ビジネスモデルの未熟さが経営上の懸念

ところで、動画管理規定の登場とは関係なく、現在中国の動画配信サイト業界は、二つの難題に直面している。一つ目は動画配信コンテンツの著作権をいかに解決するかという問題である。そして二つ目は、広告とユーザビリティとの間のバランスをいかに取るかということである。

周知のように、中国国内の動画配信サイトやP2P動画配信リクエスト対応サイトで掲載されるコンテンツには、大量の著作権利用許諾のないコンテンツが含まれている。YouTubeがGoogleに買収されてから続々と巨額の著作権訴訟が起きていることを考えると、遅かれ早かれ、こうした状況が中国でも始まることは間違いない。

しかもこうしたリスクは、有力サイトほど抱えていると思われる。また、現在の動画配信サイトは広告を主な収入源としており、ビジネスモデルとしては依然として初歩の段階にあるといえる。動画配信サイトにおけるビジネスモデルの未熟さがその発展を制約するボトルネックの一つであることは間違いない。

管理規定の厳格な適用が壊滅的打撃に

動画管理規定について、専門家は、既存の動画配信サイトがなんらかの措置を講じないまま、国や国家機関に51%もの株式を譲るわけがないとみている。いずれの企業も許可証を得て合法的に事業が展開できるようにするために、おそらく他社から名義を借りるのではないかというわけだ。

国が同規定によって全ての動画配信サイトを倒産させるわけはないことも明白だ。というのも、前述のように業界全体ですでに2億ドルを上回る海外ベンチャー資金を誘致していおり、ほとんどの動画配信サイトはこうした資金の肩の上に乗って発展してきたからだ。

だが、もし動画管理規定が厳格に施行された場合、動画配信業界へ打撃が壊滅的なものになる可能性がある。当局が要求するとおりに資本関係を調整すれば、企業が再融資を受けようとしたり、上場しようとしたりする場合に深刻な影響が出てくる。投資家はより慎重になり、中国の動画配信業界に対する資金提供が一時的にせよ冷え込むかもしれない。

投資に大きな水がさされれば、紙幣燃やしで生きてきた、ビジネスモデルが未だ明確でない動画配信サイトの多くは、これまで経験したことのない厳冬に直面することになる。

動画配信サイトを運営する企業が国有部門に買収されるか、あるいはその子会社となるとすれば、新たな筆頭株主である国や国家機関が広告部門の運営を引き続き許可したとしても、経営自体がおそろしく複雑化することを回避することはできない。そして、それはベンチャー投資家がもっとも目にしたくない状況であろう。