わいせつ動画や著作権への監督強化が真の狙い

実のところ、動画管理規定が発表される前に広電総局が出した「インターネット上の映画とテレビドラマへの管理強化についての通知(関于加強互聯網伝播影視劇管理的通知)」こそが、中国政府の動画配信サイトに対する真の要望なのだ。政府の関係監督官庁から見れば、現在のインターネット動画配信に存在する共通要素、すなわち色情を煽るコンテンツ、著作権侵害などの問題に対する監督管理の強化こそが政策目的なのである。こうしてみれば、この二つの、相次いで登場した政策は、動画配信サイトにとって必ずしも完全にマイナスというわけではないだろう。

なぜなら、各動画配信サイトが大きなミスを犯さない限り、事業を発展させていくことができるからだ。国家という背景を持つ企業が実際の運営企業の代わりに許可証を申請し、運営は動画配信サイトが行えば、微々たるコストが発生するだけだ。既に投入された数千万ドルが水の泡になるより、こうした対応策のほうが現実的に受け入れられるものであろう。

世論や中国の企業誘致というマクロ的観点を考慮しても、全ての動画配信サイトを根絶やしにしてしまうような施策がとられるはずはない。そうした意味では、オンラインゲーム中毒防止の政策の登場と施行が、中国政府の傾向を示していると言える。同政策が試行された時期は、成人と未成年者双方ともに規制対象とされていた。しかし、「ワールド・オブ・ウォークラフト」などの著名ゲームのユーザーが集団で規制の対象範囲に疑問を呈してからまもなく、同政策の運用が変わったのだ。

結局、同政策が正式に施行された時は、18歳以上の成人は規制対象から外され、未成年者だけが取締り対象となった。オンラインゲーム業界はそのため一定の影響を受けたが、当初に予想されたよりははるかに小さなものだったと言われている。

中国の場合、関係部門が政策をおこなう際、試験的なものを最初に出しておいて、世論の反応をみるというやり方をしばしば採用する。世論や産業全体の動向を最終的に判断してから必要な調整をおこなうというスタイルだ。現在、動画配信サイトの経営者たちが意外に冷静でいるのも、こうした中国独特のやり方に慣れているからだろう。