおよびその他の疾患の蔓延防止」という項目があり、これを受けJICAでは、アフリカでのHIV/エイズの感染防止に取り組んできた。

一方、ソニーでは創業者である故・井深大氏の「技術を通じて日本の文化に貢献すること、そして国民科学知識の実際的啓発」という志を受け、CSR活動に取り組んでいる。

ガーナにおいては、15-24歳の新規感染者が増加する傾向にあり、若者の新規感染防止が重要課題になっているという。

そこでJICAでは、ガーナにおいてとくに感染率の高い地域を対象に、ラジオ放送、演劇上映会、ビデオ上映会など、若者が好みそうなイベントを開催し、そこで自発的カウンセリングやHIV検査を行ってきた。

今回ソニーとの共同プロジェクトにおいては、ソニーがビデオプロプロジェクター、ブルーレイプレーヤー、オーディオミキサー、200インチスクリーンをガーナに寄贈し、これを使って、「FIFA コンフェデレーションカップ2009」の生中継映像や「2006 FIFAワールドカップ」のガーナ戦の映像を無料放送するというパブリックビューイングを開催した。

大型映像装置を設置中

このイベントでは、ガーナで元々ほとんどテレビが普及してしないことや、次回のFIFAワールドカップがアフリカで開催されることなどから大きな関心を集め、通常の場合の参加者は約3,000-4,000人ほどのところを、約2.5倍の8800人余りが参加したほか、HIV検査受信者も予想の約3倍にあたる1094人に上ったという。

参加者による宣伝パレード

サッカーを観戦する人々

今回のサッカー中継は、ソニーが2007-2014のオフィシャルFIFAパートナー契約を結んでいることにより、実現した企画でもある。

JICA 民間連携室 副室長 高野剛氏

JICA 民間連携室 副室長 高野剛氏は、こうした国際協力においては民間連携が欠かせないと語る。最も大きいのは資金面だ。かつてはこうした活動に対する資金はODA(政府開発援助)が7-8割、民間が2-3割という状況だったが、最近では民間の資金が7-8割を占めるようになっているという。高野氏は「民間の協力なしでは行えない」と語る。 また、日本政府も民間連携を図る傾向が強くなっているほか、民間企業がこうした活動を行うことが世界のトレンドになっていることも連携を推進する理由でもある。そこで、JICAでは2年前に組織改訂して民間連携室を設け、民間企業との連携を深めている。

ソニー CSR部 統括部長 富田秀実氏

また、ソニー CSR部 統括部長 富田秀実氏は、今後ソニーでは、ソニーらしさを活かした教育 科学、音楽、映像分野において、持続可能な社会づくりを目指し、環境保全、災害支援、ミニアウム開発目標に注力していくと述べた。

ソニーの社会貢献活動の方針と重点分野

今後、JICAとソニーは、2010年の「FIFAワールドカップ」に向け、JICAの支援活動とソニーの社会貢献活動の連携を検討していくという。