ワイヤレスネットワークの構造を作り直す

今度はワイヤレスネットワークについて。その真価に至るには、あらゆる全てのデバイスを繋ぐことがチャレンジなのだと語られる。しかも、ワイヤレスネットワークの進化の未来には、1人が1,000のワイヤレス接続を持つ日がやってくるのだという。そうなれば当然、周波数が足らなくなり、互換性の確保も大変で、また、動作に必要なエネルギーも問題となる。

1人あたり1,000のワイヤレス。そんな未来がすぐそこに?

そこで、ワイヤレスネットワークの仕組みそのものを大きく変えなければならないのだとして、いくつかの研究中の新たな方法とされるものが紹介された。まずはCognitive Radioと呼ばれる、フレキシブルな周波数割り当てを実現する方法で、デバイスが、決められた周波数ではなく、空いている周波数を自動で調べて、周波数帯を効率良く使うというもの。そして、Collaborationと呼ばれる、ワイヤレスデバイス同士が、その名の通り通信方式の違いを越えてコラボレーションして相互に通信するという方法だ。

Cognitive Radioでは、「無線が喧嘩しない」

Collaborationでは各デバイスが相互に通信

あわせて、電力をワイヤレスで供給する仕組みも紹介された。強結合共振器を利用したもので、安全で高効率とされており、デモンストレーションでは、75%の効率にて60Wの電球を実際にワイヤレスで点灯させる様が披露された。例えばワイヤレスUSBの周辺機器を充電しながら使えたり、ノートパソコンを持って範囲内に入れば充電が始まる、といった使い道が検討されているという。

ワイヤレスで60Wの電球に給電中。既に割と小規模な装置でも大丈夫なようだ

マシンインテリジェンスの現状

お次はロボットの話題だ。人間の生活する環境内で利用可能であることを前提としたロボットが紹介された。工場の中で決められた動作だけを行うロボットなら問題ないが、人間の生活環境では事前に予測できないような偶発的なアクシデントが起こりやすい。そのため、そういったロボットには人工の知能を搭載する必要が生じるのだという。

当日は2台の試作ロボットを披露。1台目にはロボッドハンド(ヘッド)にカメラを備え、そこから得た情報などから、自律行動で"片付け"を行うという「ハーブ君」が登場した。人工知能により、命令に沿って机の上におかれたコップを片付けるデモンストレーションが実施された。一連の動作の速度を人間と同程度にすることが当面の目標とされる。

カメラの映像を分析し、自律"片付け"をするハーブ君。まだ少々時間がかかっていたが、「私より家事がうまいんじゃないか?」(Rattner氏)。ぐうたらな人間よりは速い!?

もう1台は、魚の能力を備えるというセンシング能力に特化したアーム型ロボット。ハンド部分に非接触電界センサを搭載しており、魚のように、物に触れる前に対象を感じることができるとされる。デモンストレーションでは、人が持つりんごを対象に、触れることなくそれを認識し、動かせば追随し、つかむ際にはりんごに適切な力の強弱を判断してからつかむ……という動作が紹介された。

触ることなく、りんごの様々な情報を認識する

これが魚の能力を持つセンサ部分。カップをつかむ時は強め、卵をつかむ時は弱め、といった握力の調整も行っている