次のステップを目指す新しい検索エンジンたち

ここまででわかったのは、Bingは「噛めば噛むほど味の出てくるスルメイカ」のような存在だということだ。既成のサービスを組み合わせたYahoo!ポータルのような性格を持つ一方で、順次ユーザーの使い方を実情に反映していく未完成な部分も持ち合わせている。いずれにせよ言えるのは、多くのユーザーが使い続けて鍛え上げてこそ、BingのDecision Engineとしての力が発揮できるようになる。Qi Lu氏がブランディングにこだわり、巨額の予算を投入して大々的なマーケティングキャンペーンを仕掛けているのも、これが一番Bingにとって重要なことだからだ。クチコミで少しずつ利用者を広げていくタイプのサービスではないのかもしれない。

同サービスについては公開から1週間近くが経過しており、英語版だけの対応ながら、すでにいろいろ試してみたユーザーもいるだろう。役立ったいう話だけでなく、バグや各種問題も含め、プラス・マイナスのさまざまな情報がレポートされている。だがむしろそれでいいと筆者は考える。多くのユーザーに利用されることで、少しずつサービスが磨かれ、鍛え上げられるからだ。話題性こそ、発展途上のサービスにとって一番の栄養となるだろう。

また、より多くのユーザーに利用を促すための仕組みも実装されている。ユーザーが行った検索は履歴として蓄積され、セーブ機能で保存したり、他のユーザーに知らせることもできる。この検索履歴の共有は電子メールでの送信のほか、Windows Liveの各サービスやFacebookなどのSNSを使って共有することも可能だ。

検索履歴をセーブしたり、Facebookなどを通じて別のユーザーと交換することも可能。Googleなどの共有モードに近い使い方ができる

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Bingについて駆け足で見てきたが、発展途上という点で非常に面白い試みだと筆者は考えている。比較対象にGoogleやYahoo!などが挙げられるが、どちらとも微妙に異なる方向性を持っている。シンプルさやカスタマイズ性を重視し、ある意味で玄人好みのGoogle。各種サービスを集めたサービスポータル的な性格の強い、初心者や万人向けのYahoo!。Bingについては複数の検索システムを寄せ集めた単なる「メタ検索システム」だという意見もあるが、その意図するところは「よりスピーディに正確に」という検索エンジンの本質に近い部分にある。ターゲットとしてはより万人向けで、GoogleとYahoo!の中間に位置するようなサービスだといえるかもしれない。

Yahoo!のディレクトリ型サービスからスタートした検索エンジンは、ロボット型エンジンの出現で機械的に処理されるようになり、さらにGoogleによってより精度の高いものへと仕上げられた。だがGoogleが完成形ではなく、これまでのように進化を続けてより使いやすいサービスが出現してしかるべきだと思う。それはPageRank以外の要素も組み合わせて順列を決定したり、複数のサービスを組み合わせたハイブリッドであったり、あるいはビューそのものを見直したりと、いろいろ工夫が考えられるだろう。Googleからスピンオフしたメンバーが作った「Cuil」やMathematica開発者の「Wolfram|Alpha」など、過去の成功に囚われずに新しい姿を模索している好例だ。将来的には自然言語判別やセマンティック、音声認識など、より自然な形での進化が望めるかもしれない。