クリーナーの性能を示すものとして、吸い込み仕事率という数値が、よく掲示される。吸い込み仕事率は、JIS C9108の付属書Aで測定方法が規定されているのだが、クリーナーが空気を吸い込む力を表す指標であって、クリーナーのごみを吸い込む力を直接示しているというわけではない。測定は、ノズルを取り付けない状態で(ホースや延長管は取り付ける)行われる。

一方のダストピックアップ率は、海外製のクリーナーなどでよく使われる値だが、一定条件のカーペットの上に35gのスタンダードダストを撒いた上でローラーで押し固め、それをクリーナーで吸い込ませ、どのくらい回収できたかを表す指標だ。ヘッドを動かす速度や回数なども細かく規定されている。さらに、ここでポイントになるのが、吸い込み仕事率が高ければ、ダストピックアップ率も高くなるとは限らないということだ。ダストピックアップ率を大きく左右するのは、搭載されているヘッドの性能だ。

ただ、ダストピックアップ率も、カーペットの上に撒かれた標準的なごみを吸い込む能力ということであって、あくまでも一つの目安に過ぎない。例えば、床の種類やごみの種類によっても、実際にどのくらい集塵できるかは変わってくるだろう。

排気のクリアなクリーナー

サイクロン方式でも、紙パック方式でも、それだけでは、完全に空気中の微細な塵まで取り除くことは難しい。そこで、排気をよりキレイにするために装備されているのが、排気フィルターだ。

ミドルクラス以上のモデルに搭載されている排気フィルターは「HEPA」フィルターと呼ばれるものが多い。HEPAフィルターとは、どこかの製品名といったようなものではなく、一定の性能を持ったフィルターのことを指す(JIS規格で、0.3μmの粒子を99.97%以上捕集するとされている)。さらに高性能な「ULPA」フィルター(同じく0.15μmの粒子を99.9995%以上捕集する能力が求められる)を搭載した日立「CV-PL800/700」なども存在する。なお、HEPAフィルターは、自分では交換できないもの、部品として取り寄せて交換が可能なもの、さらには水洗いが可能なものなど、製品によって、さまざまなので注意が必要だ。

なお、紙パック方式で、松下電器産業の「AMC-HC10」といった高機能タイプの紙パックを使用した場合には、それ自体が、0.5μm以上のごみを99.9%逃がさないという、HEPAフィルターに迫る性能を持っているため、必ずしも紙パック以降に高性能なフィルターを装備する必要はないという。

高性能なフィルターだけでなく気密性の高さでクリーンな排気を実現するエレクトロラックスの「OXYGEN」(奥)と「ULTRA Silencer」(中央)

しかし、排気フィルターにHEPAフィルターなどを採用しているクリーナーであれば、すべて排気がキレイかというと、決してそのようなことはないというのが実情のようだ。クリーナーの排気は、理想的には、すべてサイクロン機構、あるいは紙パックを通ったあと、各フィルターを通過してから排出される。このようにして排出された排気には、ほとんど塵は含まれていない。ところが、すべてのクリーナーがそうなっているわけではない。これを実現するためには、フィルターの性能だけでなく、空気が必ずフィルターを通過するように流路の気密性を高める必要がある。現時点で、こういった対策が施されている製品は、一部のモデルに限られる。以前、あるメーカーの新製品発表会で、クリーナーに煙を吸わせて、それが本体から排出されないというデモが行われた。あえてデモを行う必要があるということは、つまり、そうなっていないクリーナーが多いと考えても間違いではないだろう。

さらに、ニオイの問題もある。ニオイは、紙パックにため溜められたごみから発生する場合もあるし、クリーナー内部の汚れによって発生する場合もある。排気からのニオイに関しては、ゼオライトや茶カテキン、炭などによる脱臭フィルターが使用されるのが一般的だ。

またクリーナー内部のニオイを除去するために、定期的にオゾンで殺菌を行ったり、光触媒による抗菌フィルターを装備するモデルも存在する。