「重要思考」で論理の組み立て方を知る

では、システムエンジニアがコンサルタントを目指すうえでは、どういったスキルを磨いておけばいいのだろうか。三谷氏によると、コンサルタントの最大の武器は、数字、分析、論理である。

「情報を収集するだけでなく、それを分析し、しっかりしたロジックによって、プロジェクト参加者を納得させなければならない。相手は人間なので、ただ単に論理を並べただけでは共通の納得性を得ることはきわめて難しい。そこで、きちんとビジネス的に意味のあるかたちで論理を組み立てることが不可欠となる」

三谷氏は、ビジネス的に意味のある論理の組み立て方として、「重要思考」という考え方を紹介してくれた。重要思考とは、最も重要なことをまず決定し、そこを中心に、戦略、効用(ユーティリティ)、施策(ツール)という3階層で意思決定を行っていく思考法だという。

例えば、まず、最も重要なこととして、企業そのものの理念や実施するプロジェクトの価値観などを決める(例えば、利益、顧客、人など)。次いで、第1階層として、プロジェクトの方向性に当たる戦略を定める(右に行くのか、左に行くのかなど)。そこからすぐに戦略を実現するための施策を選択するのではなく、第2階層として、効用と呼ばれる中間目標を定める。これは、どの施策を選択すればどのような効果が得られるかを判断するのに利用する。そして、最後の第3階層で、施策の選択となる。

つまり、「意思決定において、しばしば問題になるのは、議論が平行線をたどったり、重要なことを見失いがちになったりすること。はじめに一番重要なことを決めておくと、いつでもそこに戻ることができるし、議論が整理されて効率が大きく上がるというメリットがある。また、3階層に分けることで、戦略を明確化したり、効用の低い施策を排除したりすることが可能になる」というわけだ。

さらなるスキル──B3C、戦略ピラミッド、戦略オプション比較

三谷氏がビジネス・コンサルタントとして生み出した手法はこれだけではない。特に、3C分析を発展させた「B3C」、経営戦略をつながりとして考える「戦略ピラミッド」、戦略を立案する際に比較する軸を絞り込んで評価する「戦略オプション比較」といった統合的な戦略フレームワークは、コンサルタントとして意思決定を支援するための重要なスキルになるという。

例えば、「B3Cは、いわゆる3C分析(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:自社)に、土俵(Battle Circle)という概念を加えたもの」である。こうしたフレームワークを駆使することで、より統合的・独創的な戦略を練ることができるというわけだ。

なお、これらの具体的な内容は、マイコミジャーナルが主催するセミナー『キャリアチェンジ特別セミナー ~ITのプロからビジネスのプロへ~』で一部紹介される予定となっている。無料で参加できるので、興味をお持ちの方はこちらから申込んでほしい。

三谷宏治

東京大学理学部物理学科卒、INSEAD MBA修了。87年から96年までボストンコンサルティンググループ、96年から06年までアクセンチュア戦略グループで経営コンサルタントとして活躍する。03年から06年は同統括エグゼクティブ・パートナーを務め、同グループの200人超への成長に貢献。06年からは「教育」領域に専念し、小・中・高校を中心に様々な教育活動中。著書・論文多数。近著として『観想力 空気はなぜ透明か』『トップコンサルタントがPTA会長をやってみた 発想力の共育法』『突破するアイデア力』がある。