インターネット先進ユーザーの会(Movements for the Internet Active Users、以下「MIAU」)は9日、自民党や民主党で議員立法に向けた議論が進んでいる有害サイト規制法案について批判する文書を公表した。フィルタリング技術が不完全であることが国民の知る権利を侵害する可能性があることなどを指摘、「このような懸念について解決を行ってから法案を国会に提出するべき」と主張している。

MIAUは、インターネットやデジタル技術に関わる法制度に関する正確な知識を広く提供することなどを目的に、ITジャーナリストの津田大介氏や法政大学の白田秀彰准教授らが発起人となり、2007年10月に設立された。

今回公表された文書によれば、MIAUは自民、民主両党の有害サイト規制法案の原文を複数のルートにより入手し検討を行ってきた。その上で今回、いずれかの法案に存在する問題点を挙げた。

MIAUが指摘する問題点は、(1)有害基準、(2)個人のウェブサイトなど非商業的運営者が対象となっている点、(3)プロバイダの講ずべき範囲が不明確かつ広範囲な点、(4)フィルタリングの技術上の問題点、(5)知る権利の侵害、(6)教育という視点の欠如、(7)経済的な問題点、の7項目からなっており、いずれも重要な問題を提起している。

このうち(1)では、「何が有害で何が無害なのかの基準を内閣府が設置する少人数の委員会が独占的に決定することには大きな問題がある」と批判。また、(2)については、「個人のウェブサイトが規制の対象になると、個人が自由に情報を発信するという行為自体を阻害することになる」としている。

(4)のフィルタリングの問題については、8日に携帯サイトの有害性を審査し、有害でないと認定されたサイトはフィルタリングの対象外とするための第三者機関「モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)」が設立されたばかりだが、MIAUは現在のフィルタリング技術について、「未だ不完全」と指摘。「大切なサイトを遮断したり、本当に有害とされるサイトを素通しするなど多くの問題がある」と指摘している。

また、(5)においては、こうしたフィルタリング技術の不完全さが「知る権利を侵害することになる」とし、「特にコミュニティサイトはサイト単位でまとめて規制されてしまう可能性が高く、同世代とのコミュニティによって精神的平衡を保っている青少年に対しては有害な対策となりかねない」と批判している。

MIAUは、議員らはこのような問題点を解決してから法案を国会に提出するべきとし、「有害サイトへの拙速な対応を行うべきでない」と主張。引き続き法案に関する検討を行うとともに、国会議員へのロビー活動や法案の問題点に関する一般への周知を行っていくとしている。

有害サイト規制の議員立法に関しては、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」で座長代理を務める東京大学教授の長谷部恭男氏も「法的な規制は最後の手段であり、まずは民間のノウハウを活用すべき」との考えを表明するなど、批判する声も出てきている。

MIAUは、5月1日に東京都内で有害サイト規制法案に関するイベントを開く予定で、参加を呼びかけている。