LEDによって栽培されている野菜たち
多段の栽培ベッドでは、主に葉物が栽培されている。3段あるが、それぞれ人工光が異なる。以下の写真も光源の違いを理解していただくために、光源にフォーカスを当てて撮影してみた。色、明るさ、ランプの配置の違いに注目していただきたい。
上段は白色LEDランプが使われている。ここでは、イタリアンパセリ、バジル、レットケール、ラディッシュが栽培されている。LEDが植物工場の光源として利用される理由の1つは、波長を制御できるからだ。LEDは野菜の種類に応じて波長を調整することが可能である。また、LEDは蛍光灯よりも発熱量も少ない。ただし、価格が高いのが難だ。
中段は蛍光ランプ(FL)と赤色LEDが使われている。ここでは、サラダナとフリルレタスが栽培されている。赤色LEDは植物の丈を伸ばす作用がある。今回、採用された赤色LEDは昭和電工の製品であり、同社の発表によると約800個利用されているという。波長を調整するために、赤色LEDのほか、蛍光ランプも用いられている。
下段は冷陰極ランプ(HEFL)が使われている。ここでは、サニーリーフが栽培されている。HEFLは大型液晶テレビに用いられているバックライトを改良したもので、CCFL(冷陰極蛍光灯)とEEFL(外部電極蛍光灯)から構成される。蛍光灯やLEDに比べ、「表面温度が低い」「廃熱が少ない」「寿命が長い」と言われている。青色は植物を丈夫にする作用がある。
HIDランプを用いて栽培されている野菜たち
単段の栽培ベッドでは、ラディッシュ、ミニトマト、ミディトマトが栽培されている。こちらは、HIDランプであるメタルハライドランプと高圧ナトリウムランプが用いられている。中村氏によると、前者は太陽光に近く実が大きくなるのに有効であり、後者は発光の効率が高いという特徴があるそうだ。
ちなみに、トマトが収穫できるようになるまでには50~60日かかり、2週間で育つリーフ類よりどうしても効率が良くないという。ビジネスという観点からすると、いかに短期間でいかに多くの野菜が取れるかという点も重要になってくる。
温度・湿度・炭酸ガス濃度も自動制御
完全制御型植物工場は完全に密閉された空間であるとともに、内部の温度、湿度、照明時間などもきちんと制御されていなければならない。
経済産業省のモデル施設では、以下のような装置で温度・湿度・炭酸ガスを測り、制御している。
残念ながら、前回のお披露目会とは違って、植物工場で育てられた野菜を食べることはできなかったが、LEDやHEFLなど、野菜の特性に応じてさまざまな人工光を用いて育成が行われている様子は非常におもしろかった。6月26日より、経済産業省が「先進的植物工場推進事業費補助金」の公募を開始するなど、国家として植物工場の推進に本腰を入れ出している。合わせて、LEDの低価格化など、実現化へのハードルが少しでも早く解消されることを期待したい。ちなみに、経済産業省の別館に設置されてあり、自由に見学することができるので、興味がある方は行かれてはいかがだろう。