CTIA Wirelessは携帯業界のイベントだが、今回の基調講演では珍しいスピーカーが登場した。英Virgin Group会長のRichard Branson氏だ。世界屈指の大富豪として知られる同氏は、Virginブランドを冠に航空会社から音楽事業、インフラ事業まで幅広く手がける。特筆すべきは、その全てにおいて成果を上げ、それぞれの分野でブランドを構築できている点だ。Branson氏によれば、これらのビジネスの原点は「顧客にサービスを楽しんでもらう」というエンターテイメント性にある。

英Virgin Group会長のRichard Branson氏。この手のイベントで基調講演を行うのは珍しい

後発でありながらもエンターテインメントから来るユニーク性を大事にし、差別化を図っている。例えばVirginは、「Virgin Mobile」のブランド名で携帯電話事業を英国、米国、カナダ、フランス、オーストラリア、南アフリカに展開している。さらに先日インドでの事業も開始した。Virgin Mobileの特徴は、自身がネットワークインフラを持たないMVNO(Mobile Virtual Network Operator)である点だ。世界初のMVNOとして英国でスタートし、世界展開にあたっては各国の通信キャリアとの提携でMVNO路線を堅持している。米国でのDisney Mobile撤退などにみられるようにMVNOの成功例は少ない。その1つであるVirgin Mobileは得意の音楽ビジネスと組み合わせ、プリペイド式の安価な手軽さを武器に若年層をうまく取り込んだことが、既存キャリアとの差別化につながったといえるだろう。

そんなBranson氏が次に目指しているのはVirgin Galacticによる宇宙旅行事業だ。商用フライトを行う宇宙船「SpaceShipTwo」のデザインを発表し、今年中にもテストフライトを行う計画となっている。同氏は、最終的には30人程度の規模で火星への有人飛行を実現したいという。「送り届けた人々は、ちゃんと連れて帰ってこないとね」と付け加え、片道切符ではないきちんとした旅行サービスにしたいと冗談めかしつつ夢を語った。

「宇宙旅行に参加してみたい人は手を挙げて壇上まで」とBranson氏が呼びかけると、何十人もの人が壇上に集まり、いつの間にか同氏との握手会兼記念撮影会に……