GeForce vs ATI Radeon~後編はこちら
【特集】GeForce vs ATI Radeon - アーキテクチャ解説で紐解くGPU戦争"夏の陣" (後編)

NVIDIAは6月17日にGeForce GTX 200シリーズを、そしてAMD(ATI)は6月25日にRadeon HD 4800シリーズを発表した。

ATIとNVIDIAが長年にわたって繰り広げて来ているGPU戦争、「2008年、夏の陣」では、それぞれのGPUに対する異なる戦略が明確になってきたと感じる。

NVIDIAは14億トランジスタでビッグチップを復権か。ATIは順当な規模拡張を果たす

まずは両者のネーミングについて触れておこう。

NVIDIAの新GPUはGeForce GTX 280とGTX 260で、前者が上位モデルとなる。先代までのGeForce 7000/8000/9000という4桁型式番からリフレッシュして、今回から280と260という、200番台の3桁型式番を採用するようになった。10000番台の5桁に行くのは煩雑になるからというのが主な理由だ。最上位を表すGTXというグレード記号はこれまで通りだが、これが数字よりも先にくる命名規則に変更もなされている。開発コードネームは「GT200」で、GはGeForceの"G"、TはTESLAの"T"ということが明かされている。200の"2"についてもGeForce 8800シリーズから始まったTESLA前提のGPUの第二世代目……ということを言い表しているのだという。

NVIDIAはGeForce 8800シリーズ以降、3DグラフィックスのためのプロセッサとしてだけでなくGPGPU(General Purpose GPU)用途も視野に入れた設計を施してきたとされるが、その方針は今回にも引き継がれているということだ。

※GPGPUとはGPUの膨大なデータ並列演算パワーを3Dグラフィックス以外の一般用途にも転用しようとするアイディアのこと。より詳細についてはこちらの記事を参照いただきたい。

一方、AMD(ATI)の新GPU、Radeon HD 4800シリーズの方は、Radeon HD 4870とHD 4850の2タイプからなり、前者が上位モデルになる。先代のRadeon HD 3800からの直系の後継で、型式番も+1000番加算しただけであり、新旧が分かりやすい。開発コードネームもRadeon HD 3800シリーズの「RV670」から、"+100"されたRV770となっている。ちなみに、ATIはRadeon HD 3800シリーズより、それまで同社が使用してきたXTやPROといったグレード記号を廃止しており、xx70型番がXT相当、xx50型番がPRO相当であると説明している。

続いてNVIDIA GeForce GTX 200シリーズ、ATI Radeon HD 4800シリーズ、それぞれの基本情報を整理してみよう。

下表が基本スペックをまとめたものだ。

2008年3月時点の最新GPU基本スペック比較(一部筆者推測)

NVIDIA ハイエンドモデル
GeForce GTX 280 GeForce GTX 260 GeForce 9800 GTX
プロセスルール 65nm 65nm 65nm
トランジスタ数 14億 14億 7億5400万
コアクロック 602MHz(1.296GHz※1) 576MHz(1.242GHz※1) 675MHz(1.688GHz※1)
メモリクロック(データレート) 2214MHz 1998MHz 2200MHz
ビデオメモリタイプ / 容量 GDDR3 SDRAM / 1GB GDDR3 SDRAM / 896MB GDDR3 SDRAM / 512MB
メモリバス幅 512bit 448bit 256bit
メモリバンド幅 141.696GB/sec 111.888GB/sec 70.4GB/sec
シェーダーバージョン 4.0 4.0 4.0
汎用シェーダ数 240 192 128
ROPユニット数 32(4×8) 28(4×7) 16(4×4)
フィルレート 192億6400万テクセル/sec 161億2800万テクセル/sec 108億テクセル/sec
※1 シェーダクロック。マルチクロックドメイン設計のため汎用シェーダは別クロックで動作する
ATI ハイエンドモデル
Radeon HD 4870 Radeon HD 4850 Radeon HD 3870
プロセスルール 55nm 55nm 55nm
トランジスタ数 9億5600万 9億5600万 6億6600万
コアクロック 750MHz 625MHz 775MHz
メモリクロック(データレート) 3600MHz 2000MHz 2250MHz
ビデオメモリタイプ / 容量 GDDR5 SGRAM / 512MB GDDR3 SDRAM / 512MB GDDR4 SDRAM / 512MB
メモリバス幅 256bit 256bit 256bit
メモリバンド幅 115.2GB/sec 64.0GB/sec 72.0GB/sec
シェーダーバージョン 4.1 4.1 4.1
汎用シェーダ数 800 800 320
ROPユニット数 16 16 16
フィルレート 120億テクセル/sec 100億テクセル/sec 124億テクセル/sec

NVIDIA GeForce GTX 200シリーズは、ついに積載トランジスタ数を14億とし、単一プロセッサとしては世界最大規模となった。これは先代のGeForce 9800 GTXの7億5400万の二倍近く、2002年のGeForce FX5800の約1億3000万の10倍以上の規模に相当する。歴代のNVIDIAハイエンドGPUがそうであったように、製造プロセスには安定志向の65nmを採用。そのためダイサイズは576mm^2(24mm×24mm)という巨大なチップとなっている。

一方、ATI Radeon HD 4800シリーズのトランジスタ数は9億5600万で、先代のRadeon HD 3800シリーズから3億ほど増加させた順当な規模拡大に留まる。製造プロセスは55nmを採用。ATIは既に先代Radeon HD 3800シリーズでは55nmに移行させており、この点についてATIはNVIDIAに対し半歩リードした形だ。トランジスタ数も競合よりも少なく、製造プロセスも半世代シュリンクさせたことでダイサイズは競合の半分以下の256mm^2(16mm×16mm)に抑えられている。

消費電力を両者の最上位モデルで比較するとGeForce GTX 280が236W、Radeon HD 4870が160Wとなっており、Radeon HD 4800シリーズのダイサイズの小ささとトランジスタ数の少なさが丁度反映された結果になっている。

なお、最上位モデルのGeForce GTX 280は駆動にグラフィックスカード用外部電源の6ピン電源と8ピン電源の両方を装着する必要がある。8ピンの電源コネクタに2ピンを余らせて6ピン電源コネクタを挿すことは出来るが、この方法ではGeForce GTX 280は駆動しない。一方、Radeon HD 4870は6ピン電源×2での駆動が可能となっている。

Radeon HD 4800シリーズのダイ写真

GeForce GTX 200シリーズのダイ写真