電力消費量と発熱量が増大するなか注目を集めるデータセンターのグリーン化。「CEATEC JAPAN 2008」では、グリーン・グリッドで日本コミュニケーション委員会代表を務める坂内美子氏(APCジャパン マーケティング本部デレクター)が、データセンターにおける電力消費の現状や課題、グリーン・グリッドが提唱する指標「PUE / DCiE」の動向や、新たに開発中の指標「DCP」の動向などを説明した。

グリーン・グリッドのミッション。エネルギー効率化のための指標、測定方法、ベストプクラティスの開発・策定を行う

グリーン・グリッドの参加企業は現在、ボードメンバー10社(AMD、APC、デル、HP、IBM、インテル、マイクロソフト、Rackable Systems、サンマイクロシステムズ、ヴイエムウェア)をはじめ、ワールドワイドで200社以上を数える。日本委員会が設立されたのは今年5月で、国内企業としては、推進会員5社(日立製作所、NEC、NRI、NTTファシリティーズ、富士通)、一般会員12社が参加している(9月22日現在)。

坂内氏は、近年のグリーン化への意識の高まりや参加企業の拡大を背景として、グリーン・グリッドが提唱する「PUE(Power Usage Effectiveness)」やその逆数「DCiE(Data Center infrastructure Efficiency)」が、国内でも広く使われるようになってきたことを説明。

PUE(Power Usage Effectiveness)とDCiE(Data Center infrastructure Efficiency)の計算方法

PUEは、設備全体の消費電力をIT機器の消費電力で割ったもので、設備全体の電力が無駄なくIT機器に利用されているかを測る指標。PUEを2.0から1.4に下げるといった目標を設定し、データセンターのエネルギー効率化の取り組みを進めることで、電気代節約などのメリットを得る。

「PUEやDCiEの数値を改善するうえでは、省電力に対応したIT機器の設置だけでなく、エアフロー設計、冷却機器の配置、電力消費の監視といったデータセンター全体での最適化を進めることがポイントだ」(坂内氏)

PUEを2.0から1.4に下げることで、年間270万ドルの電気代が節約できるとした米国企業のサンプル

もっとも、これらの指標は、データセンターの規模や処理量による違いを把握することは難しい。例えば、ミッションクリティカルなシステムでは、IT機器を冗長化させることから、その分、PUEも高くなる傾向がある。また、データセンター内の冷却設備のどこで消費電力量を測るかによっても、PUEは変化してくる。

そこで、グリーン・グリッドでは、こうしたPUEの不完全な部分を補足するための取り組みを進めているという。その1つは、IT機器の生産性を考慮した指標「DCP(Data Center Productivity)」の開発だ。坂内氏によると、「DCPは、IT機器の処理量を設備全体の消費電力で割ったもので、設備全体において、IT機器がどの程度稼働しているかを測る指標となる。現在、グリーングリッドの技術委員会のなかで協議が進められている」という。

IT機器の生産性を考慮した指標としてDCP(Data Center Productivity)を開発している

また、米環境保護庁やエネルギー省、EUを含む各国の行政機関と協力して、「データセンター評価システム」の確立にも取り組んでいる。具体的には、PUEやDCiEなどのメトリックスを基準としたシステムの構築、パフォーマンス・データベースの作成、評価ツールの標準化、多国間のコミュニケーション網の整備などを進めている。

最後に、坂内氏は、エネルギー効率化のためのステップとして、大きく5つのチェック・ポイントを紹介。

まずは、自社のデータセンターがどのくらい電力を消費しているかを調査すること。次に、設備全体の電力とIT機器の電力を分けて査定すること。それが分かったら、3つめのステップとして、目標とスケジュールを明確化した"エネルギー戦略"を立案し、4つめのステップとして、PUEやDCiEを用いたエネルギー効率の測定を行う。5つめは、ビジネスの継続を担保し、個々のデータセンターの効率に関する問題に組織的に取り組むことだ。

「データセンターのグリーン化は、経営者層のコミットメントのもと、組織的に取り組むことが重要になる。そうした取り組みを進めるなかで、グリーン・グリッドに参加し、指標の開発などに貢献していただればと思う」(同氏)